地方の百貨店

 少し大きな町ならば、百貨店というのは存在するだろう。


 アパレルショップからスーパーまで、様々な店舗が百貨店には存在する。そんな百貨店だが、ある地方の百貨店の中には少し変わった商売をしている者がいる。



 それは『似顔絵師』だ。ただ、という。





 友人にその話を聞いた彼女は、その似顔絵師に興味を持った。普通ではないとはどういう事なのだろうか…彼女は友人に聞くも「行ってみれば分かる」と、全く教えてくれない。幸いにも、百貨店の場所は日帰りで行ける距離なので、休日にでも行こうと考えていた。




 休日になり、彼女は一人でその百貨店に行くと、友人が言っていた似顔絵師が居た。早速、彼女は似顔絵を描いてもらう事になるのだが、なんと十分ほどで描いてくれるという。


 意外にも短い時間だった事に驚きつつも、どんな絵になるのか楽しみにしていた。


「出来上がりました」


 彼女はその絵を見て困惑した。



 何故なら色紙には


 どういう事かと絵師に尋ねると「その絵は暫くしたら絵が浮き上がってきます。浮き上がってきたら注意して下さい」と言われてしまう。



 なにを馬鹿な事を…彼女はそう思ったが、お代を払いその場から荒々しく立ち去っていく。



 その日のうちに、絵師を紹介してくれた友人に連絡するも一向に繋がらない。一言文句を言いたかった彼女は、友人の住むアパートまで行き呼び鈴を鳴らすが出てこない。





 それから友人とはあの日以降、会う事は出来ずに月日が流れ、彼女は引っ越しをすることになる。部屋を片付けている時に、数年前に地方の百貨店に行った時に描いてもらった似顔絵が買い物袋から出てきた。


 そういえばそんな事もあったな――と、思い袋から出して見てみると、彼女は悲鳴を上げてしまう。




 何も描かれていないはずだった色紙に、彼女の手足と首があらぬ方向に折れ曲がっている絵が描かれていたのだ。


 彼女は怖くなり部屋から飛び出してしまう。数分後、「ドンッッ!!!!」という音が辺りに響き渡った―――。

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