第2話 入学式と出会い
「うわっ!!」
大爆発に巻き込まれガバッと跳ね起きる。寝間着のジャージが冷や汗で濡れている。
「・・・なんだ夢かよ。」
安堵するとともに再びベッドに横になる。だが横目で時計を確認すると午前7時になろうとしていた。
「はぁーそろそろ起きないと入学式に間に合わないか。」
そう、今日から俺の新たな生活が始まるのだ。中学まで施設のあった岐阜県に住んでいたが、陸上の強豪校である豊川学園高校に通うために、無理を言って上京させてもらったのだ。
、、、だから初日から寝坊するわけにはいかない。ちゃんとした学校生活を送って、陸上で優秀な成績を収める、それが俺にできる恩返しだ。
そんなことを考えながら朝のルーティーンをこなす。だが何をしていてもあの夢のせいでいまいち集中できない。
「……星が消滅するほどの大爆発……」
ただの夢と切り捨てるにはあまりにもリアルだった。ニオイや色、何よりも神と名乗っていた、あの不思議な少年の最後の表情。
もしかして・・・前世の記憶だろうか?
「ステータスオープン!なんつって。」
・・・
「え?」
【種族】ヒューマン
【名前】黒宮 レイ
【性別】男
【魔石】小
スキル〈格闘術1〉〈火魔法1〉〈水魔法1〉〈風魔法1〉〈土魔法1〉〈回復魔法1〉〈光魔法1〉〈闇魔法1〉〈空間魔法1〉〈重力魔法1〉〈気配察知1〉〈気配遮断1〉〈夜目1〉〈遠視1〉〈身体強化1〉〈詠唱省略1〉〈魔力操作1〉
常時発動スキル〈麻痺耐性Max〉〈毒耐性Max〉〈睡眠耐性Max〉〈熱耐性Max〉〈火耐性Max〉〈氷耐性Max〉〈水耐性Max〉〈雷耐性Max〉〈絶食耐性Max〉〈絶水耐性〉〈絶塩耐性〉〈真空耐性Max〉〈物理耐性Max〉〈圧縮耐性Max〉〈臭気耐性Max〉〈仮死耐性Max〉〈石化耐性〉
オリジナルスキル〈サポートシステム〉〈異世界転移(地球)(チギュウ)〉
称号 《生き残りし者》《唯一無二の存在》
「なんだこれ!?」
おいおいおいおいぃぃ!!どうなってんだよこれ!!
目の前に半透明のホログラム?が現れた!!
顔を左右にどれだけ動かしても、視界の中央にミラクルフィットしてくる。
どうやって消すんだよこれ!?
「消えろ!」
すると俺の言葉に反応し一瞬でホログラムが消えた。あまりの衝撃に言葉を失う。部屋が静寂に包まれ、時計の針の音だけが響き渡る。今のは何かの見間違いだろうか。
試しにもう1回ステータスオープンと呟(つぶや)く。そしてすぐに消えろと命令する。
「・・・。」
結果は、先ほどと同じ。どうやら見間違いでは無かったようだ。
ちょっと待て!意味が分からない。俺の体に一体何が起こってるんだ!?
誰か教えてくれ!
ピロリン!
『サポートシステム起動中、、、サポートシステム起動中、、、インストール完了、案内を開始いたします。』
急に頭の中に声が響いた。
「うわっ!?今度はなんだよ!?」
『ワタシはサポートシステムです。転生後のマスターがより快適な生活を送れるように、神により作られたオリジナルスキルでございます。』
・・・
ダメだ、幻聴が聞こえたようだ。転生がなんたらかんたら言っている。
あぁ頭が痛くなってきた。もしかしたら相当疲れているのかもしれない。
1度冷静に考えよう。
「お、おい?」
『なんでしょうか?』
うん、本当に声が聞こえる。幻聴ではない。
こいつが発した転生って言葉は、夢の中で聞いたワードだ。しかしあの神様は、ドラゴンに転生させると言っていたはずだ。しかも異世界の名前は地球ではなくて『チギュウ』だと。
確かに『チキュウ』と『チギュウ』、名前の響きは似ているが、、、
「、、、サ、サポートシステムとやら?聞きたいことがたくさんあるんだが?」
『なんでしょうか?』
「俺は転生したのか?」
『はい。惑星ガービリオンが滅ぶ際に、神により転生しました。』
・・・てことは
「いや、でも俺ドラゴンじゃなくて人間だけど?」
『確認中・・・確認中・・・マスターの体をスキャンいたします。』
青白い光が頭から指先までゆっくりと移動する。レントゲンのようなものだろうか?
ピロリン!
『・・・・お待たせいたしました。スキャンの結果をお伝えいたします。』
「うん。」
『転生魔法の途中で、惑星ガービリオンが爆発、消滅したため大きな手違いが3つ程発生した模様です。詳細を開示致しますか?』
「お、おう。」
『1点目、この世界は予定しておりました惑星チギュウではなく地球という星です。魔物は存在いたしません。2点目、マスターの種族はドラゴンではなく人間でございます。ただし、魔物と同じように体内に魔石を保有しています。3点目、なぜかオリジナルスキル異世界転移を取得しております。』
無機質な電子音がさも当たり前かのように淡々と事実を告げる。
・・・前世がクマムシ。しかも人間なのに体内に魔石があるらしい、、、それって人としてどうなのだろうか??
考えれば考えるだけ意味が分からない。時間だけがあっという間に過ぎていく。
ってやべっ!もうこんな時間じゃねーか!!
「遅刻だ!」
一旦考えることを放棄して、慌てて駆け出した。
♢
私立豊川学園高校は創立120年の伝統ある学校だ。特に部活動が活発で、運動部だけでなく文化系も全国大会常連らしい。それに加えて、この学校の人気を押し上げているもう1つの理由が、芸能コースだ。豊川学園出身の有名芸能人は数え切れない程いる。というか在学中に既にキャーキャー言われている人もいるらしい。
まぁ今まで陸上に打ち込み、テレビはニュース番組しか観ない生活をしてきた俺にはそんな事はどうでもいい情報だ。これから先も興味が湧くことはないだろう。
「はぁ、はぁ、なんとか間に合ったか。」
校門が閉まる前にギリギリ滑り込めた。
いくら普段から走り込んでいると言っても全力ダッシュは疲れるのだ。
しばらくの間、膝に手をついて呼吸を整える。
すると、背中に何かがドンっとぶつかってきた。
「イテっ!」
「キャッ!」
慌てて後ろを振り向くと女子生徒が尻もちをついていた。銀髪のロングヘアで、前髪は頭の上でピン止めしており、オデコを出している。全体的に色が白く、体の線が細い華奢な少女だ。
視線と視線がぶつかるとクリクリした彼女のお目々が動揺し左右に揺れる。
「ごぉ、ごめんなさぁい。前あんまり見てなくてぇ・・・」
声が小さくて聞き取りにくいが、甘ったるい喋り方をするのでずっと聞いていたら眠くなりそうだ。
「いや、こっちこそ突っ立ってて悪かった。立てるか?」
へたりこんだままの少女に右手を伸ばしグイッと引っ張る。
「あ、ありがとぉうござぁいますぅ///」
それだけ言うと彼女はダッシュで走り去った・・・かのように思われたが、何もない所で1人でコケていた。
キーンコーンカーンコーン
そして俺は入学式に遅刻した。
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