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♪「いま!」 もらった この給料
何だって 電子マネーに できたらいいのに
マスターの歌声は音程外れ気味。ダンスも勢いだけという感じだ。
しかし明るくて元気な空気を創りだせる。なにより、本人が楽しんでやっているのがお客にも伝わってきて見ていて楽しい。
♪まだ 全力で ステ凸ってない
悔し涙 ぬぐったんだ 廃人のプレイング
ケイ殿のパフォーマンスは事前に
しかしどうにも感情がこもらず機械的な印象を与えてしまう。その昔、人工音声歌唱ソフトが普及し始めたころってこんな感じだったのだろうか。
♪奇跡が カードの 先にあるなら
限度額は 私が決める 貢げ!
吾輩もソフトを
しかしどうしてもパフォーマンスに「照れ」が現れる。とくにこのスカートというものは、どうにも下半身がすーすーして心細い。別に見られて困るものは何一つ付いていないのだけれど。
♪もう一回 十連ガチャを 回しに行こう
止めない 沼こそ爆死
このコンビネーションもいまいちな三人のパフォーマンスを分かっているのかいないのか、会長殿は
というか録音した曲を再生してるだけなので、実質この人の仕事はないのだけれど。
♪何百回 課金 重ねて ここまで来た
Sレアの 神様 見ててね
曲は桜子先生がネットのどこかで拾ってきたなにかの替え歌だという話だが。
しかしどうにも脱力する歌詞だな。あの先生らしいといえばそれまでだが。
♪忘れたくないスマホ 離したくないタブレット
リアルを捧げて 運営に届け
とにもかくにも一曲歌いきると、マスターは「みんなー、ノッてるかーい?」と聴衆に問いかけた。ぱらぱらぱらと拍手が返ってくる。心なしか歌う前より増えているから、首尾はまあまあというところか。
「ボクらロボ研究会は、もっか部活昇格を目指して新入会員を大募集中! まあごたくを並べるよりも、今年のウチの目玉から色々語ってもらおっか? ミケ?」
これは事前の打ち合わせ通り。吾輩はスカートを気にしつつも、一歩進み出て声を張り上げた。
「みなさんこんにちは。ロボ研のニューカマー、ミケとお呼びください。我々ロボ研は現在少数精鋭で時代の最先端であるロボについて研究を進めています。正直学生の皆さんには敷居の高い活動ですが」
そこまで言いかけたところで、吾輩はステージの袖から軽い足取りで飛び出してくる、ブレザー風の学校制服を基本デザインとしながらも吾輩たち同様派手な配色と装飾、そして大胆なカッティングでアレンジされた衣装に身を包んだ女子たちを認めた。
「はぁい♪ あたし達のステージを勝手にジャックしたいたずらっ子なニューエイジズは誰かなー?」
あんまり吾輩たちの所業をとがめるという感じではなく、軽い挨拶みたいな明るいノリで、4人を先導するひときわ華やかな印象の女の子が手を振ってきた。
「あ、これはアイドル部の。いえその、これにはやむにやまれぬ事情がありまして」
吾輩、この場を取り
「うんうん。少人数クラブが人集めようと思ったら、手段選んでられないよねー。でも一夜漬けでどうにかできると思ってるなら、
あくまでフレンドリーな態度を崩さないながらも、ロボ研の所業をちくりと刺すことを忘れない。ちらりと視線を向けられて、会長殿がこの人には珍しく、そそくさと機材の影に隠れるのが見えた。
「とりあえずロボ研のパフォーマンスじゃ
件の子がセンターに位置取り、4人がフォーメーションを組む。とくに押しのけられたというわけではないが、なんとなくロボ研の面子は隅に引っこんでしまった。
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