魔法少女
「異能が……魔法少女?」
「そうなのだ!」
えっへん、と可愛らしく腰に手を当て胸を張る。
本当に百歳なのか少々疑わしくなってくる。
「んで、そんなこと聞きに来た訳じゃないんでしょ?何の用かしら!」
(キャラ固まって無くね?)
「えぇ、実は――」
変身型の異能力者と出会ったこと、その異能力者は常に変身状態だったこと、あった時——
それらのことを伝えると綺羅はベンチに座り、顎に手を当てながら答える。
「ん-、その子は間違いなく変身型だね……多分異能に目覚めて三日ぐらいかな?」
「と、いいますと?」
「変身型……って言ってもすべての異能に共通するんだけど、異能ってのはある程度感情によってブレるんだ
と言っても正の感情——喜びとか落ち着きとかだと変わらないけど……負の感情だと結構変わる」
「はぁ……具体的には?」
異能についてまだよくわかっていない高橋が訪ねる。
「ま、怒りとか憎悪とかそこら辺が有名かな?ほらマンガでよくあるじゃん、『よくもあいつを殺したなー!』って、それと同じでそういった感情で異能の出力は上がる……けれど制御できるわけじゃない、いわば一種の暴走ともいえる」
「じゃあ、かの者はそういった感情に支配され、暴走していると?」
「それは……どうだろ?多分違うんじゃないかな」
「多分とは?」
「いやまぁ、家族がビジターにやられちゃって憎悪にまみれてるかもだけど……
予測になるけど、変身したことによる不安感じゃないかな」
"どうして異形の姿になったのか""もう元には戻れないのか""これからどうすればいいのか"
自分の姿がある日突然変わる、というのは凄まじいストレスがかかる。
腕が腫れるなどの常識的な範囲ではない、異形の……化け物の姿になるのだ。
そしてそれがわかるものはいない。
もしも、かの異形が家族の前で異形になったとしたら?
「それは……」
そこまで考えれた高橋が口を噤む。
自分はまだ恵まれた方だったのだな、と。
「だからまずは、その子を落ち着かせないといけない
じゃないとその子死ぬよ」
■
異形の死。
それを告げられた不知火と高橋は街に戻っていた。
「しかしどう探す?」
「人気の無いところを探しましょう」
そうして、人気の無いところを目指し歩き出す。
変身の異能。
それはつまり、変身している間常に異能を行使している、ということだ。
高橋は感じ取れないが、不知火や霧生、綺羅等は異能を行使する際に疲労を感じる。
腕を数度振るうようなモノに過ぎないが、それも過ぎれば結構な体力を消費する。
ならば、何日も異能を行使し続ければどうなるか――想像に難くない。
「しかし、人気の無いところと言っても具体的に?」
「……まぁ、廃墟とか?」
「この前廃墟探したけど……特に変なの無かったような」
そう、そうなのだ。
高橋が元の生活に戻って約一月。
その間定期的にパトロールというか探索を続けたが、異形に関する情報は何も無かった。
時期的には異形化した後に探索が始まったので、ここら辺にいるのならば夜中の工事現場や使われなくなった家等、高橋たちが散策してきた場所に居ても可笑しくはない。
であれば。
「これまで探索してないところ……?」
頭を捻るが、不知火には思い当たる節は無い。
しかしそこに、高橋が手を挙げる。
「ちょっと街から離れるけど……一つ心当たりが」
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