第2話 ある任務(中編)
N…ナレー
キナミ…新米。双眼鏡
カタオカ…ベテラン。スナイパー
ナカノ…オペレーター。お嬢
───────
N「ビル風を避け、上空の風を読んであさっての方向に打ち出された弾丸をオペレーターのナカノは観測していた。スナイパーライフルの全ての弾丸にはチップが搭載されており今どこにあるのか分かるようになっている。盗難防止とか備品管理とか言っているが実際は経費削減のために弾数を一発でも無駄にできないのだ。
放たれた銃弾は強い風に泳がされ弧を描きながら目標に向かっていき…途中で途切れた。」
ナカノ「……は?」
カタオカ「どうした?外したのか?」
N「スナイパーの相方は目標の的の方を凝視しており、命中したら報告をする手順のはずだ。その報告がないということは失敗したことを意味する。」
キナミ「ちょっとどうしたんすか〜」
カタオカ「すまん、もう一度情報をくれ」
キナミ「ハイハイっと」
ナカノ「ちょっと待って。キナミ、あんた次は目標じゃなくて弾のほう見ててくれる?」
キナミ「撃った弾ってこと?いいけど」
N「いいんだ。できるのか。」
カタオカ「もう一度だ。次で決めるさ」
N「キナミと呼ばれた男は今度は銃口から発射される弾丸を見た。
彼は警察学校で女子寮のノゾキをやらかし本来はドベ、というか退学(追放?)されるべきだったがその卓越した動体視力の高さを買われて女子たちに蔑まれながら卒業するまで在籍したのだ。後にもっとヤバいやつが現れたことでビリこそ免れたがそんな問題児が警官になれる訳もなく、推薦(のていで)この警備会社に就職するにいたったという訳だ。
そんな問題児は大きく弧を描いて標的に向かっていく弾を双眼鏡でしっかり見ていた。が、途中で急に弾が消えてしまい見失った。」
キナミ「は…?」
ナカノ「こっちも位置情報途切れた、、、何が見えたの?」
キナミ「わかんねぇ…なんか、、
N「困惑を隠しきれない3人。銃弾を浪費したことは怒られてしまうだろうが任務失敗は許されない。次の弾をセットし、風を読み、標的の位置を見極め、確実に頭を狙って引き金を引く。しかし、目標まで残り4〜5mまで近づくと反応が消えてしまう。ついに成功することはなく気がつけば標的が目視できるまで近ずいてきていた。月明かりだけの大通りの上、道の真ん中をゆったり歩いてきたソイツは男か女かも分からないただの黒い塊にしか見えなかった。」
カタオカ「この地点を越えられたら風に煽られて弾はビルに邪魔される。次で決めるぞ」
キナミ「そうですね、、、次で決めるってそれ何回も聞きましたけどね…」
N「2人はなるべく平静を装っているが、対面したことの無い異常事態に大粒の汗を額に浮かべていた。こんなに寒いのに。」
カタオカ「ふぅ…大丈夫だ。もう見抜いたから。次が最後の1回だ」
ナカノ「…どうやるって言うのさ」
キナミ「ヤツが近づくにつれて銃声が2発鳴ってるのがわかったんだよ。どうやってんのか知らないけど、、銃弾を撃ち落としてるんだよ…ヤツは…」
カタオカ「ああ…この距離だからビル風に流されないように上に向けて撃っていたんだ。だがもうこの距離ではその必要はない。次は下に向けて撃つ。ビル風で加速されて45度の角度でヤツの脳天を撃ち抜くんだ」
キナミ「ん〜見たところあいつの持ってる銃はベレッタM92ってやつだな、、装填数は15発だ。次で弾切れだよ、予備が無ければね」
ナカノ「(絶句)…了解。バックアップするよ」
N「どうやら3人は次で最後と覚悟を決めたようだ。銃弾を狙い撃ちするとかどんな変態だよ。そんなことできるなら普通に避けれると思うんだけど。
てかキナミ君は最悪の男だけどけっこうやる男じゃないか。
作戦会議をしている間中、標的になっているソイツはこの辺りから撃たれたと思うんだけどな〜とでもいいたげに首を傾げていた。いわんこっちゃない、バレてるっぽいぞ。
強い風が吹き荒れる中、スナイパーが屋上から身を乗り出す。フェンスが無いため強風が体を煽り、気を抜けば転落してしまいそうだ。銃弾すら見切って狙撃する視力、この辺りが狙撃ポイントだと推測する勘…ソレが屋上で不審な動きをしているのを感知しないわけがなく、身を乗り出したスナイパーに標的が気づいた瞬間、銃弾が頭をぶち抜いた。
…タッチの差だったようだ。銃弾が2つ鳴り響いた。」
後編へ。
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