第2話 朋よやすらかに
『あゝ 東京大空襲
碑を離れた四人は、言問橋近くにある「展望広場」でトイレ休憩をかねて立ち止まった。
「やっぱりあの碑の前では飲みにくい。火に追われて大勢の方が亡くなられた場所だしな」
周央はそう言うとお茶を口に含んだ。
「
「ええ。母の姉も5月の空襲で亡くなってますし。父からも『祖父はひいおばあさんを背負って火の中を必死に逃げたそうだ』と聞きました」
お茶をしまいながら周央が語り出した。
「親父は空襲で孤児になってずいぶん苦労したらしいが、店を開く前の話はほとんどしなかった。妹の柳子さんのことも含め、
「そう言ってもらえると書いた甲斐があったな」
康史郎は目を細めた。
「そうそう、ノートと言えば、いいニュースがあるんですよ」
「『
「おお、ついにか」
康史郎は思わず声を上げ、周りの人々が振り向いた。梨里子は何事もなかったかのように話を続ける。
「まだ予告は出てませんけれど、映画館にチラシがあるかもしれないから探してくるってパパが言ってましたよ」
「梨里子が
椿がしみじみと言った。康史郎もうなずく。
「ドラマには出なかった、かつら姉さんや隆義兄さんの活躍が見られるんだからな。楽しみだよ」
「あら、横澤さんや征一おじいさんの子ども時代も見られるんでしょ」
椿の言うとおり、康史郎の回想ノート『
「マンガでは
「残念だが生きているのはもうわし一人だからな。いい供養になるだろう」
梨里子の説明に康史郎が満足そうにうなずいた。
「では、休憩が済んだら川を渡ろうか」
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