野菜
キツネやタヌキが出るほど
男は縁側に座りながら、美しい景色を眺めていた。
定年退職で実家に帰ってきてから、はや五年――独身で気ままな都会暮らしをしていた彼は、最後は生まれ育った村で過ごそうと実家に帰ってきたのである。
帰ってきたはいいが、両親は既に他界しており田舎なので特にやる事はない。そんな暇を持て余していた彼に、村に住み続けていた古い友人に猟友会に誘われたのであった。その猟友会では主に、役場の依頼で害獣駆除などをしている支部らしく、ハクビシンやアライグマなどの、野菜などを食い荒らす害獣を駆除しているようであった。
そんな事もあり、狩猟免許を取得した彼は役場からの依頼で、害獣などを駆除をして生計を立てていた。
この村は人口数百人の小さな村だけに、大抵の人たちは知り合い、あるいは知り合いの知り合いなのだ。そんな事もあり、野菜などをお裾分けしてもらう事は日常茶飯事なのだ。
その日もそうだった。役場からの害獣駆除の依頼を終え、自宅に帰ってくると、玄関にはニラが置いてある。
――隣のばあさんでも置いて行ったのだな。
男性はいつもの事だと思い、後でお礼に鹿の肉でも持って行こうと思い、その日はニラを使った料理を食べる事にした。
居間でニラ料理を食べ終わり、くつろいでいると急に吐き気と頭痛が彼を襲った。意識が朦朧になりながらも、居間から這うようにして玄関脇に設置してある電話の元に向かう。
受話器を取ろうと手を伸ばした彼の目には、玄関にニラを加えたアライグマの姿が目に映る。
意識が薄れゆく中、彼は思った。
「ああ…ニラではなくスイセンだったのか――」
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