第4話 お茶をしましょう

 うなうな言う二つ結びの少女を、まぎかは引きづるように、駅前のホテルへと連れてきた。

 2人が囲むテーブルには、3層のケーキスタンドが置かれており、一段目にサンドイッチ、二段目にスコーンとジャムとクッキー、三段目にショートケーキが乗っていた。

 ただし、スペースの余白から2人分が置かれていたはずのそれは、きっかり半分になっている。

 まぎかは右手で紅茶のカップの取手をつまみ、口元に運んだ。カップを傾ける。香りと味を楽しむと、カップを置いた。


「つまりあなたは、魔法少女ではないということかしら?」

「は、はい、何度も申し上げておりますが、その通りでございます」


 震える声で、二つ結びの少女が言った。

 ここに連れてきてから、名前を尋ね、学校を尋ね、魔法少女であること前提に話を進めても噛み合わず、問い詰めてみたら全然ピンときていなかった。 

 ポチャが言うように、身バレが怖くて隠しているという可能性も考えたが、そこから何度も問答を重ねた結果、どうやら本当に知らないようだと結論づけた。

 隠し事をしている場合、ブラックリンやリップなどの単語に、どうしても反応してしまうはずだ。演劇部などに所属していて、演技がとてもうまかったのだとしても、まぎかの合図で突然目の前に現れたポチャに、無反応ということはあり得ないだろう。


「そう……。悪かったわね。ごめんなさい。せっかくだから、召し上がって?」

「あ、はい、ありがとうございます……」


 二つ結びの少女が、恐る恐ると言った様子で中段のクッキーに手を伸ばす。


「一番下からよ」

「はい、すいません!」


 少女は手にサンドイッチを掴んだ。そこから、なんだかんだと互いの学校の話題、趣味や友達の話で盛り上がり、楽しくアフターヌーンティーを楽しんだ。


「まぎかさんってめちゃくちゃ変なイカれてる人かと思ったら、良い人だったんですね!」


 魔法少女に変身していたら、脳天に親愛のチョップを贈るところである。

 こうして、二つ結びの少女は笑顔で手を振り去っていく。

 しかし、魔法少女はまだ、見つからない。

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