第39話 エルフの国を強化



「よっと。」

「ウキャキャ!」


「!?」


 おっと、急に転移したせいでビックリさせてしまったようだ。魔王リルルが武器を構えてこちらを威嚇している。


「わりぃ、わりぃ。」


「く、黒宮様とリアンちゃんでしたか。心臓が止まるかと思いました。」


 俺達と分かるやいなや、武器を下ろし顔を破顔させる超絶美形エルフ。まったく、かわいい奴だ。


「どうだ?あれから体に異変は無いか?」


「はい、お陰様ですこぶる元気です。」



 ふむ、それなら良かった。何気なにげに初めての蘇生だったので、心配していたんだ。



「あ、忘れていました!黒宮様は褒美として何を望まれますか?」


「ん?・・・んー別に何も。コルネ達に頼まれたから気まぐれで助けただけだし。」


 そもそもこの貧乏国家にお金の支払い能力があるようには思えないしな。


「え?どうした?」


 俺の返答を聞いてなせがリルルが泣きそうになっている。目尻に溜まった涙が今にもこぼれ落ちそうだ。


「いえ、何でもありません。本当にありがとうございます。では何かあったらその時に仰ってください。」


「おぉ。」



 コンコンコン


 おっと誰かが来たようだ。


「はい?誰ですか?」


「リルル様、失礼します。」


 そう言いながら、エルフには珍しく、ちっこいのが入ってきた。


 ・・・なんでクマの着ぐるみを着ているのだろうか?


 ハロウィンかよ。


 俺が唖然としていると、向こうも俺に気が付き目と目が合う。


「・・・げっ、お前は街中で噂になっている人間だな。」


 そう言いながら、ちびっ子が顔をしかめる。だがなぜだろうか?子犬が吠えているようにしか見えないため、まったくイラッとこない。



「彼は私の命の恩人ですよ?ちゃんと挨拶しなさい。」


「ぶー。男なんてバイキンです。バッチィです。」


 ・・・なんかヤベー奴がきたかもしれない。


「コラ!ルーナ!」


「・・・ぐむむむむ、ちぇ!」


 ルーナと呼ばれた少女が観念したように俺の前まで歩いてくる。だが不機嫌なのを隠そうともせず、不貞腐れている。


「異世界からやって来た黒宮レイだ。よろしく。」


「ん。」


 握手をしようと手を伸ばすと、まるで思春期の女子が父親の靴下を触るかのように人差し指だけつままれた。まだ加齢臭はしないと思うんだが?


「どうしましょう、指が男臭いです。リルル様、今すぐ除菌してきてもよろしいですか?」


 ゴチン!


 リルルがルーナにゲンコツを食らわす。


「い、痛いですう!」


 大きなたんこぶをさすりながら恨めしそうにつぶやくチンチクリン。


「ごめんなさい、この子は優秀なんですけど重度の潔癖症なんです。」


「別に気にしてないぞ。」


 むしろここまで来るとおもしれーし。顔と指先以外モコモコで包まれてんのも納得だよ。


 いつか泥んこまみれにしてやろう。


 ニヤニヤ。


「なんだその顔は!?このケダモノめ!」


 ゴチン!


「い、痛いですう!」



 うん、コイツは学習能力のないバカだな。たんこぶが2段のアイスクリームみたいになっている。ニヤニヤ。


 

「魔王さんや、そのへんにしといてあげてくれ。」


 このガキの相手をしていると話が進まないからな。


「は、はい。お恥ずかしい所をお見せしてしまいました。」


 少し顔を赤くしながらリルルがペコリと頭を下げる。



 うむ、よろしい。


 さてさて、それでは今日の本題に移ろうか。



「昨日この国を見て思ったんだが、いまいち発展できていないように思う。建物もボロボロだし、街を囲む塀もしょぼい。」


 ハッキリ言って国というよりちょっと大きな集落みたいなもんだ。日本はもとより、この世界の人間国家よりも遥かに遅れている。


「う・・・そ、それは・・・その通りですね。」


 痛い所を突かれリルルが目を伏せる。


「そこでなんだが、俺が改造してもいいか?」


「え?」


「取りあえず外に付いてきてくれ。」


「ウキャキャキャ!」





 リアン、魔王リルル、潔癖症のルーナと一緒に小さな街の中を歩く。


 どうやら彼女達は国民からの信頼も厚いようだ。行く先々で気軽に声をかけられる。普段から誠実に接している証拠だろう。


 ちなみにだが、俺は救世主メサイアと呼ばれているらしい。


 この国に受け入れられて何よりだ。


 




 そうして、まず最初にやって来たのは、国をグルリと囲んでいる外壁だ。


「どうするのですか?」


「んーまずほりを作ろう。リアン、影に入って〈猿マネ〉をしてくれ!」


 そっちの方が効率がいいからな。


「ウー!」


 

 レベル4の土魔法〈トラップ〉を使用する。本来は落とし穴を作る魔法だが地面を掘ってくれるので丁度いい。


 リアンと共に猛スピードで外壁の周りを掘削くっさくする。だいたい幅5メートル、縦5メートルの巨大な溝だ。もちろん常人がジャンプで飛び越える事は出来ないし、一度落ちたら這い上がることも出来ない。


 水を流せば水堀にもなる。



 4時間程で完成させると、次に、取り掛かったのはへいだ。


 

 ピロリン!


『エクストラスキル〈職人の手〉を獲得いたしました。すでに所持しているエクストラスキル〈ツリーハウス〉及び〈ダンジョン管理〉内のメニュー【建築】に反映させます。宜しいですか?』


「お、おぅ。」


『・・・準備中・・・準備中・・・』


 ピロリン!


『完了いたしました。』


 まぁまぁまぁ、仕事が早いことで。流石エイミーさん。便利にしてくれてありがとうございます。






 えーと、それで俺は・・・なんだっけ?何をしようと?


 あぁ、塀を作る作業ですね。



 ボロボロになっている箇所はレベル2の土魔法〈ウォール〉で補強しつつ、付与魔法で〈物理体制Max〉〈火耐性Max〉〈水耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈雷耐性Max〉を壁に付与していく。


 実際に使用するには誰かが魔力を流し込む必要があるが、取りあえずこれだけやっておけば心配はないだろう。空からでもなければ突破するのはなかなか難しい。



 最後に仕上げとして街の中央にある質素なお城をサクっとぶっ壊してっと、、、



 ピロリン!


『エクストラスキル〈破壊〉を獲得いたしました。』


 うんうん、なんかよう分からんけど変なスキル覚えたわ。


 で、更地になった所で、エクストラスキル〈ツリーハウス〉で、10階建ての超巨大な樹をドーンと建てる。


 もちろん各種耐性を施し済みだ。


 有事の際に避難場所にすれば数千人ぐらいはなんとか収容出来るだろう。



 取りあえずこんなもんかな、うん。



【種族】ハイヒューマン

【名前】黒宮 レイ 

【性別】男

【魔石】中 レベル21(12/21)



スキル〈真・剣術Max〉〈神聖魔法Max〉〈格闘術1〉〈真・火魔法Max〉〈真・水魔法Max〉〈真・風魔法Max〉〈真・土魔法Max〉〈真・雷魔法Max〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈透視1〉〈真・身体強化Max〉〈真・詠唱省略Max〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈擬態1〉〈威圧1〉〈飛行1〉〈ブレス1〉〈投擲1〉〈粘糸1〉〈超音波1〉〈裁縫1〉



常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉〈不快耐性1〉〈殺気耐性2〉〈疲労耐性1〉〈真・思考加速Max〉〈真・見切りMax〉


エクストラスキル〈飛翔斬〉〈無詠唱〉〈蘇生〉〈瞬歩〉〈並列思考〉〈インフェルノ〉〈ブリザード〉〈ツリーハウス〉〈職人の手〉new!〈破壊〉new!


オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉〈竜魂(中)〉〈ラプラスの悪魔〉〈ダンジョン管理〉up!〈御恩と奉公〉



称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》《剣術を極めし者》《詠唱を極めし者》《ドラゴンとして転生するはずだった者》《聖なる魔法を極めし者》《身体強化を極めし者》《思考加速を極めし者》《叡智と因果律に愛されし者》《ダンジョンの主を倒した者》《ダンジョンの主》《悪霊(デーモン)の親》《付与を極めし者》《火魔法を極めし者》《水魔法を極めし者》《風魔法を極めし物》《進化した者》《土魔法を極めし者》《雷魔法を極めし者》《王としての芽生え》




 〈職人の手〉は戦闘系ではなく、どちらかというと生産系のスキルだそうだ。物作りの際などにイメージ通りの物が作れてしまうらしい。しかもエイミーがダンジョンメニューにも反映してくれたからそっち方面でも役立つ事間違い無し。


 まぁそんな感じ。


 で、次は〈破壊〉について。


 このスキルは無機物でも有機物でも手の平で触れたものを破壊してしまうらしい。使いようによっては内部だけを破壊することも可能だとか。


 これって凄いよね?


 うんうんうん。


 国民もリルルも喜んでくれたし、俺としても丸1日頑張ったかいがあった。


 お礼として次回はとっておきの場所に連れて行ってくれるそうだ。


 楽しみだぜ!

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