第28話 グループ結成
日本
・・・なぜこうなった?
俺は今、有名雑誌モデルの宇田アイリに抱きつかれている。
それも雪乃、赤羽、ナナ、事務所関係者、病院のナース、いろんな人がいる中で、猛烈に抱きつかれている。
いや、みなさん、そんな顔で私のことを見ないでください。「え?お前らってそうゆー関係だったの?」みたいな顔はやめてください。
ていうか、空気を読んで部屋を出て行こうとするのはもっとやめてください。
あぁ、もぅ!なんとかして彼女を引き離さなくては!
「だ、大丈夫そうっすね。」
「うん!」
「じゃあ・・・離れてください。イミガワカラナイというかみんなに勘違いされるし。」
「イヤヤ。」
「え?」
・・・なんだコイツ。やべーな。
すると宇田アイリが、誰にも聞こえないぐらいの声で耳元で
「君が不思議な力で治してくれたんやろ?うち夢の中で視てたんよ。」
ギク!
「ハハハ、そんなバカな。」
「あれ?とぼけるん?せやったらウチが視たことみんなに言っちゃおっかな?」
「いやーいやーいやーハハハ。何をオッシャッテイルノヤラ。」
「あんな〜、、、」
突如アイリが大きな声を出す。
「イヤイヤイヤ、お嬢さん待ちなさい。」
コソコソコソ。
もう、
「じゃあ認めるん?」
・・・こうなったら仕方あるまい。
「・・・否定はしない。」
「やっぱりそやったんやね。」
「うん。」
「・・・ありがとう。」
「う、うん、それでなんだけど、この事は絶対に口外しないでくれる?ほら?バレたらパニックなっちゃうし。」
「うん、君に助けてもらった命と脚だから、そんなこと死んでもせーへんよ。」
そうか、取りあえず俺に対して恩義は感じてくれているようだ。良かった良かった。
「サンキュ。じゃあ内緒話も終わったしそろそろ離れてくれ。」
「イヤヤ。」
「は?」
・・・なんだこの女やっぱりやべーな。面倒くさい女に引っかかってしまったかもしれない。さて、これからどうやって付き合っていったらいいんだ?
困った困った。
思わず頭を抱える。すると救いの神が現れた。病室のドアがノックされ1人の老人が入って来たのだ。
彼を確認するや否や、病室の空気が一変し、皆一斉に緊張した
それもそのはず、この初老の男性は病院のオーナーにして、日本経済を
「御堂さん!」
そう言いながら岸和田社長が頭をペコリと下げる。
「うむ、うむ。そう、硬くならんでもいい。お前のとこのモデルが大変な目にあったようだな。お嬢さん体の調子はどうかな?」
「は、はい、すっかり良くなりました。ありがとうございます。」
「ふむ。見たところ本当に元気そうだな。報告にあった通りだ。」
源三の鋭い視線が、アイリの右脚を捉えている。おそらく本当に脚があるのか確認しに来たのだろう。抜け目の無いじーさんだ。
「事故直後で申し訳ないが、何があったのか君の口から聞かせてもらってもいいかな?担当医の許可も取ってある。」
「は、はい。」
そうして語られた話によると、あの日アイリは誰かに追われていた記憶があるらしい。
しかも警察はなぜか取り合ってくれなかったと。
もちろん彼女の記憶が混乱している可能性はあるが、きな臭いニオイがプンプンする。今の話が本当だとするならば簡単には許せない。
なんとか犯人を見つけ出して懲らしめたいところだ。
ただもちろん高校生の俺には捜査能力も、その手の人脈も権力もない、、、
頼れるとしたらじーさんぐらいか。
♢
俺が源三の家を訪ねるつもりだと赤羽、ナナ、雪乃に言うと、3人とも付いてきた。彼らもいろいろと思うところがあったのだろう。
そういうわけで、最上階の黄金の間で、じーさんと対面する。その傍らには御堂直系の孫娘である
「どうした?少年?」
源三が威厳たっぷりに尋ねてくる。ここは言い出しっぺの俺が代表して話すべきか。
「宇田アイリを襲った犯人がいるなら、それを見つけ出したい。ただ俺たちには捜査能力も権力も無い。」
「ふむ・・・それで儂の所に来たのか。警察の見立て通りただの交通事故の可能性も高いぞ?」
「もちろんそれに越したことはありません。」
「逆に危険な目に合う可能性もある。それでも4人とも調べたいと思うのかね?」
「「はい!」」
「ふむ。そうだな・・・ちょうど30分前に提出された最新の報告書がここにある。読んでみるといい。」
そう言いながら、源三は5、6枚の紙をヒラヒラさせる。
それを受け取った俺たちは食い入るように読み込んだ。
まず目に入ってきたのは、宇田アイリの件は警察内でも触れてはいけないアンタッチャブル案件になっているという事。つまり、パンドラの箱だ。
そして報告書の大部分を占めていたのは、病院に運ばれた時のアイリの現状と緊急オペの内容。そして「天使のイタズラ」直後の医師や看護師の会話内容が書かれていた。
調査の分量からして、事故の経緯を知るためのモノではなく、宇田アイリの体に何が起きたのかを知るための報告書だろう。
とはいえ、これだけでも俺達にとっては一歩前進だ。
報告書を読み終え顔を上げる。
すると全員が読み終えるのを待っていた源三が口を開いた。
「アンタッチャブル案件、それが何を意味するか少年には分かるか?」
じーさんが俺を試すような視線を向ける。だが〈思考加速〉と〈並列思考〉を舐めないでもらいたい。
「つまり、事件を解明すると、警察の人間にとって不都合な事実が明るみになってしまうと言う事でしょう?」
「その通りだ。だからこそ警察は、今回の件をただの交通事故として強引に処理をした。おそらく、その内適当な運転手を逮捕して幕引きを図るつもりだろう。」
「「な!?」」
赤羽、雪乃、ナナが驚きの声を上げる。
「理解したかな?君達がしたいことは危険な可能性があるだけで無く、国家権力とも敵対する可能性があるんだ。」
「・・・。」
「ここでもう1度聞くが、それでも君たちはこの件に関わりたいのかな?」
「もちろんです。」
「俺も。」
「許せないですぅ。」
「警察が動かないなら私達がやらないと!」
「フハハハハ!・・・・よかろう。儂も立場上、表立って協力はできないが影から支援しよう。付いて来なさい。」
そう言って連れて来られたのは、こないだも案内された地下施設。
今日も研究者たちが何百人も仕事に励んでいる。
こんな所に連れてきてどうするのだろうか?
「先日も説明したが我が社は今、機能性スーツの開発に力を入れている。そしてコレが試作品第52号だ。」
ドヤ顔のじーさんの手には、テロテロの黒光りする服が握られている。
「このスーツは着るだけで、その人の筋肉の動きを上手いことアシストしてくれる。しかも伸縮素材でありながら、防弾チョッキ並の防御力がある。もちろん非売品だ。全員分あるから着てみるといい。」
・・・なんだか妙な展開になって来た。
取りあえず渡されたスーツを着てみるが、肌にめちゃくちゃフィットしてくる。そのおかげで体のラインが丸わかりだ。
男の俺でも恥ずかしいのだから、女性陣にとっては拷問に近いだろう。事実、2人とも顔を真っ赤にさせている。
体の基礎能力が上がるのはいいが、ハイテク技術の代償はあまりにもデカイ。精神的にくらう。というかこんなピチピチのスーツを着ていたらただの変態じゃないか、、、
だがそんな俺達の気持ちに、じーさんはまったく関心が無いようだ。
マイペースに話を進めていく。
「このスーツとフルフェイスのヘルメットを君たちにプレゼントしよう。まぁもっとも耐久力や性能データは自動的に取らせてもらうがな。ハハハハハハ!」
なるほど、そういうカラクリか。流石ビジネスマン。
「あとは・・・美月、風花こちらに来なさい。」
「「はい、お祖父様。」」
「この2人を儂とのパイプ役として君達に同行させよう。なんならそのままどちらかと結婚し、、、ゲフンッゲフン!ヴウン!あー失礼、とにかくこう見えて護身術も使えるし仲良くやってくれ。」
「・・・は、はい。」
こうして俺達は超高性能変態スーツを手に入れた。と同時に、1つのグループができた。目的はもちろん宇田アイリを襲った犯人を見つけ出すこと。
メンバーは、
黒宮レイ(ブラック)
白石雪乃(ホワイト)
赤羽仁(レッド)
来栖ナナ(イエロー)
御堂美月(ブルー)
御堂風花(グリーン)
暫定メンバー
宇田アイリ(ゴールド)
こんな感じ。
ちなみにカッコ内の色は、スーツの色を表している。全員黒ベースなのは変わらないが、サイドにそれぞれの色が入っているのだ。
ちょうどいいので、それをコードネームにした。
で、まぁここまで役者が揃えば、話の流れは自然と本拠地をどうするのかって話になるわけで、、、
アレを使うしかないよね。
そう、ダンジョン。
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