第32話 この世界は勿体ない
「おばさん、大き目の女性用の服3着と下着3組選んで貰えるかな?」
この世界では服は基本的に古着だ。
勿論、下着は新品。
「大き目って言うとこの位かな?」
「もう少し大き目の物があればその方が良いんだけどな」
「これより大きいのかい…一応こんなのはあるけど? これで良いかい?」
女性ものの服は小柄な女の子が多いせいか大き目のサイズは少なかった。
「それじゃ、それでお願い致します」
「あいよ…古着3着に下着3セット…全部で銀貨1枚でどうだい」
「それじゃ、それで…」
「あいよ」
服はこれで良いとして歯ブラシに女性用の洗顔せっけんやハーブ水。
前世とは全く違うから…解らん。
仕方ないので、自分が必要と思った他に、お店の人に勧められるままに購入した。
まぁ…これで大丈夫かな。
◆◆◆
かなり気が重い。
俺が出かけて行く時にエルダさんは泣いていた。
どう声を掛けて良いのか解らない。
廊下でドアに耳を当て中の様子を探る。
泣き声は聞こえて来ない…
落ち着いたのかな…
静かにドアを開けて様子を見てみた。
どうやらエルダさんは泣きつかれて眠っているみたいだ。
部屋の中の食事も飲み物も手が付けられていない。
それ処か部屋の中の物に何も手をつけられていない。
今迄ずうっと泣いていて泣きつかれて眠ってしまった。
そういう事か…
サリーちゃんの話通りなら泣きたくもなるよな。
今はこのまま寝かせて置いた方が良いだろう。
しかし、見れば見る程、凄い美人だ。
赤髪はロングで綺麗なウエーブが掛っている。
気がつかれないように触ると、奴隷になった為手入れは余りされていないが、風で靡いたら、神秘的に見える。
目が大きくてやや赤みが掛っていて凄く綺麗だ。
何より笑顔が凄く素敵で可愛い。
少しどことなく、俺の死んでしまった母さんに似ている。
本当にドストライクだ。
もしエルダさんに出会わなかったら、多分、他の人で妥協したかも知れない。
例えば同級生の平城さんとか…黒髪だし日本を懐かしむなら同級生でも充分だ。
エルフだって令嬢だって本来の俺からしたら高嶺の花だ。
だが…エルダさんを見ちゃったからこそ…妥協できなくなったのかも知れない。
そう言えば、顔じゃなく体型が問題なんだよな…
巨乳でお尻も大きく…それでいてお腹はへこんでいる。
どう見ても…う~ん、現実社会ならアメコミのヒロインが似合いそうだし…空想世界なら『くっ殺せ』系の女性騎士みたいに見える。
これが、この世界ではブサイクな体だなんて…
信じられないな。
確かに、地球だって、足が小さい女性が美人という話があり纏足…ウエストが細い程美人そういう話がありコルセットで凄く締め付けて生活している女性や…体型補正の下着を身につけ胸やお腹、お尻の成長を押さえた…そんな話を聞いた事がなんとなくある。
※主人公のうろ覚えです
この世界は、まさにそう言った文化に近いのかも知れない。
そりゃ、なかなか居ない筈だ。
何時までも寝顔を眺めていたいが…失礼な話だよな。
荷物をテーブルに置き…俺は…
床で眠るとするか。
俺の体は孫悟空だから風邪をひく事も無いだろう。
これからの事はエルダさんが起きてから話せば良い。
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