【初動】

【穿攻強襲突撃決戦艦エクスカリバー】のブリッジはけたたましい警告音が鳴り響き、その後に続く様にスピーカーが艦内に状況を続ける。


スピーカー『―――【統合作戦汎用司令艦メルカバ】より入電。

敵母艦【ティアマット】より【神獣バハムート】の発艦を確認。繰り返す、

【神獣バハムート】の発艦を確認。』

艦長「奴らめ。遂に切り札を使うか!」


メインスクリーンに映る巨大な黒き竜の姿を見ながら艦長と思しき人物が口を苦く

歪ませる。

映像として見える【神獣バハムート】と呼ばれた神々しくも禍々しい様相をした

黒き巨竜がこちらへと迫っていた。

艦長はブリッジのオペレーターの1人に声を掛ける。


艦長「【ラグナロック】の状況はどうか?」

オペレーター「ダメです。【GATE(ゲート)】の出力予定の10%も出ておりません!【ダミーリアクター】との適合率安定しません!!」


クッ・・・!と艦長の表情は険しく歪む。

メインスクリーンに切り替わった画面には【バハムート】と対に成す様な巨大な人型の機械兵器がデータとして映し出されていく。

様々な情報を表示しながらも人目を引いたのがエネルギーゲインと思しき表記のパーセンテージが0から10の間を激しく揺れれ動いているのが確認できた。

こちら側の切り札たる決戦兵器【神機ラグナロック】は炉心の火が灯らず、静かに沈黙を続けてたまま、軌道エレベーター【アヴァロン】の一画に留まっていた。


艦長「やはり、正規の適合者でなければ起動は無理か。―――やむを得ん。

【ラグナロック】の起動を中止。【アイオーン】部隊を出撃させよ!」

副官「しかし艦長。相手は【バハムート】です!【アイオーン】といえども勝てるかどうか・・・」

艦長「リミッターを解除すれば良い。相手は決戦兵器とはいえ、たった1体。先に【アンゲルス】部隊を無人遠隔誘導(リモート)で出撃展開し、牽制させろ。発進の時間を稼がせろ!」

オペレーター「了解。【アンゲルス】無人遠隔誘導で随時出撃させます」

艦長「同時に艦砲射撃。ヤツを艦に近づかせるな!!」

副官「了解、主砲並び副砲、撃ち方初め!【バハムート】の接近を赦すな!!」


【エクスカリバー】を始めとした艦隊から無数の光が放たれる。

それに続く様に無数の人型の白い天使を思わせる機動兵器が飛び出し、黒き巨竜へと群れを成して向かっていく。

黒き巨竜【バハムート】は巨体とは思えない速さで戦艦の砲撃を躱していき、返す刀で白い天使【アンゲルス】の大群を蹴散らしていった。

返す刀の様に【バハムート】の口から光が集束されると凄まじい速さと勢いでレーザーカッターの様なブレスを発射し、【エクスカリバー】右舷側の艦船数隻の艦体を切り裂いていく。

遅れる様に轟音を立てながら爆沈していく艦船たち。


オペレーター1「【アスカロン級駆逐艦】及び【バルムンク級巡洋艦バルムンク】

数隻轟沈!!」

オペレーター2「【アンゲルス】部隊、損耗率75パーセント突破!!これ以上は

危険です!!!」

艦長「【アイオーン】部隊の稼動率はどうか?」

オペレーター3「全体稼働率45・・・50を突破。未だ半分ほどしか起動出来てません」

艦長「構わない。起動出来た機体を随時発進させろ。弾幕を展開、発進の妨害をさせるな!!」


艦長の怒号が艦橋内に響く。

それに呼応する様に【エクスカリバー】を始めとした残存艦隊の砲撃を行う。

無数の光が【バハムート】に迫り、その合間を縫う様に【アンゲルス】の残存部隊が突撃を仕掛ける。

黒き巨竜はその攻撃を搔い潜りながら群がる白い機械天使を蹴散らしていく。

撃滅を繰り返しながら【バハムート】は何かに気づき、【エクスカリバー】の方へと視線を向ける。

黒い戦艦から無数の光が飛び立つ様子を確認出来たからだ。

無数の光は発艦から物凄い速さで【バハムート】に接近し、その姿を現した。

光の正体の名は【アイオーン】。

【エクスカリバー】に搭載されている【ラグナロック】の量産型にある高機動殲滅兵器。

【アンゲルス】の数倍のスペックを誇る機体で機動力と高火力兵装に広域殲滅を目的とした白銀の機械天使。


艦長「一気に勝負を付けるぞ。【アイオーン】全機、【メギド・レイ】発射用意」

副長「了解、【アイオーン】全機。バスターモードへシフト。発射体勢へ移行せよ」


艦長の命令を即座に復唱して各所に指示を出す副長。

【アイオーン】全機がその命令に従うべく、機体の一部を変形させて発射体勢へと移行していく。

直後にけたたましいアラートが艦橋に鳴り響くと警告灯が赤く照らす。


オペレーター3「【バハムート】より高エネルギー反応を検知!」

副長「何ッ!?」

艦長「メインスクリーンに映像を!!」


艦長の声に応える様にメインスクリーンへ即座に映像が映し出された。

【アイオーン】の【メギド・レイ】に対応するかの様に【バハムート】の口に光が

溢れ出ていく。

その光と力は【バハムート】の周囲を歪ませている。


艦長「【メギド・フレア】か!?」

副長「艦長!!」

艦長「【メギド・レイ】のチャージは?」

オペレーター1「急速チャージ中で現在78パーセントです」

艦長「構わん。【アイオーン】全機【メギド・レイ】発射!!」


艦長の言葉と同調するかの様に【バハムート】から光が放射される。

同時に【アイオーン】全機からも光の槍が放たれる。

両者の光がぶつかり衝突し、戦場となった空域を閃光が染め上げていく。



―――そしてせかいは、ひかりにのまれていった―――



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