第6話 あれれ?

 翌日。

 昨日と同じ時間、同じ場所に、まぎかは立っていた。今日は学園の制服姿だ。相変わらず閑静な住宅街で、人気は少ない。

 しばらくして、二つ結びの少女が通ったので、挨拶と世間話を交わし別れた。彼女が来たのなら、もうすぐだ。

 そう思っていたら、案の定、現れた。


「来たわね」


 まぎかは、きちんと覚えていた。あのときあの場にいた、もう1人の少女を。

 二つ結びの少女の後方で、彼女と同じように怯えていた少女を。

 いや、今となってはその怯えも、演技だったのだろうと分かる。


「えっと……?」


 突然目の前に立ち塞がったまぎかを、少女は目を丸くして見つめた。これまた、可愛らしい少女だ。いや、どちらかといえば美人系かもしれない。思い切りの良いショートカットと、切長の瞳。なるほど、この力強さは、炎の魔法少女にぴったりだ。


「そう、炎がポイントだったのよ。あなたは、炎の能力で、空気に層を作ったの。今は初冬。空気は十分に冷えている。だから、昨日、二つ結びのあの子が立っていた」


 まぎかは言葉を切り、昨日の場所を指差した。


「あの辺りの上空に、魔法を発動した。空気を温めて、暖かい空気と、冷たい空気の2層になった。そして、起こったのよ。【蜃気楼】が」


 目前の少女が、ごくりと息を呑んだ。

 まぎかは続ける。


「空気の温度層があるところで、光が曲がり、実際には遠くのものが、近くに見える現象。見え方が歪んだり、反転したりするけれど、対象が炎の渦なら、それは問題にならない。

 あなたは蜃気楼を作り出して、自分じゃなく、あの二つ結びの子こそが、魔法少女だと思わせたかったのよ。

 けれど、あなたの企みはみな全て、月の光でお見通しよ!」


 ビシッと指を刺し、決め台詞を放つ。しかし、やはりしっくりこない。

 一方、企みが暴かれたはずの魔法少女は、ポカンと口を開けている。

 それから、まぎかを頭のてっぺんからつま先まで眺めて——。



「えー……と、あなた、何言ってるの?」



「へ?」

「魔法少女? 魔法? って……、あー、えっと、もしかして、昨日のアレ⁉️」


 ショートカットの少女は急に、ぐぐいとまぎかとの距離を詰めた。


「ねえ、何か知ってるの⁉️ 私、昨日ここで、変な化け物見て……」


 ぐいぐいぐぐいと、ショートカットの少女が詰め寄ってくる。思わぬ展開に、まぎかはたじろいだ。



「え? え? えええ? えっと、もしかして、あなたも魔法少女じゃ、ないのかしらぁ?」



 まぎかは半泣き半笑いの表情で、そう叫んだ。

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