第4話 異世界へ
「、、、水筒、、、おにぎり、、、サバイバルナイフ、、、着替え、、、救急セット………」
異世界を冒険するにあたって何が必要なのかはよく分からないが、取りあえずこれだけ持っていけば遭難してもすぐに死ぬことは無いだろう。
「よし、〈サポートシステム〉??」
『はい。』
「異世界に行ってみようと思うのだが、その前に君の名前を決めようと思う。何か希望はあるか?」
『マスターが決めて下さるのならば、どのような名前でもお受けいたします。』
そうか、、、それなら何がいいだろうか?ナビ、サポート、ん〜、、、AIからとってアイか、エーアイ、エイアイ……うんうんうん、よし決まった。
「今日から君はエイミーだ。宜しく頼む。」
『ありがとうございます。』
心なしか無機質な電子音が
よく分からないが、喜んでくれたなら俺も嬉しい。鼻くそがズルっと取れた時ぐらい嬉しい。いや、もしかしたら競馬の予想が的中した時ぐらい嬉しい。
・・・知らんけど。
ゲフン、ゲフン、ゲフン
「さあ準備は整った!惑星「チギュウ」へいざゆかん!!オリジナルスキル〈異世界転移〉発動!!」
その瞬間、俺の体が大きな力にグイッと引っ張られた。
「うげっなんだこりゃ!!」
しかもだんだんと空気が薄くなり、
〈真空耐性Max〉を所持していなければ確実に死んでいただろう。イヤ、その前に各種耐性がなければイチコロで死んでいただろう。
あぁ、なんて刺激的な経験なんだ。
クマムシパワー……どうも……ありが………とう。
「は!」
気が付くと、いつの間にか俺は平原に立っていた。
流石に毛穴という毛穴から汗が吹き出して、気分は
「ふぅ~ふぅ~ふぅ………」
正直初っ端からこんなにしんどい思いをするとは思わなかった。これが異世界へ行くということか。リスクという意味ではかなり大きい。
でも取りあえず成功したことには違いない。俺は人類史上初めて異界の地に降り立ったのだ。しかもロケット無しでだ。
強烈な吐き気が引っ込み、ジワジワと嬉しさが込み上げてくる。土の匂い、空気の匂い、草の匂い、全てが新鮮だ。
ハハハ。
そよ風が心地良い。指先や体の感覚も徐々に戻ってきた。もう大丈夫だ。軽いストレッチをしてから気合を入れ直す。
「しゃ、行くか!」
あてもなく取り敢えず平原を歩くことにした。日本を出発したのはだいたい朝の7時だが、こちらは今にも日が沈もうとしている。暗くなってきているので視界はそんなに良くはないが、地球のような人工物はまったくと言っていいほど見当たらない。果たして人間は存在するのだろうか?草が禿げて土の道ができているような気もするが、、、
『マスター!警戒して下さい。』
「ん?お、おぅ。」
考えることを一旦中断し、注意深くあたりを見回す。すると小動物を発見した。
「・・・ウサギか!?」
いや、にしては頭に角が生えている。
『ホーンラビットです。見た目に反して凶暴な魔物です。』
「キシャアァァァァ!」
「うおっ!」
魔物かよ!
慌てて自分に〈身体強化1〉をかける。まだスキルのレベルが低くて、身のこなしに劇的な変化があるわけでは無いが、今までで1番絶好調だった時を100とするならば130にはなる。
これでなんとか、戦えればいいのだが、、、そんなことを考えながら一応護身用に持ってきたサバイバルナイフを構える。
すると頭の中にエイミーの電子音が響いた。
ピロリン!
『〈剣術1〉を習得いたしました。』
「え?」
なんか習得しちゃったんですけど。これはナイフを使えっていう
そうだな、そうなんだな。じゃあ有り難く使わせてもらおう。
・・・
・・・
・・・
やっぱりナイフはやめておこう。
け、決してチキッたわけではないぞ。手に感触があるから嫌だなーとか、近付いて噛みつかれるのが嫌だなーとか、お、思ったわけではないぞ。ただ遠距離攻撃をした方が、こ、効率がいいと的確な判断を下しただけだ。
そう、的確な判断を。
「・・・〈ファイアーボール〉!!」
ジュー
バレーボール程の火の玉が見事に命中しホーンラビットはパタリと倒れた。全体的に焦げていて、近づくと香ばしい匂いがする。
少し可哀想な気もするが、これが魔物との初めての戦闘だったわけで、、、無事に勝利できた事を感謝したい。ここから俺の冒険が始まるのだ。
ピロリン!
『マスター?魔石を回収してください。』
え?
「・・・どうやって?」
なんだか嫌な予感がするのだが?股の辺りがゾワゾワするのだが??
『・・・ナイフで。』
グハ!
「・・・。」
つまり、ウサギちゃんの死体を切り
せっかく的確な
う〜む、先程よりも心臓がバクバクする。バクバクしすぎて、もはや漫画のように口から飛び出してきそうだ。
、、、でも、やるしかない。
覚悟を決めてナイフをギュッと握る。そしてゆっくりと刃先を入れる。
ピロリン!
「うわっなんだよ!びっくりさせるなよ!!」
『常時発動スキル〈血液耐性1〉を習得いたしました。』
「むむむ?血液??」
・・・そう言われてみれば、先程よりも急激に忌避感が薄まったかもしれない。
ピロリン!
「今度はなんだ!?」
『スキル〈解体1〉を習得いたしました。』
おぉ?スキルのバーゲンセールでもしているのか?
・・・よく分からないが早速使ってみよう。解剖学の知識など皆無なので、魔石だけ取り出せればOKだと思っていたが、キレイに解体できるならそれにこしたことはない。
無言で作業に没頭する。
それからだいたい5分くらいだろうか。ホーンラビットが綺麗に切り分けられた。
俺は最初の試練を乗り越えたのだ。静かにその喜びをかみしめる。達成感で胸がいっぱいだ。
「いや~それにしてもスキルって結構簡単に取得できるんだな?」
もっと何ヶ月も鍛錬しないと覚えられないのかと思っていたが、、、
『確認中・・・確認中・・・』
ピロリン!
『神様の想定を大幅に超えております。転生魔法が正常に作動しなかったせいでしょう。』
なに!?マジかよ、俺ってオカシイのかよ。
で、でもまぁプラス方向にバグっているのならセーフだよな?人間を辞めたわけでもないしな。え?俺って人間だよな?ハハハ、そんなの聞くまでもなかったか?
『・・・』
、、、あれ?なんで無言なの?
ピロリン!
『情報を開示しますか?』
うおおおおぉぉぉぉい!なんだその恐ろしい
体の中に魔石はあるけどな。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・
・・・あれ?おかしいな?目から涙が?
って、もはやそんな事どうでもいいんだ。今はそんな事よりも、ホーンラビットから回収した魔石をどうするのか?だ。昨日軽く聞いた話では、食べればスキルを強化できると言っていたが、、、見た目はあまり美味しそうには見えない、、、大丈夫だろうか?
恐る恐る口に入れ、ガリっと噛んでみる。何かが染み出てくるわけではないが苦味と酸味?が押し寄せてくる。
「おぇっ!マッズゥゥ!なんだこれ!?」
絶対に口にしてはいけない食べ物だ。というか不味いだけならまだしも〈麻痺耐性〉と〈毒耐性〉が発動している。俺じゃなかったら1週間ぐらい寝込むんじゃないだろうか?吐き出したい欲求を必死に抑えゴクリと飲み込む。
ピロリン!
『魔石のレベルが1上がりました。強化するスキルを1つ選んでください。』
お、おぉ。
あれほどマズイもんを食べたご褒美ってわけか。それならばやっぱり最初に強化するのは基礎能力にしよう。ステータス画面を眺めながら決断する。
「〈身体強化1〉を強化する!」
【種族】ヒューマン
【名前】黒宮 レイ
【性別】男
【魔石】小 レベル2(0/2)up!
スキル〈剣術1〉new!〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈回復魔法1〉〈光魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈身体強化2〉up!〈詠唱省略1〉〈魔力操作1〉〈解体1〉new!
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉〈血液耐性1〉new!
オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉
称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》
ほほう、確かにステータスがアップデートされている。目に見える形で成長が実感できるのは高揚感があってたまらない。
「よし!」
こうして初めての戦闘を終えた俺は再び歩き出したのだった。
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