第6話 換金しよう
「おふぅ〜・・・着いたか。」
日本の自分の部屋だ。時刻は午後3時。まだまだ外は明るい。テレビを付けて日時を確認してみるが、出発前と日付は変わっていない。向こうにおよそ8時間滞在して、帰ってきたら日本時間で8時間経っている。つまり異世界と日本、時間の進み具合はほぼ同じということだ。
浦島太郎状態にならなくて本当に良かった。入学したばかりなのに同級生はもう卒業しましたとか言われたら笑えないからな。
ハハ。
そんな事を考えながら適当な私服に着替え、持ち物をチェックする。手元にあるのは兵士2人から回収した装備一式と小袋が1つ。
剣×2
兵士の防具一式×2
懐中時計?×1
金貨×3
銀貨×20
銅貨×5
魔石(小)×2
魔石(中)×1
ざっと床一面に並べてみたのはいいものの、場所をとってしまうので正直邪魔くさい。おまけに汗のニオイが防具に染みついているので、部屋全体が臭くなってしまった。
うーん、どうやって保管するべきか。倉庫みたいなのがあればいいんだが。
質屋か古物商に持っていくにしてもかなりかさばるんだよなあ〜。
ピロリン!
『〈付与1〉を習得いたしました。無機物に対して〈通常スキル〉の効果を付与する事が可能になりました。』
ピロリン!
『レベル1の空間魔法<スペース>の効果を<付与>することでアイテムバッグの製作が可能になりました。』
なに??アイテムバッグだと!?つまり普通のカバンを収納鞄にできてしまうということか?夢の道具じゃないか。
うおおぉぉぉ!絶対に作るぞ!こうしちゃいられない。確か使ってない
どこだ?
ガサガサガサ……
まるで泥棒のように手あたり次第引き出しを開けていく。あとで元に戻すのが面倒くさいとか、そんな事はどうでもいい。とにかくアイテムバッグを作るために、いち早く巾着袋を見つけるのだ。それが俺の使命だ。
ガサガサガサ……
お?あった!あったぞ。
準備するのはこれだけでいいんだよな?これで俺は地球上に存在しないはずのお宝をGETできるんだよな?
「うし!じゃあ行くぜ!!〈付与1〉発動!この巾着袋にスペースの効果を付与してくれ!!!」
その瞬間、目の前の大気がまるで蜃気楼のようにウネウネっと揺れたように見えた。そしてそのウネウネは袋に吸い込まれるように
時間にしてたったの数秒。
興奮が抑えきれない。
試しに兵士から回収した剣を入れてみる。出し入れする際は魔力を込めればいいようだ。触れる物全てを吸い込んでしまうわけではない。
「はは、すげぇ!!どうなってんだよ!?」
完全に物理的な法則を無視している。この小さな袋から、それよりも遥かに大きい物が出たり入ったり。
何回やっても目の前の現象が信じられない。
まだレベルが低いので4畳半ぐらいのスペースしかないし、時間停止のような機能も無いが、それでも常識の範疇を超えた便利アイテムだ。これなら異世界冒険も
なにより毎日手ぶらで学校に行けるのが地味に嬉しい。
へへへ。
「エイミーサンキュー!」
♢
「ここら辺にありそうだけど・・・・」
やって来たのは豊川学園前駅の商店街。学校から徒歩でおよそ15分ほどの場所だ。
「うん?あれ質屋か??」
適当に周辺を散策していると質屋という看板を掲げた店があった。しかし、外観はどう見ても喫茶店のようにしか見えない。
「なんだあの店。営業してるのか?」
窓から覗いた感じ、客は誰もいない。いや、俺としては誰もいない方がいいのだが、ちゃんとしたお店なのかいささか疑問だ。
「ん~まぁいっか。」
半信半疑のまま、収納カバンからこっそりと鎧を取り出す。それから今回売り払うつもりの金貨2枚、銀貨5枚、懐中時計1つをポケットの中に仕舞い込む。これで不審に思われることは無いだろう。
「こんばんは。」
「いらっしゃい。」
カウンターに座っていたのは、まるぶちメガネをかけた白髪の男性。新聞を読みながら優雅にお茶を飲んでいる。レトロな曲も流れていて室内の雰囲気は悪くない。
「ここって質屋であってますか?」
「えぇ。昼間は喫茶店をやっていますがね。一応これでも40年この道で生きてますよ。」
ふむ。それならばまぁこの店でいいか。
先ずはこの鎧からいこう。ドシンとカウンターの上に載せる。すると先程まで穏やかだった爺さんの目がくわっと見開かれた。いつの間にかルーペのようなものも取り出して食い入るように観察している。
「君一体これはどうしたのかな!?」
「いやー今朝実家の蔵から発見されましてね。おいくらぐらいになりますかね?」
「150万。」
「は?」
「150万の値をつけよう。もし質じゃなくて買取をさせてくれるならば即金で160万出そう。」
えーマジかよ。この鎧、向こうの世界じゃ安モンだと思うんだが。おそらく兵士達の標準装備だろう?それが地球じゃあ150万だって??一体どうなってるんだよ。
ていうか収納カバンの中にもう1個、同じ物があるんですけど。
「じゃあ買い取りでいいっす。」
「うむ、商談成立じゃな。ほれ160万だ。持っていきなさい。」
目の前に札束がポンっと置かれる。ビジネスとはいえこれだけの金額を即断即決で支払うとは見かけによらず
「サンキュー、あと今日持ってきたのは小物類なんだけどな、これなんて綺麗だろう?」
「これは!?・・・金貨か?それに銀のコイン。こっちのは用途不明だが懐中時計か?なかなか細かなデザインですな。」
「どうかな?」
「ふーむ。どれも見たことが無い珍しい物だ・・・この金貨は1枚20万。2枚で40万。銀貨の方は、1枚3万×5枚で15万。懐中時計?は、うーむ、量産品ではないハンドメイド、、、それなら30万、合計85万だな、全て買い取りなら90万出そう。」
おおおお!こちらもなかなかのお値段だ。
「全て買い取りで。」
そう言うとまたしてもすぐに札束がポンっと置かれる。鎧の代金と合わせて計250万。
この調子ならば貿易商としても成功できるかもしれない。
「近いうちにまた来るよ。」
そう言い残し、喫茶店、いや質屋をあとにした。
♢
あとはやっぱりお待ちかねの魔石ですよね。えーと大きさは(小)が2個と(中)が1個だな。んでこれが今の俺のステータス。
【種族】ヒューマン
【名前】黒宮 レイ
【性別】男
【魔石】小 レベル2(0/2)
スキル〈剣術1〉〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈回復魔法1〉〈光魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈身体強化2〉〈詠唱省略1〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈付与1〉new!
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉
オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉
称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》
先ずは魔石(小)2個を一気に食べる。今回は心構えができていたので1回目よりは遥かに楽だった。まぁクソまずい上に当然のように〈毒耐性Max〉〈麻痺耐性Max〉が発動しているわけだが。
ピロリン!
『魔石のレベルが1上がりました。強化するスキルを1つ選んで下さい。』
「おぅ、それじゃあもっかい身体強化を上げとこう。」
これで魔石のレベルは3に。
【魔石】小 レベル3(0/3)
表記はこうなった。
まぁここまではいい。想定内だ。
問題は魔石(中)でどうなるかだ。大きさは卓球ボールぐらい。
「こりゃ辛そうだな。」
ええぇい!
アムアムアム。
ピロリン!
『魔石のレベルが2上がりました。強化するスキルを2つ選んで下さい。』
おおお、一気に2つ上がったぞ。魔石の大きさによって、取得できる経験値みたいなもんが変わるみたいだな。
【魔石】小 レベル5(3/5)
ここから推測するに、魔石(小)1個を食べるとカッコ内の分子が1上がる、(中)1個だと分子が10上がるっぽい。そんでもって分母はレベルと同じ数字だな。
まぁこの辺は今後もゆっくり検証していけばいいだろう。
さて、今度は何を強化しようか。攻撃手段を増やしたいわけだが、、、魔法は詠唱の問題があるためポンポン使おうと思ったら〈詠唱省略1〉を上げる必要が出てくる。
であるならば、ある程度魔石を貯めれるようになった時に一気に上げた方が良いだろう。
「今回は2つとも剣術だ!」
【種族】ヒューマン
【名前】黒宮 レイ
【性別】男
【魔石】小 レベル5(3/5)
スキル〈剣術3〉up!〈拳術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈雷魔法1〉〈回復魔法1〉〈光魔法1〉〈闇魔法1〉〈隷属魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈身体強化3〉up!〈詠唱省略1〉〈魔力操作1〉〈解体1〉〈解錠1〉〈チギュウ共通語〉〈付与1〉
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉
オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉〈チギュウ共通語〉
称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》
おーし!強化完了!今日はもう寝るぞ!明日は学校で身体測定とスポーツテストだ!!
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