第3話 初めての魔法
入学式終了後、クラスごとに分かれて今後の学校生活についてオリエンテーションが行われることになった。
「はい、ちゅーもーく!俺はこのクラスの担任の
「え?」
髭面の先生がまさかの発言をするので、思わず声が漏れてしまった。クラスの視線が俺に
「お?なんだ?えーと、、、黒宮レイか。陸上の特待生だな。そんな驚いた顔をしてどうしたんだ?」
「いえ、、、、芸能コースと合併だと、たった今知りました。」
すると俺の言葉を聞いてクラスがざわめいた。今をトキメク、
正直言って全く分からない。
なぜ哀れんだ目で見られているのだろうか?いや、それどころか、斜め前に座っている小太りの眼鏡をかけた少年は敵意すら向けてくる。
目が合うと、みるみるうちに顔が赤くなりバンっと立ち上がった。
「ふぬぬぬぬ。そこの君!ちょっと背が高くて彫りの深いイケメンだからって、今の発言は聞き捨てならないでござる。日本の宝である雪乃たんとナナみんを知らないなんて切腹に等しいでござる!!2人がこの学校に入るという情報を手に入れてから僕ちゃんがどれだけ努力したと思っているんだ!プンプン!!」
・・・知らねーよ。
「あぁ、分かったぞ。わざと知らないと言って2人の気を引きたいんだな!!卑怯でござる。卑怯でござる。男なら正々堂々と勝負するべきでござる!」
なんだこのオタク君は・・・ついていけねー。
「ファンというよりストーカーじゃねーか。」
「なんですと!?ふぬぬぬぬぬ!僕ちゃんの尊厳を踏みにじったな!この男、許すまじ!こうなったら討ち入りでござる、討ち入りでござる。」
おかしな言動に彼のオタク仲間?以外ポカンとなっている。関わってしまった俺も大やけどだ。今日が初日だというのに。
「おーいお前らその辺にしておけ。今日からクラスメイトなんだぞ。仲良く、楽しく、これをモットーに生活するように。いいか?」
担任の綾部も顔を引きつらせていたが、一応教師らしくその場を収めた。
「・・・」
「よし、じゃあ落ち着いたところで出席番号順に自己紹介だ。」
こうしてまず普通科の生徒18名、次いで芸能科の生徒12名がそれぞれ自己紹介をした。
1番驚いたのは、今朝校門でぶつかった甘ったるい女子生徒が、アイドルグループ『ミルクレープ』の白石雪乃ということだった。
芸能人とか正直どうでもいいが、先程のオタク君とその愉快な仲間たちが、彼女が喋り始めた途端、鞄からペンライトを取り出し絶叫し始めたので、まあ有名なのだろう。
ちなみに
他にも歌舞伎家の息子や何かの作品に出ている人がチラホラいるらしかったが、全員の名前を一度に覚えられるわけもなく、今日は下校となった。
時間はまだ昼前の午前11時。
いろいろと確認することのある俺は、芸能人たちを一目見ようと集まった野次馬共を押し分けて一目散に家に帰った。
♢
「ステータスオープン。」
ふむ。気になるところから順番に実験していこう。まずはやはりスキルとやらが本当に使えるのかどうかだ。中でも魔法が1番興味深い。とりあえず火は危険だから、、、
「サポートシステム、水魔法はどうやって使うんだ?」
『マスターは〈詠唱省略1〉を、お持ちなので〈水魔法1〉ならば「ウォーターボール」と名前を唱えるだけで使用可能です。』
ほほう。早速やってみよう。
「ウォーターボール!」
溢れんばかりの興奮を押さえつけ、そう口にする。
すると体の中から何かが抜けていく感覚がした。
次の瞬間、手の平からバレーボール程の丸い玉が出現した。それは、まるで宇宙空間に浮いているかのように空中でプルプルしている。
「はは。」
思わず笑みが溢れる。俺が魔法を使っている。この受け入れ難い事実を徐々に理解する。
「・・・すっげー、、、あ」
ベチャッ!
油断したところで水の塊がバランスを崩し床に落下した。まるで水風船が割れた時のようだ。
だが何回か練習してコツを掴めばすぐに慣れるだろう。もしかしたら水道代を払う必要が無くなるかもしれない。
いや、そんなレベルの話ではない。これはとんでもない歴史的発見だろう。俺はもしかしたら人類の可能性を発展させてしまったのかもしれない。
あぁ、罪な男だ。
「これってもしかして他の人間も気が付かないだけで魔法を使えるのか?」
『確認中・・・確認中・・・・』
ピロリン!
『確認の結果、現在の環境で地球上の生物が魔法を行使することは不可能です。理由を開示致しますか?』
「うん。」
ピロリン!
『地球では、地表における魔素濃度が極端に低いため魔石を持たない生物がスキル及び魔法を行使することは出来ません。』
ふーん、なるほどな。神様の転生魔法がバグったおかげで、俺だけ地球で魔法が使えるってわけだな。
知らんけど。
あとバグと言えばなぜか獲得してしまったオリジナルスキル〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉だよな。俺が本来行くはずだった惑星。
これは実験するのが怖すぎるわけだが、、、さてどうしたものか。
「俺って異世界行けるのかな?」
『可能です。むしろ魔石の進化、並びにスキルの強化のために転移することをオススメします。』
「戻ってこれるよね?」
『確認中・・・・確認中・・・・』
ピロリン!
『地球より魔素が溢れている世界だと推測されます。よって99%可能です。』
「そ、そうなのか。」
うーむ、外堀を埋められてしまった気分だ。これだと行かない理由がない。
と、とりあえず、明日は日曜日だから学校は休みだ。転移の実験をするにしても明日にしよう。
に、逃げ出したわけじゃないぞ!いろいろと準備があるんだ!
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