第30話 奴隷商の馬車

暇つぶしに同級生の様子を見に行ったりしたが、まだまだ訓練が続いている。


聖剣は修復が出来ないようで、人造聖剣を作るみたいだ。


その日数がかなり掛かるみたいであと数か月は掛かるようだ。


問題は、彼らが旅だった後どうするかだ…


恐らく彼らは死ぬだけだ。


今後、どう育つか解らないが…あの魔王どちらと戦っても死ぬしかない。


もう人類の敗北は濃厚だな。


今はまだ時間がある…暫くは放っておくか。


◆◆◆


相変わらず、奴隷商に行っても理想のタイプの女性は居ない。


巨乳と筋肉女、デブが一緒の扱いで…悲しい事に筋肉女とデブは居ても…本当の巨乳は…何故かいない。


もう諦めるしかないのかも知れない…


妥協が必要なのかもな…


「サリーちゃん…誰か良い人見つかった」


「悟様、それとは違いますが…凄い情報があります」


「凄い情報?」


「はい、銀貨1枚です」


どんな情報か解らないがサリーちゃんが言うんだ貴重な情報に違いない。


俺は銀貨1枚払って情報を買った。


「実は…エルダが奴隷として売られました…この国ではなく帝国の奴隷商にです」


「どうして」


「詳しい事は解りません…ですが、少し前に冒険者証の抹消手続きがありましたので…間違いありません」


マジか…


「それどのくらい前!」


「ほんの少し前です…」


「ありがとう」


俺はお礼を言って冒険者ギルドを後にした。


すぐに周りを見たが居ない。


全速力で門の前まで走った。


門番にチップを払い情報を聞く。


「奴隷商の馬車を知らないか?」


「帝国行きの馬車ならもう門を出た…馬で追わなければ無理だ」


「ありがとう」


俺は門から外に行き筋斗雲を呼んだ。


街道沿いを飛び…見つけた…奴隷商の馬車だ。


俺は少し離れた場所で筋斗雲から飛び降りて、馬車に向かった。


「止まってくれーーーっ」


馬車の前に飛び出した。


「なんだ、貴様野党か?」


「違う…客だ、その中の奴隷で購入したい人間が居るんだ」


「そうか…ハイエルフの存在を知っての話だな…だが残念だがハイエルフもエルフも既に売約済みなんだ諦めてくれ」


「違う…俺が欲しいのは人族だ…」


「それなら勘違いじゃないのか? 今回の買い付けには令嬢とか器量よしは居ない…他の奴と間違えているぞ」


どう話せば良い。


「年のころは20代後半位、肌が浅黒く赤髪の女だ…恩人なので譲って貰えないか?」


「人族の女? 今回の仕入れで碌なのは居ない筈だが…居たら譲ってやる!ただお前の為だけに馬車を止めるんだ、見るだけで銀貨3枚貰うぜ良いか?」


「構わない…ほら」


「ありがとうよ…言って置くが人族ならOKだが、亜人は買い手がついているから売れねーからな」


「大丈夫だ…」


3台の馬車の中で一番みすぼらしい馬車に案内された。


中は大きな檻があり…そこには手枷と首輪が付いた状態で10人ほどの人間が繋がれていた。


「どうだい、碌な奴居ないだろう? 仕入れ値も銀貨5枚の安物ばかりだ…此処にいる奴なら金貨2枚で良いぜ…本来は金貨1枚だが、此処は奴隷商でも市場でも無い…だから割高だ」


俺は馬車の中を見回した。


居た。


間違い無いエルダさんだ。


「そこの奥にいる女性が目当ての女性だ…購入する」


「居たのか…この中に…えっ、そいつか?」


「はい」


「そうか…流石に金貨2枚は良心が咎めるから、金貨1枚で良いや…奴隷紋と書類の発行で銀貨5枚…合計金貨1枚と銀貨5枚だ…それで良いよな?」


なぜ負けてくれたんだ。


「あの何故負けてくれたんですか?」


「いや、話しを聞いた感じだと、若い女を買うんじゃないか? そう思っていたんだよ…そっちの奴な…だがあんたが買おうとしているのは確かに女だが…BBAだからそういう価値は無いし鉱山奴隷だから奴隷としては一番安い奴隷だ仕入れ値も安いし流石に金貨2枚は気が引ける…それにそいつ足を怪我しているから、走れねーよ…文句言うなよ」


「文句ない…ありがとう」


「ありがとうか…もういいや、孝行者の息子のお前に免じて全部で金貨1枚で良いや」


勝手に誤解して勝手に値引いていくな…まぁ良いや。


「ありがとうございます」


「良いよ良いよ…それじゃ奴隷紋と書類を用意するから、金貨1枚と血をくれるか?」


「はい」


俺は金貨1枚を払い、奴隷商の用意した皿にナイフで指を切り血を垂らした。

その血を使いエルダさんの肩に紋章を刻み、書類を書きあげ俺に渡してきた。


「これで、この女はあんたの物だ…母親なのか? 旦那と違って息子は随分良い奴だな…良かったな…」


「…」


「そうだ、煩いから奴隷には話しないように命令してあったんだ…主人はあんただ『喋って良い』って許可すれば喋れるようになるからな、それじゃ俺達は行くぜ…よかったな、母さん救えて…じゃぁな」


奴隷商は笑顔で手を振りながら去っていった。


「喋って良いですよ、エルダさん」


エルダさんの目が悲しい目になり…涙がこぼれ落ちた。


「悟…なんで買ってくれたんだよ…私…足に怪我をして冒険者として役に立たないんだ…同情?」


「同情じゃないよ…取り敢えず街に戻ろうか…話はそれからにしよう」


「うん…」


筋斗雲は使えないよな…後先問わず飛んできたから…色々困った。


泣いているエルダさんの手を引き街へ向かった。







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