異形の者

 前書き:今回から三人称になります

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「はぁ、はあぁ、はぁ……」


 荒い息だ。

 ぜぇぜぇと全力疾走後の様に息をただただ吐いている。


 何でこんなことに、どうして自分が、自分が一体何をしたんだ――


 異形の者は堂々巡りの思考を繰り返す。


 この異形はビジターではない、この世界地球の存在でもない。

 いや、地球の存在ではあるだろう、まっとうな者ではなくなったというだけで。


 おえ、と口から血を吐き出す。

 本来なら赤かった筈の血は青く濁ってしまっている。


 ごぼ、と言語にすらなっていない音が喉から漏れる。



 腹が減った、食べなくては。



 ほぼ本能そのままに、異形は社から飛び去った。










 ■


 いつも通りの授業、いつも通りの風景。

 ただし心の中は違う。

 マルチタスクーー複数のことを同時にこなす力。

 前の彼……高橋ならば不可能だったことだ。

 今も普通に授業について行きながら昨夜のことを考え続けている。


 あの異形がなんだったのか、と。


 大まかな予想はできるが、有識者の知見がいると、考えるのをやめた。





「——ビジターっぽい推定異能力者?」

「ああ」



 放課後、人気の無くなった時間帯。

 屋上へつながる階段の下、高橋は不知火と会話をしていた。


 何があったのか、詳細を話し、最後にネックレスを取り出す。


「んで、最後にこのネックレスが光ったのよ」


 プラプラと指で回す。

 うーん、と不知火は悩みながらも答える。


「……多分、変身型の異能、かな」

「変身型?」

「うん――数多くある異能でも持ち主は少ないんだけど」


 変身型の異能。

 大まかに区別するのならば『発現型』——つまりある日突然異能に目覚めた者。

 この変身型の異能は少々特殊であり、異能を使えば自身の姿が変わる。

 単純に姿が変わる者から服装だけが変わる者まで。


 ただ共通するのは異能の発動には変身……姿かたちが変わる必要がある、ということ。


「そんなに少ないの?」

「うん……確認できてるだけでも世界で三人だけで、一応うちにも一人だけ……いるんだけども」


 少し言いよどむ姿に疑問を抱く。


「う~ん……その人には会えないのか?」

「…………会おうと思えば会えるけど……」


『後悔しない?』という言葉に若干不安を覚えながらも、高橋は頷いた。







「はじめまして!私綺羅光!よろしくね!」


 きゃぴ、とかわいらしく手を振る。

 周囲に光を撒き散らしながら、少女がウインクと共に自己紹介をする。

 非常に小さい女児だ。

 高く見積もっても小学校高学年——十歳程度にしか見えない。


「えぇ……」



 こんな少女まで徴兵しているのかと、思わず高橋は引く。


「……その演技気持ち悪いのでやめてくれませんか綺羅

「え~」


 ぷくぅ、と可愛らしく頬を膨らませる。

 ハムスターみたいだな、と少し遠い眼をする。


「……その年でそういうことされるとちょっと本気で引きます」


 すすっと綺羅から距離を取る不知火。


「……ん?綺羅……ちゃん?さんは幾つなの?」

「えへ、綺羅は永遠の~

「実年齢この前百超えましたね」


(へぇ~百……100?!)


 ばっと、高橋は思わず二度見をする。


(どう見ても女児だが?!)


「綺羅さんの異能は『魔法少女』……名の通り魔法少女の異能です」

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