第22話 財閥の御令嬢は有名人
抜き打ちテストが終わり、赤羽達と一緒に校舎を出た時だった。
突如、上空からヘリコプターの振動音が聞こえてきた。その音はだんだんと大きくなる。
というかグラウンド上空でホバリングを始めた。
「なんだあれ?」
「え?・・・着陸するつもり?」
ブンブンブンブン!
普通に生徒が歩いているというのに、ゆっくりと下降してくる。
機体の異常で緊急着陸でも決めたのだろうか?
もの凄い爆風が吹き荒れ、女子生徒はスカートを押さえつけている。
唖然としていると、着陸したヘリコプターから白髪の男性が降りてきた。その脇にはサングラスをかけたスーツ姿の男性もいる。
一体何者だろうか?
「・・・なんかこっちに来てないか?」
「うん、そぉかも。」
嫌な予感は当たるもので、本当に男性2人が目の前までやって来た。
「黒宮レイ様ですかな?」
「・・・そうですけど。」
なぜ俺の名前を知っているのだろうか。
「私は、御堂グループで執事長を努めております藤川と申します。旦那様の指示によりお迎えに上がりました。」
なるほど。確かにあのじーさんは迎えに来てくれると言っていた、、、が、、、それにしてもヘリコプターはないだろう。
下手をしたら俺のせいってことで退学もんだよ。
「車かと思ってたんですけど?」
「旦那さまから最上級のおもてなしをするように厳命されております。学校にも許可は取ってありますので、問題ないでしょう。」
まじかよ、もうなんでもいいけど、とりあえず御堂グループと世間の常識は違うのだろう。考えるだけ無駄だ。
「分かりました。じゃあお願いします。」
「はい。ではこちらへお越しください。ちなみにこちらの御三方は黒宮様のご学友であり、同じ芸能事務所の赤羽仁様、来栖ナナ様、白石雪乃様ですかな?」
「えぇそうですね。」
「もし宜しければご一緒にどうですかな?」
「え、私達もいいんですか!?」
「勿論でございます。黒宮様のご学友ならば謹んでご招待致します。」
「やったぁーー!!ありがとうございます!!私一度あの家に入ってみたかったの!」
「ほほほほほ、これはこれは元気なお嬢さんですな。」
「あ、すいません。」
「いえいえ、ささ、皆様、ヘリコプターに乗り込んでください。」
思いがけずみんなで行くことになった。俺としてもじーさんと2人というシチュエーションを回避できてホッとした。
よかったよかった。
「って、なんじゃこりゃ!!」
ヘリの旅は10分ぐらいで終わったけど、、、俺の目の前には城がそびえ立っている。
昔ながらの日本のお城だ。その屋根には名古屋城に勝るとも劣らない金ピカの龍が2体。
そして城を取り囲むように日本庭園が永遠と広がっている。
都心の一等地だというのに、この建物、この面積。ありえない。
「すっごおぉぉ〜い!一生この敷地の中で生活出来そうだよ!」
「お花が綺麗ですぅ。」
「ほほほほほ、お嬢様方、驚くのはまだ早いですぞ。中に行きましょう。」
「は、はい!」
はしゃぐ俺達をよそに、執事の藤川さんは当然の事のように案内を再開する。おそらく来訪客が驚くのもいつもの事なのだろう。
そして、やっとのことで玄関に着くと、2人の女性に出迎えられた。どちらも20歳ぐらいの美女だ。
「「え?」」
彼女達を見るや、俺以外の3人が一斉に驚きの声を上げる。
どうしたのだろうか?うーん、片方はなんか見た事があるような気もするけど、、、
「黒宮レイ様、お待ちしておりました。」
そう言いながら美女2人が俺に頭を下げる。たったそれだけの動作だが、洗練されており、気品に溢れているのが分かる。
一体何者だろうか?
「あのすいません、なぜお2人がここに??」
ここで赤羽が割って入った。口ぶりからするに既に知り合いのようにも思える。
「フフフフ、みなさんお久しぶりですね。改めて今ここで自己紹介をさせていただきます。私の本名は
「私は
「えーーーー!!2人は姉妹だったんですか!?ていうか御堂家の人間!?」
「はい、今まで隠していてすいませんでした。このことはここだけの話でお願いします。バレると色々と面倒くさいので。」
「そ、それはもちろんそうしますが、、、」
「ふふふ、ありがとうございます。では自己紹介も終わりましたし、そろそろお祖父様の部屋まで行きましょうか。ここからは私達が案内しますので付いてきてください。」
そう言うと2人は優雅に体の向きを変える。そして歩き始める。
所作の一つ一つがいちいち美しい。さすが財閥の御令嬢といったところか。
余談になるが、あとから聞いた話によると、姉の
妹の風花さんは、国営テレビでドラマのヒロインを務め、今や国民的女優と呼ばれつつあるらしい。
しかもどちらも御堂家の人間であることを隠したまま働いており、基本的には自分の実力で人気になったらしい。
俺としてはSNS全盛時代にそんな情報統制ができてしまうことに驚きだが、、、まぁ御堂家にはそれだけの権力があるのだろう。
知らんけど。
「こちらになります。」
案内されたのはお城の最上階。床から天井まで全面に金箔が貼られている。
ハッキリ言って悪趣味としか思えない。こんなことをする奴は金閣寺を建てた
「少年よ、よく来たな。」
昨日ぶりのじーさんが上機嫌でソファに座っている。その前には何台ものモニターが置かれ監視カメラの映像が映し出されている。
どうやら敷地に入った時点で全て見られていたようだ。
「お招きありがとうございます。」
「うむ、よいよい。して、御三方は孫が何回かお世話になったそうでお礼を申し上げる。みなそこのソファに座るといい。」
雪乃達は先程までと打って変わって少し緊張しているようだ。
エレベーターを降りてから動きがぎこちない。
「美月と風花もこちらに座りなさい。」
「はい、お祖父様。」
「さて、先ずは真面目な話からしよう。少年の陸上競技のために御堂財閥からスポンサー料として毎月8億円払おう。まぁつまり1年で96億だな。これに加えて、もしオリンピックで金メダルをとったらボーナスとして1個につき10億だ。」
「「え!?」」
「ただし、これには条件がある。スポンサー契約は10年ごととし、御堂グループ意外と新たな契約を結ばないこと。そして必ず我が社のシューズや帽子を使うこと。基本枠組みはこれでどうじゃ?」
「いや、むしろそんなに貰っていいんですか?」
「当然だろう。少年にはそれだけの価値がある。世界に目を向ければ100億稼ぐプロスポーツ選手など珍しくは無い。」
マジかよ。大金持ちだよ。世界のアスリート番付で3位ぐらいになれちゃうよ。
雪乃達も口開けたまま固まってるじゃん。
「どうする?」
「それでお願いします。」
「おぉ、よしよし。それでは契約成立だな。まずは今月分を払っておこう。」
目の前のテーブルにポンポン札束が並べられていく。100万が10個ずつの束になっているので、1つの
さらにそれが80個。
もう何がなんだか。
超巨大なお金のピラミッドができた。
「あとで足のサイズとか測定させてもらうぞ。」
「えぇ。」
「でだ、この話はこのぐらいにして、本題に移ろう。」
え?契約の話が本題じゃないのか?
「実はな、見ての通り私には2人の孫娘がおってな。これがまた実に器量がいい。チラッ!少年もそうは思わんかね?チラッ!」
・・・
「そうっすね。」
なんだろうか?じーさんのチラ見とか気色悪いのだが。
「おぉ、やはりそう思うか。しかしな2人とも極度の
なんか嫌な予感がするのだが、、、
「そこでどうだろう?若者同士、外に出かけてみては?ちょうど別荘もそこらじゅうにあるしな。ジロリ。」
・・・お、お金貰ったあとだと断れねぇー、、、
「はは・・・ははは、もちろん俺は行きたいですけど・・・はは・・・お孫さん達は俺となんて行きたくないでしょう・・・出不精なんですから、ははは。だから残念ですが・・・」
ジロリ
ギク!
「まぁ俺は行きたいんですけどねー。」
心を無にして棒読みで
「それなら決まりだな。行ってきなさい。なに、最初はここにいる皆で行くといい。そのあとどちらかと恋仲にでもなればゴニョゴニョなんならそのまま婚約してゴニョゴニョ、うっほん!オホン!オホン!」
ジジイが何を言ってるのかちょっとよく分からない。不穏なワードが聞こえたような気もするけど気のせいだよな?
うん。
それからあとはまぁ、連絡先の交換をしたり、体の隅々まで計測されたり。
ついでに会長ご自慢の地下施設も見学させてもらったが、ここがまた凄かった。
何百人もの研究者が常駐し、日々革新的な物を生み出しているらしい。
なかでも最近特に力を入れているのが機能性スーツの開発で研究費用は10兆レベルだとか。
詳しい事は、企業秘密のため教えてもらえなかったが、まぁ分かりやすく言えば、ガチガチのロボットを装着するのではなく、
実用化されれば、介護現場や肉体労働者に革命が起こるかもしれない。
日本経済の命運を握る華麗なる一族。
敵に回すのはやめた方がいいだろう。
これからも良きパートナーでありたいものだ。
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