獄中での手記

 これはある殺人者の男が獄中で変死死体になる前に、獄中で書いたであろう手記である――。






 妻とは十五歳の時から付き合い始めて、もう二十年以上の付き合いだ。そんな妻と結婚したのは去年の事。社会人になってからすぐに結婚をしたかったけど、思った以上に忙しいのもあり中々結婚のタイミングが掴めなかった。そんな俺に何も文句を言わず支えてくれた妻には本当に感謝している。


 しかし、結婚してからの彼女の様子が何かおかしい。いつもどこか怯えたような表情をしているし、夜中には時折、悲鳴のような声が聞こえてくる。最初は単なる夢遊病かと思っていたが、彼女の体には明らかな傷跡があった。


 ある晩、俺は彼女の様子が気になって寝不足になっていた。その時、彼女が眠っている姿を見た。彼女の目は開いたまま、何かを見ているかのようだった。そして、突然、彼女は悲鳴を上げながら起き上がった。


「あなたは誰!?」


 彼女は俺を見つめながら叫んだんだ。俺は何が起きたのか分からず、怯えながら彼女を見つめた。すると、彼女はそのまま倒れ込んでしまった。


 俺は彼女が心配になり病院に連れて行ったが、医師からは何も異常が見つからないといわれてしまう。だが、その後も彼女は同じような症状を繰り返し、病院に行く度に医師たちは手をこまねいていた。


 そんなある日の事。彼女が起き上がり、俺にこう言った。


「私はあなたの妻ではありません」


 俺はその言葉に驚愕した。そして、彼女の目は再び開き、その瞳には憎しみの光が宿っていた。


 そして、彼女は俺に飛びかかり、その手で俺の首を絞め始めた。


 俺は必死で彼女の手から逃れようとしたが、その力は異常なまでに強かった。そして、彼女は笑いながら言った。


「ずっと一緒――」


 彼女の手はますます強く、俺は息ができなくなり、意識を失った。




 数日後、俺は病院で目を覚ました。そこには、警察官たちがいて、彼らが俺を尋問し始めた。


「あなたが妻を殺したのですか?」


 彼らの問いかけに、俺は驚愕した。俺は妻を殺した覚えはないし、彼女はまだ生きているはずだと思っていた。しかし、警察官たちは俺に妻の死体を見せた。彼女の首には明らかに絞め殺された跡があった。


 俺は狂ったように泣き叫び、妻の死体を抱きしめた。その後の警察の調査により、妻の首の手形と俺の手形が一致した事により、俺は逮捕されてしまう。


 独房の中で、俺は再び彼女の姿を目撃した。彼女は独房の鏡の中にいて、俺をにらみつけていた。


「あなたは私を殺したのよ。私を、私たちを殺したのよ」



 以来、俺は彼女の幽霊に悩まされ続けている。彼女はいつも、俺を見つめているようで、時折、その怨念が強くなり、俺を襲ってくる。俺は今でも、彼女の呪いから逃れられないまま、独房で怯えながら生き続けている。



 誰か助けて――。



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