第4話 ニ隊長
花仙子の子孫直系の姫である紅花は実家である
この城の一室で花族会議は行われる。
会議が行われている室の前に向かうと、四季宮守兵隊長である黒髪短髪の偉丈夫の
「お久しゅうございます。太巖殿……
二人は紅花を見るに、太巖は無言で頷き、カーシュカイは嬉しそうに紅花に近寄った。
「紅花、せんせいだなんて。君が隊長になった瞬間から私の弟子を卒業したはずだよ」
「そっそうでしたね、すいません。カーシュカイ、殿」
「いいや、謝ることはないさ。君は立派になった。一人暮らしも始めてそろそろ一月経つが、あの小屋で不便なことはないかい?なんせ私の昔若い頃一人で建てたものだから」
「……不便なんて。むしろ少額で貸して頂いて助かってます」
「ボロ屋のようなもんだから少額と言わず無料で貸すと言ったのに……君ときたらあんなボロ屋でも家賃を払う払うとうるさくて」
「人から物を借りたら、それ相応の対応しなくてはならないと教えて下さったのは師匠ですよ」
「しかし……君は私のとって唯一無二の護るべき姫の一人であり、実の娘同然なんだよ。そんな相手からお金を貰うなんて……」
「
「わかったわかった。もう何も言うまいよ。さぁ私の小さな姫君、再会の抱擁させてくれないかい」
「……再会って、一月前にも会ったじゃないですか」
「何言っている、一月は長いじゃないか」
カーシュカイの親バカのような発言に恥ずかしく、横にいる太巖を見ると、少し離れたところで、壁に背中をつけ目をつぶっていた。
(まるで、見てないから存分にやってくれと言われているようだ)
カーシュカイは太巖を気にも止めず、ラーディカ族特有の筋肉質の体躯で紅花を優しく抱きしめた。
その瞬間紅花は昔に戻ったかのような感覚に落ちた。
昔からカーシュカイにはことあるごとに抱きしめてもらっていたことを思い出す。それは郷の皆に能無しと言われ泣いた後によく『大丈夫だ。いつか俺だけじゃなく、紅花のことをみてくれる人がきっと現れる』と言って慰めてくれた。
カーシュカイは紅花にとって尊敬する武術の師匠であり、幼い頃より長年紅花の護衛を担ってきた人物だった。彼は花能が無いからというだけで紅花を蔑むことはなく、直系の姫の一人として尊重し、母親の岐冴とは違い紅花に愛情もって接してくれた数少ない人物で、実の親以上に慕う相手だった。
紅花が今外門守兵隊長であるため、彼は紅花の護衛は外されており、彼の実力と経歴を考慮され今は郷守兵隊長である。
カーシュカイは抱擁を解くと、下から上にと紅花を眺め目元を和めさせた。
「大きくなったね。郷から脱走しようとあの手この手でこの私を振り回していたあの姫君が、あっという間に大人の女性になってしまった」
「何言ってるんですか、もう。」
幼い頃を知っているカーシュカイにそう言われ、紅花は気恥ずかしくなった。
「この老いた身には、若者の成長は著しく早いと感じるものなんだよ」
「老いなんて、
ギギギィィィィィ
二人の和やかな会話を割くように、古びた室の扉が開く。
「四季宮守兵隊長太巖様、郷守兵隊長カーシュカイ様、外門守兵隊長紅花様、お入り下さい。皆様がお待ちしております」
族長の補佐である蓉貞が無機質な視線を三隊長に向け入室しを促す。
紅花は気を引き締め直し、二人の隊長と共に室に入った。
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