第29話 デーモン誕生
日本
翌日、学校を終えた俺は、ダンジョンをどこに設置するかで悩んでいた。
どうせならある程度の広さがあって、みんなの家から近い場所の方が良い。
それに、行政や誰かの一存で、奪われたり通行禁止になるような土地はダメだ。
となると、やはりどこかに勝手に作るよりも、自分の所有する土地に作った方が良い。
そう判断して近くの不動産屋に足を運ぶ。
「いらっしゃいませ〜」
下手くそな営業スマイルを浮かべながら、40代ぐらいの男が挨拶をしてくる。
しかし、俺には分かる。内心は、ガキがこんなとこに1人で来てんじゃねーよと思っているに違いない。
「お住いをお探しですか?」
「えぇまぁ。」
「ちなみにご両親は?」
「いないっす。」
「・・・それでは・・・また今度ご家族とよく話してからご利用ください。ありがとうございました。」
そう言ってリーマンは席を立とうとする。ろくに話も聞かずに強制終了とは気分が悪い。
「ここら辺で広い土地を探しているんですが?お金ならあるんで。」
「・・・あのね、うちは子供の冷やかしに付き合っている暇は無いんですよ?分かりますか?大人をからかうのも程々にしなさい。」
おっさんが面倒くさそうにピシャリと言い放つ。おかげで店中の注目を浴びてしまったではないか。これでは完全に冷やかし客だ。
まぁ言っていることは分からないでもないが、こっちは大真面目で来ているというのに。
カチンときたぞ。
背負ってきたリュクサックと
「「!?」」
ザワザワザワ
店中の人間が目の前に高く積まれた大金に目を見開く。それもそうだろう、なにせ1人の人間が生涯に稼ぐ平均は2〜3億円なのだから。退職金を合わせて手元に2000万あれば
そんな中、まだ二十歳にもなっていない若い少年が8億円も取り出したら顎が外れるだろう。
俺の対応をしていたリーマンは口をアワアワさせている。
「おい、それでこの辺に広い土地はあるのか?」
「・・・は、はい!今すぐ確認致します!」
急に電池の入った人形のようにオッサンが動き出す。
金で態度を変えるなんて悲しい生き物だ。
まぁでもこれが現実だよな。
俺とて札束でビンタをするようなマネはしたくなかったが仕方あるまい。
そうして紹介されたのは3つの物件。車に乗せてもらい1つ1つ確認しに行った。
中でも俺のお眼鏡にかなったのは3番目の物件だった。不動産屋もわざとそこに本命を持ってきているのだろう。俺とてそれぐらいの営業知識はある。
まぁ、でもそういったことを抜きに考えてもここは良い物件だった。
大通りからは1本入った道にあるが、御堂家からも学校、マンションからもほど近い場所にある。
しかも隣は大きな芝の公園があるため周辺環境もボチボチだ。
それでいてお値段3億8900万。
敷地内に立っている家はどうでもいいが、土地がバカ広いので地下に充分ダンジョンを作ることが出来る。
早く準備をしたいのでここに即決した。もちろんキャッシュで一括払い。
ちなみにめんどくさい書類は後見人を源三としておいたのでなんとかなった。
♢
と言うわけで、購入手続きを終え不動産屋から戻ってきた俺は、早速ダンジョンの制作に取り掛かった。
まずはメニュー画面を開く。
【フロア】 地下10
【魔物】 ON
【宝箱】 ON
【罠】 ON
【建築】 ON
【モニター】OFF
【自動化】 ON
【リセット】OFF
【フロア】をタップし地上型ではなく地下型ダンジョンを選択する。階層は取りあえず20で。
第1フロアは、万が一誰かが侵入してきた時のことを考えてただの難解な迷路にした。しかもゴール直前の道を大岩で塞いだため誰も通れない。これで防御面はバッチリだろう。
本格的に作ったのは第2フロアから。
イメージは春。草原フィールドに1年中咲く桜の木を植えて、擬似太陽と擬似空を作り出す。
普段ならできない事が出来てしまうのがダンジョンというわけだ。さすが
そして、第3、4、5フロアはそれぞれイメージを夏、秋、冬に設定し、温度調整から水辺の設置まで行った。
続いて第6フロアは会議室兼くつろぎスペース。
木でログハウスのようなものを作ったのでみんな喜んでくれるだろう。
司令室には管理者権限である【モニター】も置いたので、
まさに完璧な仕上がりだろう?
で、一番重要なダンジョン核は、最下層第20フロアの隠し部屋に設置した。これはメンバーにも秘密事項だ。
ざっとこんな感じだろうか?
あとは必要が出てくればおいおい、作っていこうと思うが、、、
あぁ、そうそう
第1フロアを
もちろん最初に生体認証で登録するため、あかの他人に悪用される心配も無い。
もし転移石ごと外に持ち出されたとしても、魔力濃度の低い地球では使えないし、そもそもこれはダンジョン限定の転移石なので、外ではただの石になる。
まぁそういうわけで心配は何もないわけだ。
我ながら頑張ったと思う。
制作を開始してから5時間、
「取りあえず完成だ〜!!」
♢
納得の出来にご満悦の俺はルンルン気分で自宅マンションへ帰った。
現在は日付がまわって、午前1時。
ゆっくりと風呂に入ってから、金のタマゴに魔力を注入する。
何が出てくるかは不明だが楽しみで仕方がない。全体を優しくナデナデしてやる。
すると、タマゴがプルプルっと動いた。どうやら喜んでいるようだ。
カワイイので再び魔力を大量に与えてみる。すると今度は先程よりも大きく動いた。
おそらくサボテンとか小さな観葉植物を育てている人にはこの気持ちが分かるだろう。
この子は俺がいなければ生きていけないのだ。
それから調子に乗って10回以上同じ事をしていると、遂にタマゴにヒビが入った。
「おぉ!」
次第にヒビが大きくなる。チラッと見えたかんじ生き物だろうか!?
頑張れ!
ヒィヒィーフーだぞ!ちゃんと呼吸をしろ!
あ、いや、違うか!その呼吸法は産まれる側じゃなくて産む側か!
えぇぃ!もうどっちでもいい、とにかく頑張れ!
祈るようにじっと見ていると、タマゴの上半分が完全に割れて、何かが顔を出した。
サルだ。
日本の動物園にいるようなリアルな猿ではなく、何かのキャラクターのようなデフォルメされたカワイイサルだ。
毛並みは黒く顔だけ白っぽい色をしている。
「ウキ?」
「おぉ〜よしよし。」
「ウキキキ!」
どうやら俺がパパだと認識しているようだ。頭を撫でてやると嬉しそうな声を上げる。
カワイイ。
「ウキ、ウキ!」
「ん?どうした??」
ボン!
「!?」
なんじゃこりゃ!?目の前に俺の顔が現れた。あら、カッコイイ、、、じゃなくてタマゴから俺の顔が生えている!
シュール過ぎるだろ!
「もしかして・・・」
見慣れた顔だが、よく見ればどことなくサルっぽい雰囲気が漂っている。
特に口元なんかT字だし、仕草が少しだけアホっぽい。
「すげーな!」
「ウキキキ!」
「ハハハハ、それがお前の能力か?」
「ウー!」
なんだかよく分からないが、特殊なスキルだと言う事は分かる。生まれたばかりなのに器用な奴だ。
「ん?ていうかなんで日本なのにスキルが使えてるんだ??」
魔石が無いと無理な筈では・・・?
『どういうことだ?』
ピロリン!
『悪霊(デーモン)と自動的に主従関係が結ばれたため、魔力パスが繋がれました。マスターの魔力を消費してスキルを行使しているものと思われます。』
まじか、このおサルさんはデーモンなのか。むちゃくちゃカワイイけどな。
ピロリン!
『称号 《悪霊(デーモン)の親》を獲得いたしました。これによりエクストラスキル〈隷属〉を習得いたしました。』
おぉ!
取りあえずステータスウィンドウを確認してみるか!
【種族】ヒューマン
【名前】黒宮 レイ
【性別】男
【魔石】小 レベル65(11/65)
スキル〈真・剣術Max〉〈神聖魔法Max〉〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈真・身体強化Max〉〈真・詠唱省略Max〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈付与1〉〈擬態1〉〈威圧1〉〈飛行1〉〈ブレス1〉〈投擲1〉〈粘糸1〉〈超音波1〉〈裁縫1〉
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉〈不快耐性1〉〈殺気耐性2〉〈疲労耐性1〉〈真・思考加速Max〉〈真・見切りMax〉
エクストラスキル〈飛翔斬〉〈無詠唱〉〈蘇生〉〈瞬歩〉〈並列思考〉〈隷属〉new!
オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉〈竜魂(小)〉〈ラプラスの悪魔〉〈ダンジョン管理〉
称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》《剣術を極めし者》《詠唱を極めし者》《ドラゴンとして転生するはずだった者》《聖なる魔法を極めし者》《身体強化を極めし者》《思考加速を極めし者》《叡智と因果律に愛されし者》《ダンジョンの主を倒した者》《ダンジョンの主》《悪霊(デーモン)の親》new!
【種族】悪霊(デーモン)︙シャドウモンキー
【名前】無し
【性別】オス
スキル
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉
エクストラスキル〈シャドウ〉
オリジナルスキル〈顔マネ〉
称号 《人間の子》
ふむ、どうやら俺のステータス画面に連結して表示出来るようだな。
種族は悪霊(デーモン)の中のシャドウモンキーか。
聞いたことはないが、まぁ、そんな事はどうでもいい。
スキルは、、、通常スキルを持っていないようだが、各種耐性と、、、オリジナル、エクストラスキルを1つずつ。めちゃくちゃ
たぶんたっぷりと魔力を流し込んでやった
よく見れば親と子の称号もあるし、ますます愛着が湧くじゃねーか!
「そうだ!名前を付けてやろう!」
「ウー!」
「・・・。」
・・・
・・・やばい、めっちゃキラキラした目で見上げてくる。男の子の名前で何か良い名前は、、、
知識を総動員して考える。
「じゃあリアンとかどうだ?意味はフランス語で『絆』なんだけど?」
音の響きもキレイだし我ながら結構良いのではないかと思う。
「ウキャキャキャ!」
どうやら本人も気に入ってくれたようだ。
「よし、お前は今日からリアンだ!よろしくな!!」
「ウーーー!!」
こうして俺は生涯を共にする大切な相棒をゲットした。
ちなみにエイミーに確認したところ、悪霊(デーモン)と契約した人間の記録は、公式には残っていないそうだ。
つまり、金のタマゴからリアンが生まれて来てくれたことは、とてつもない幸運らしい。
スマホゲームで例えるならば余裕でSSRだろう。
神様ありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます