第3話 いきなり告られたっ!?

 突然、ピシピシッと音がして教室の窓が全部、すりガラスみたいに曇ってしまった。


「ええっ!?」「へっ!?」


 あたしと静波くんの驚いた声がかぶる。


 様子がおかしい。さっきまで開いていた教室後ろ側の扉も勝手に閉まっている。


「どういうこと……?」


 あたしはとりあえず教室の外を見てみようと扉を引いた。


 動かない。


 まるでなにかで固められたみたいに、びくともしない。


「なにこれ……この、このっ」


 何回か、力を入れてみたけど、やっぱり無理みたいだ。


 静波くんも窓の鍵を外そうとしてるけど、どうにも外れない様子。


「まさか……」


「ん……? 今、静波くん、『まさか』って言った? どういうこと……? なにか知ってるの?」


 彼は顔を真っ赤にしてあたしから目をそらした。なにかまずいことでもあるのかな。


「い、いや、あの……」


「なんでもいいから言ってみて? ここから出られなきゃ、旅行行けないよっ!?」


「じ、実は……、斑鳩さんが……」


「ん? あたしが、なに?」


 静波くんを真っすぐに見る。


 真剣な話っぽいからそうしたんだけど、彼はすぐに顔を真っ赤にして、目をそらして教室の床の方を見てしまった。


「斑鳩さんのこと……いいなって……ずっと思ってて、それで……前から伝えたいことがあったんだ……」


「へっ!?」


 口調が強くなったと思ったら、今度は軽くにらむみたいにあたしの目を覗きこんでくる。


 さっきとは逆に男の子の強さを感じさせる仕草にドキッ、とする。 


 そして、なんだろう!? この急な流れ? あたしへの告白?


 ああ、でも告白っていきなり来るもんだって……お姉ちゃんも言ってたっけ……。いやあ……でも、ホント急だね。どうしていいのか分かんないよ。


 男子への免疫なんてあたしには全然ない。今まで誰かと付き合ったこともないし。


「今までもそうだったんだけど……さっきから教室に一緒にいて、やっぱり僕は斑鳩さんのことが好きなんだなあ、って……分かったんだ。それでね、神様にお祈りしたんだ……。斑鳩さんと教室に二人っきりの今、この瞬間が永遠に続きますように、って」


「……」


「それで、こうして……おかしなことが起こってしまったのかな……って」


「う……」


 きっと今のあたしの顔はりんご飴みたいだ。静波くんから目線をそらして、ほとんど斜め後ろを向いてしまっている。


 そんなことをしても、どうせ首筋が真っ赤なのを見られてるのに……。


 気にしなくていい……。静波くんだってさっき、いちごジャムみたいだったもん。


 そうやって自分に言い聞かせるんだけど、どうにも前を見ることができない……。


「ごめんね……」


 意味もなく教室の後ろにある掃除用具入れを眺めていたら、静波くんが静かに言った。


「へっ!? いやいや、謝るのはちがくない? 別に静波くん悪くないよね?」


 あたしは思ったことをそのまま伝えた。だってそうだよね?


「そ、そうかな!?」


「そうだよ! ぜーんぜん悪くないよっ! あはは」


「よかったー」


 よく分からないけど、ようやく静波くんの顔を見ることができた。


 彼も、にっこりと笑顔でこっちを見てくれている。


「ふう……」


 深呼吸をしてみたけど……。今でも心臓がドキドキしてる……。


 自分のことを『好きだ』なんて言われて、嬉しくないわけがない。でも、どうしてだろう……なんというか、申し訳ない気分。あたしなんかでいいのかな? って不安になる。


 いったいあたしのどこを気に入ってくれたんだろう……。顔なのかな、それとも性格? 考えるほど分からなくなる。


 ぐううう~っ。


「ひゃあああっ!」


 なんで!? なんでこんな時におなかが鳴るのよおーっ! ありえないんだけど!?


 あたし今、人生で初めて男子にこくられたところ。人生のピーク。曲でいうなら大サビ。分かるよね? まったく……空気読んでよ……あたしのおなか。


「これ……食べる?」


「えっ!?」


 静波くんがカロリースティックの袋をカバンから出してくれた。


 あううう……! またまた彼の顔が見られない……! でも嬉しい~!!














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