第27話 ダンジョンのヌシ


 目の前には赤い宝箱と虹色の丸い玉。


 まずは宝箱に手を伸ばしてみる。


 一体何が入っているのか?


 そう考えるだけで、心臓の鼓動が早くなる。


 オープン!


「ん?」


 白色で楕円形のよく分からない物体が入っている。大きさはバレーボールより少し大きいだろうか、よく見れば表面に薄い紋様が刻まれている。


 ・・・タマゴ?・・・だろうか?


 存在感は確かにあるが、こりゃどうしたらいいんだ?


 戸惑いながら両手で持ってみる。見かけによらずズッシリとした重みがあるようだ。


 ピロリン!


『金のタマゴですね。アーランドの図書室で仕入れた情報によると、それ1つで白金貨10枚はします。』


 エイミーが、おそらくドヤ顔で知識をひけらかす。


 白金貨10枚ということは日本円で10億円だ。とてもじゃないがそんな価値のあるモノには見えない・・・しかも色的には金のタマゴじゃなくて白のタマゴじゃねぇか。


「マジかよ?なんのタマゴなんだ?」


・・が孵化するのかは誰にも分かりません。生物ではなくて武器や防具が孵化・・する可能性もあります。』


 ・・・てことはタマゴの形をしているが、分かりやすく言うと、スマホゲームでよくあるガチャみたいなもんってことか?


 あまり詳しくはないがそのぐらいの知識はあるぞ。


『そうですね。国宝級のモノからそこら辺の石ころまで、ありとあらゆるモノが生まれたという記録が残っております。』


「なるほどな。」


 日本風に言うならクソゲーの匂いがプンプンするが、なかなか面白そうだ。


「どうやって孵化・・させればいいんだ?」


『何度か魔力を流し込んでください。すぐに生まれる場合もあれば、1、2週間かかる場合もあります。』


 ふむ、りょーかい!


 それならばとりあえず1回やってみるか。地面にそっと置いてから言われた通り魔力を流し込んでみる。


 するとタマゴの表面にうっすらとあった紋様が黒く光った。


 生物なのか何なのかよく分からないが、喜んでいる証拠だろう。


 こうなったら急に愛着も湧くというもんだ。タマゴを優しく撫でてやる。


 それから5分ぐらいは様子を見ていたが今日のところは生まれそうに無かったので指輪の中に収納しておいた。


 大きく育って欲しいもんだ。



 よし、じゃあ金のタマゴの話はとりあえずここまでにして、次は虹色の丸い玉についてだな。


 これはもう、見た瞬間から人智を超えたパワーを感じるので、貴重なものであることは間違いない。異世界について全く知識の無い地球人でも分かる。


「魔力が出てるよな?」


『スキャンします。・・・解析中・・・解析中!』


 ピロリン!


『解析結果を開示いたしますか?』


『頼む。』


『こちらは魔力を放出するダンジョン核です。破壊はかいするとダンジョンも崩壊ほうかいいたします。お気を付けください。』


 ふむ、心臓みたいなもんか。どおりで果てしないパワーを感じるわけだ。


 どれどれ?


 感心しながら何気なにげなく左の手の平に乗せてみる。


 するとエイミーからまさかのアナウンスが流れた。


 ピロリン!


『称号≪ダンジョンの主≫を獲得いたしました。』


「は?」


 何言ってんだ?ダンジョンのヌシってさっきのボス部屋にいたミノタウロスだろう?


 人間の俺にヌシって呼び方は流石さすがにどうなのよ?化け物みたいじゃねえか。


『どうやらダンジョンが、マスターのことを魔物と誤認したようです。』


「・・え?」


 そんなことある?ありえる?つまり、なんだ?俺は体内に魔石を持っているから魔物だと?


 で、ダンジョンの主だったミノタウロスを倒しちまったから、俺が新たなヌシに認定されてしまったと?


『そのようですね。』


 ブフッ!


「え?じゃあここにずっといないといけないのか?」


 こんなジメジメしたところに1人でいたら気分が滅入っちまうよ!


 世捨人よすてびとのお爺ちゃんならまだしも、まだピチピチの高校生なんだから。


『心配無用です。ダンジョン核を移動すればどこにでもダンジョンを作る事が可能です。』


 マジかよ!それなら良いけど、、、


 え?普通の人間ってこの核を持っても、ただ単に魔力の供給が出来るだけで、こんな事にはならないんだよな?大丈夫か俺?この世界から異物いぶつとして消されたりしないよな?



 ・・・


 ・・・


 ・・・まぁ考えたところで意味の無い問いだな。うんうん。今更自分の個性を否定しても良いことなんて何も無いし。


 それなら喜んでヌシになってやろうじゃないか。


 ピロリン!


『マスターが受け入れた事により、オリジナルスキル〈ダンジョン管理〉を習得いたしました。特殊なスキルのため最適化を行います。宜しいですか?』


「あぁ、頼んだ。」


『少々お待ち下さい。』


 さすが我が有能な〈サポートシステム〉。イレギュラーにも安心安全の対応だね。もう地球の技術力の1000年先はいってるよ。


 ピロリン!


『お待たせいたしました。メニューを開きますか?』


「うん!」



【フロア】 地下10

【魔物】 ON

【宝箱】  ON

【罠】   ON

【建築】  ON

【モニター】OFF

【自動化】 ON

【リセット】OFF


 大まかな項目は大体こんな感じらしい。ステータスウィンドウと同じような立体ホログラムだ。


 細かな設定はタップすればいじくり回すことができる。例えば【フロア】を押すと、1階の環境設定から、大きさ、道順、隠し部屋まで、ありとあらゆる事を決められる。


 もちろん階層を10以上に設定することも可能なようで、今見たところ40ぐらいまではいけるらしい。


 その他にもなんの魔物を出現させるか、リポップ時間はどうするのか?などなど。


 自分好みの設定にカスタマイズしていく事ができる。


 分かりやすく言えば、小さな頃にやっていた秘密基地作りを、大人が金と最先端技術を使って実現したようなもんだな。


 これから毎日がもっと楽しくなりそうだ。


 どこにダンジョンを作るのかも含めてじっくりやっていこうと思う。


 って事でここのダンジョン攻略は一旦終了、【リセット】してから移動しよう。


 ポチッとな。




 次の瞬間、


 俺は深い森の中に突っ立っていた。先程までダンジョンの中にいたのが嘘であったかのように足元には緑と土の地面が広がっている。


 ヌシである俺がリセットしたことによって、あそこは無かったことになったのだろう。


 不思議と少しだけ寂しい気持ちになったが、いつまでもボケっとしているわけにはいかない。


 なにせこの森はグリゴロ大森林。人間の住む東の大陸と魔族の住む西の大陸を唯一つなぐ中継地点にして、日々苛烈な生存競争が起こる弱肉強食の世界なのだから。




【種族】ヒューマン

【名前】黒宮 レイ 

【性別】男

【魔石】小 レベル65(11/65)



スキル〈真・剣術Max〉〈神聖魔法Max〉〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈真・身体強化Max〉〈真・詠唱省略Max〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈付与1〉〈擬態1〉〈威圧1〉〈飛行1〉〈ブレス1〉〈投擲1〉〈粘糸1〉〈超音波1〉〈裁縫1〉



常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉〈不快耐性1〉〈殺気耐性2〉〈疲労耐性1〉〈真・思考加速Max〉〈真・見切りMax〉


エクストラスキル〈飛翔斬〉〈無詠唱〉〈蘇生〉〈瞬歩〉〈並列思考〉


オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉〈竜魂(小)〉〈ラプラスの悪魔〉〈ダンジョン管理〉new!



称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》《剣術を極めし者》《詠唱を極めし者》《ドラゴンとして転生するはずだった者》《聖なる魔法を極めし者》《身体強化を極めし者》《思考加速を極めし者》《叡智と因果律に愛されし者》《ダンジョンの主を倒した者》《ダンジョンの主》new!

 






 私の名前は宇田アイリ。中学生の頃に、今のマネージャーにスカウトされて芸能界に入った。


 母親が東欧系の外国人なので、小学生の頃はみんなと顔立ちが違うのを気にしていたが、モデルの仕事をするようになって、これが武器になるのだと知った。


 それからは、自分で言うのもなんだが、無双状態。身長170cmを超える抜群のプロポーションで、ライバル達に打ち勝ってきた。


 今では若い女性に絶大な人気を誇る雑誌『cat』の専属モデルとして不動の地位を築いている。


 あの日も撮影の仕事を終えて、いつものように帰路についた。



 うん、そこまではハッキリと覚えている。


 だけどそこから先の記憶がボンヤリしている。両親や警察の話によると、事件性の無い交通事故にあったらしいが、、、私のかすかな記憶では、あの時、車に追われていたような気がする。


 警察にもそう言ったが、記憶が混濁しているのでしょうと言われ、まともに取り合ってもらえなかった。


 そして何よりも不思議な現象として、確かに私は車に跳ね飛ばされたのに体には傷1つ無いということ。


 それどころか、持病の皮膚炎、冷え性、外反母趾がいはんぼし、そしてあとになって気付いたが喘息ぜんそくの症状まで全てが治ってしまっていた。


 そこで思い浮かぶのは、ある1人の少年。名前を黒宮レイと言って、最近隣の部屋に引っ越してきた事務所の後輩だ。


 なぜ彼の事が思い浮かぶのか?と言えば、私は私を視て・・・・いたからだ。


 幽体離脱とでも言えばいいのか?どこからともなく現れた彼を私は天井付近から眺めていた。そしてその一部始終を。


 意識が戻った当初はただの夢だと思っていたが、医者や看護師の反応を見る限り、どうやら私が死にかけていたのは間違いないらしい。


 そして、なせか回復してしまった事を天使のイタズラと呼んでいることも偶然聞いてしまった。というか病院中の噂になっているため、嫌でも耳に入ってくる。


 つまりこの奇跡の原因は、、、考えられるとすれば、彼しかいない。


 私には分かる。

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