第24話 魔石食い


ダンジョン第2フロア

 

 ここも第1フロアと大差はなかった。脳内マッピングのおかげで、同じ道をグルグルすることもなく、3時間程でボス部屋まで到達した。


 いて違いをあげるならば敵が少しだけ強くなっただろうか。


 といってもまぁ誤差みたいなもんだ。そもそも〈物理耐性Max〉のおかげで攻撃をくらわないし、リジェネのおかげで体力も魔力も持続的に回復するわけで、ハッキリ言って失敗する要素がない。


「へへ、ここのボスはどんな奴かな?」


 元気100倍のまま石扉に魔力を流し込み、ゆっくりと入場する。


「ガルルルルルルゥゥゥゥゥ!」


 おおぉ。


 犬っころが20匹。俺の姿を確認するや鋭利えいりな牙を見せながら、低いうなり声をあげる。そして示し合わせたかのように取り囲んでくる。どうやらやる気満々のようだ。


『レッドウルフですね。1匹の強さは大したことはありませんが集団で獲物を狩ります。中央の奥に控えている一回り大きな個体が、この群れのボスでしょう。』


 ふむ、20匹 VS 1人か。

 

 客観的に考えれば絶体絶命の大ピンチだが、、、俺にとっては理想的な状況なので、思わず顔がニヤけてしまう。ずっと試したいと思っていた新スキルの内の1つ、それを使う時が来たようだ。


「「ガウガウガウ!!」」

「〈聖炎〉!」


 この魔法は文字通り聖なる炎を生み出す魔法だ。そしてその炎を自在に操ることができる。


 アンデット系の魔物にはもちろん、集団で狩りをするような魔物にも極めて有効なスキルだろう。


 俺を中心に白い炎が扇状おうぎじょうに広がっていく。


 ボフゥ~~~~~、、、、



「はは、普通の炎より攻撃力が高いんじゃないか?やはり高レベルの魔法はどれもすさまじいな。」


 一瞬にして犬っころ19匹を灰と化してしまった。地面に残っているのは骨の残骸ざんがいと魔石だけだ。


 素材が無くなってしまうためお金稼ぎには向いていないが、すぐに魔石をゲットできるのはありがたい。これはこれでアリだ。


「さあどうする?お前以外はいなくなってしまったぞ?」


 萎縮して尻尾が垂れ下がってしまったボス犬に対して挑発をする。



「グルルルルルゥゥゥ〜」


 必死に威嚇をしているがもはや先程までのリーダーの風格はこれっぽっちもない。


 最後は捨て身で飛びかかってきたので正面から切り伏せた。


 ドサ!


 うむ、敵ながらあっぱれな最後であった。



 



 さて、このフロアでゲットした魔石は211個。そろそろ日本に帰らなければならないが、その前に全部食べておきたい。


 第1フロアでゲットしたのは283個だから、合計すると494個。このうち(大)が4個、(中)が36個だから(小)が454個。



 数が多すぎて食べ切れないが・・・ここは気合だ。


「いただきます!」


 アムアムアム!


「・・うぅ、やっぱマズいな。」


 いくら耐性があっても劇物なのは変わりないし・・・ていうか流石に顎が疲れてきた。


 ピロリン!


『〈疲労耐性1〉を習得いたしました。』


 うっぷ。これは全部食べきるまで顎を動かし続けろという天命なのか?


 疲労感まで感じなくなったら人間としてどうなんだって感じだけど?体の信号に鈍感になるってことは早死に繋がるんじゃ・・・・


 漠然とそんな事を考えながら一心不乱に食べ続ける。



 ボリボリボリ、ボリボリボリ。


 

 アムアムアム、アムアムアム。


 


 ピロリン!


『レベルが23上がりました。強化するスキルを23個選んでください。』


 尋常では無い吐き気に襲われながら何を強化するか考える。うーん、とりあえず攻撃手段は十分過ぎるほどあるんだよな。


 うん、となると今回はコレとコレとコレかな。あまったのは〈疲労耐性1〉で。


「よし!エイミー決めたぞ!」


『了解しました。』



 ピロリン!


『〈身体強化〉がレベル上限に達し〈真・身体強化Max〉になりました。これによりエクストラスキル〈瞬歩〉を習得いたしました。加えて、称号≪身体強化を極めし者≫を獲得いたしました。〈身体強化〉使用時の効果が1.2倍になります。』


 ピロリン!


『〈思考加速1〉が〈真・思考加速Max〉になりました。これによりエクストラスキル〈並列思考〉を習得いたしました。加えて、称号≪思考加速を極めし者≫を獲得いたしました。脳の処理速度が2倍になります。』


 ピロリン!


『〈見切り1〉が〈真・見切りMax〉になりました。』


 ピロリン!


『オリジナルスキル〈サポートシステム〉に加えて、〈思考加速〉と〈見切り〉がレベル上限に達したため、オリジナルスキル〈ラプラスの悪魔〉を習得いたしました。これにより称号≪叡智と因果律に愛されし者≫を獲得いたしました。脳の処理速度が5倍になります。』


 


【種族】ヒューマン

【名前】黒宮 レイ 

【性別】男

【魔石】小 レベル65(11/65)



スキル〈真・剣術Max〉〈神聖魔法Max〉〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈真・身体強化Max〉up!〈真・詠唱省略Max〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈付与1〉〈擬態1〉〈威圧1〉〈飛行1〉〈ブレス1〉〈投擲1〉



常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉〈不快耐性1〉〈殺気耐性2〉up!〈疲労耐性1〉new!〈真・思考加速Max〉up!〈真・見切りMax〉up!


エクストラスキル〈飛翔斬〉〈無詠唱〉〈蘇生〉〈瞬歩〉new!〈並列思考〉new!


オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉〈竜魂(小)〉〈ラプラスの悪魔〉new!



称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》《剣術を極めし者》《詠唱を極めし者》《ドラゴンとして転生するはずだった者》《聖なる魔法を極めし者》《身体強化を極めし者》new!《思考加速を極めし者》new!《叡智と因果律に愛されし者》new!



 

 なんかやばいスキルを覚えてしまったかもしれない。〈瞬歩〉も普通に考えたら有能過ぎるんだけど、それ以上に〈ラプラスの悪魔〉がやばい。なぜかオリジナルスキルだし。


 1回落ち着こう。俺が想像しているスキルとは別物かもしれないしな。うん、落ち着こう。


 今回獲得したスキルを順番に見ていこう。


 まずは〈瞬歩〉だ。これは詳しく説明するまでもないけど、一応しておくと、一歩踏み込むだけで今までの5歩分は移動できる。

 

 つまり機動力が格段に上がる。


 ただし転移のように消えて移動するわけではないから、壁とかにはもちろんぶつかるらしい。その点は要注意だな。


 で、次が〈並列思考〉


 イメージとしては右脳と左脳で同時に別の事を考えることができるってかんじ。上手く使えば火魔法と水魔法を同時に発動できてしまうわけだ。慣れればもっと複数でもできるかもしれない。


 そして、最後がお待ちかねの〈ラプラスの悪魔〉


 これは少し難しいけど、ある瞬間の物質の位置と運動量を知ることができて、そのデータを解析できる能力を持った悪魔(・・)がいれば、未来さえも分かってしまうというもの。


 つまり、エイミーの解析能力と、俺の今の脳みそ、それから見切り能力があれば、敵の攻撃が予測出来てしまうというわけだ。


 少しだけ実験してみよう。


 第3フロアに降りて魔物と戦ってみる。


 相手はどこにでもいる安定のゴブリン。


 ヤツが攻撃してくる前に〈ラプラスの悪魔〉を発動する。


 するとなんと言うことでしょう?俺に向かってくる剣先がどこまで伸びて、どこで止まるのか見えてしまう。


 もちろん剣の軌道だけではない、些細な筋肉の動き、顔の向き、重心の位置、ありとあらゆる事を計算し解析する事で、ゴブリンがどこに動くのか分かってしまう。


 あとはもうその予測された場所に拳なり剣なりを置いておくだけで、勝手に敵が負けていく。


 凄まじい能力だ。


 

 派手な攻撃手段が増えるのも良いけど、こういった地味だけど全ての戦闘において土台部分になるスキルの強化も良いもんだ。


 うん!


 今回の強化も大成功!


 よし、それじゃあ日本に帰って学校に行くとしよう。


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