来世ポイント

「――番号札十三番の方」


 そんな言葉が男の耳に聞こえてきた。辺りを見回すと役所のような場所のベンチに男は座っており、右手には十三番と書かれた番号札を持っている事に気付く。何故、自分がこのような場所に居るのか分からなかったが、未だ呼び続けている職員の元に向かうことにする。


 職員に自分が何故こんな場所に居るのかと問うと、「あなたはお亡くなりになられました」と説明をされてしまう。


 しかし、男はそんな事は信じられない。「現にこうして生きているじゃないか」と、職員に言うも、無表情なまま職員はタブレットの様な物を取り出し、男にある映像を見せてきた。


 その映像には確かに夜道を歩いている自分が映っており、後ろから来た男にナイフで刺され、倒れ込む映像が映し出されていた。



 その映像を見て、男の頭にその日の映像がフラッシュバックされてくる――会社の帰り道にいきなり背中に激痛が走り、財布が入ったバックを奪い取り逃走する男の顔。


 その時の光景を思い出し、男には憎悪の感情が渦巻いていたが、職員は淡々とした口調で説明を続ける。


 職員の説明によると、『来世ポイント』という、生前の行いがポイントで評価され、来世になんの動物に生まれ変わるのか決まるという。



「あなたの評価はCです」


 唐突に職員に評価を下された男であったが、Cという評価にいまいちピンときていなかった。しかし、男は自信があった。


 ――自分は真っ当に生きてきた。犯罪などした事はないし、ごく普通に生きてきただけだから、次も人間だろう。



 しかし、職員に告げられた言葉に愕然とする。


「来世は小動物のいずれかになるでしょう」



 納得が出来ずに職員に抗議をするが、この決定は絶対であり変更は出来ない、期間は四十九日。それまでに生まれ変わるか決めないと、輪廻転生は出来ないと説明されてしまう。



 職員の説明に唖然としている男の横を一人の男が通り過ぎていく。



 その男には見覚えがあった。自分を殺した通り魔だったのだ。通り魔に掴みかかろうとするが、傍にいる職員に取り押さえられてしまう。


 だが、そこで評価の事を思いだす。こいつは人を殺した。自分よりも評価は低いはずだ。その事を勝ち誇った顔をして言うも、通り魔はにやりと笑い、




「残念だったな。俺は来世でも人間だ」



 そう言い立ち去っていく。


 人殺しなのに、来世は人間?納得できずに職員に抗議をするも、


「人を殺したかどうかで来世ポイントが変動する事はない。


 男はその言葉に納得出来ずに職員に抗議をする。



 ――ならばあの人殺しは何を成したというんだ!?






「あなとという、ただ生きているだけのなんの価値もないゴミを殺してくれたでしょう?」










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