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「「Woooooooo!!」」

 演奏はじめにいた生徒たちばかりでなく、曲の途中からも中庭に駆けつけてきた観衆も加わって、野外ステージ前は怒涛の盛り上がりを見せた。

「みんなー、アイドル部を応援してくれるかなー?」

「「Yeaaaaaah!!」」

 吾輩たちのようなその場の思い付きやっつけではない。確かな計画と練習と技術に裏打ちされたパフォーマンス。楽しむ心が同じだとしても、その部分で圧倒的な差がある。

「まいった。アイドル部に持っていかれてしまったな」

 会長殿もそこは認めざるを得ないのだろう。口では悔しさを表に出しながらも、顔はさっぱりした表情を浮かべていた。

 聴衆の興奮が落ち着くのを待ってから、センター殿が口を開いた。

「さて、ここで今日のゲストを紹介しまーす。……ミケくーん?」

「え? え? ええ?」

 いきなり話を振られて動作停止フリーズ気味の吾輩を、例のアニメ声のアイドル部員が強引に引っぱってステージ中央まで連れてきた。むう、中身は金属製で人間よりだいぶ体重のある吾輩をあっさり引きずれるあたり、見た目は小柄な美少女でもその実かなり鍛えていると見た。アイドル部、実は体育会系。

「とくに中等部の子はもう噂聞いてるかな? 1-Fのロボ、ミケランジェロくんでーす! 『お気軽にミケとお呼びください』って言ってるから、みんなそう呼んであげてね☆」

「こ、こんにちは、ミケランジェロであります……って、こんな話は聞いてないですけど?」

 後半はセンター殿に向けて、吾輩はとまどいの声を向けた。MPUはコンピュータだけに、吾輩たちロボはこういう想定外の事態に弱い。

「まあまあサプライズってことで。ロボ研そっちにとっても悪い話じゃないと思うんだけどなー?」

 吾輩のステージ衣装を上から下まで観察して、センター殿はいたずらっぽい笑みを浮かべた。

「これからのあたし達のパフォーマンスでロボ研に会員が入ったら、前からお願いしてる話、受けてくれないかな?」

「あ、アイドル部入部の話ですか? それはちょっと勘弁してほしいのであります。吾輩、こういう恰好はどうも苦手でして」

 その話は起動直後から何度も来ているが、その都度丁重にお断りしている。たまにちょっとやるだけでもすでに水温が危ないというのに、それをいつもとなるとメカニズムがもたない。

「いーじゃん。似合ってるよ、とりまーのコス☆ んー、男の娘ロボアイドル! わお☆ 属性が渋滞してる! ……ミケくんの衣装、可愛いと思う人ー!」

 センター殿が居合わせた生徒たちに呼びかけた。女子のほとんどと、男子からもちらほら手が上がり、拍手が飛び、歓声が聞こえてくる。

「とゆーわけで、ミケくんはもっと自信持ってハジけたほうがいいんだよ! さっきのパフォーマンスも、照れを捨てて開き直ればオーディエンスにも届く♪」

「ですからこれを生業にするつもりはないと……第一、吾輩は穂妻の生徒ではないんですから部員にはなれませんよ? 話はまずマスターを通してください」

 吾輩はちょっと反論しかけて攻め方を変えた。この論法では同じところを堂々巡りだと<判断>したからだ。

「そーゆーわけなんだ。うちのミケを勝手にどうこうしないで欲しいな」

 さすが主従の仲。吾輩の無言のSOSをしっかり受け取ってくれて、マスターがステージに進み出てきた。

「あら、ひまわりちゃん☆ うんうん、ミオコス似合ってる☆ 元気っ子も、アイドル部ウチは大歓迎だよー!」

 しかしセンター殿、二人相手にしてもまったく自分のペースを崩さない。年の巧か、はたまた確かな実力の裏付けあっての自信か。

「聞いてるよー。若越からMTBチャリなんだって? なら基礎体力はバッチリだね! あとは磨けば光る♪」

「あのね……。言っとくけど、歌は音程取れてないし、ダンスも勢いだけって自分でも分かってるよ?」

 マスターも、こういう悪意のない相手には反発するきっかけを得られないらしい。ちょっといつもの調子が出ない。

 対するセンター殿は天然なのか、それとも計算ずくかあくまで人当たりのいいニコニコ顔。たとえば大西殿のような不快感は皆無なのだが、どうもいつの間にやら向こうのペースに巻き込まれてしまう。それを心地いいと感じさせてしまうところもまた。

「だからそこは練習レッスン次第でどうにでもなるって。だいじょぶ、どっかのキモオタと違ってロボ研潰すとか言わないから! 掛け持ちでいいの。ね?」

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