第6話 仏たち
嘘だろう…まさか私が目にかけている子が異世界に連れ去られるなんて…
薬師如来の名に懸けて恥ずかしい事だ。
私はあの不幸な母親に約束した
『その願い、私が聞き届けた…息子を思うお前の願い、私が叶えよう』と
それなのに、その息子が異世界に連れ去られるなんて不味すぎる。
◆◆◆
「その話は本当ですか? 薬師如来」
「はっ、お釈迦様…申し訳ございません」
これは由々しき事態です。
我々仏に縋ってきた者の願いを、死を悟った者の願いを踏みにじる訳にはいきません。
また、異世界の女神ですか…本当に忌々しい存在ですね。
「この際、その女神とやらに攻撃を仕掛けたらどうだろうか!俺が行こうか?」
「阿修羅天…それは不味い、あちらにだって庇護している他の神がいる…最悪大きな戦争になりかねない」
「そんな事言っているからつけあがるのだ…一方的にこちらが被害にあっているのに」
「それに今回のその子は…今迄の子と違い母親がその子の幸せを薬師如来に願っていたんだろう?仏が約束を守らないのは不味いよな!」
「帝釈天、その子の母親は私が祭られているお寺に良く願掛けにきていましたよ!今迄が不幸だったので、それで私は、最後の願いを聞くつもりで…その願いを引き受けたのです」
「薬師如来様が約束したのに守ってあげないのは不味いですよ?仏としての面子があります…異世界の女神などに信心深い者の息子の幸せを壊させる等言語道断です」
暫く話していたが埒が明かなかった。
だが、突然1人の人物が手を挙げた。
「「「「「斉天大聖」」」」」
「今の話を聞いていたが、ようはその『悟』という子が幸せに暮らせるようにすれば良いんだろう? なら簡単だ!」
「だが、連れ戻す事も出来ない、加護だって与えられない…その状態なのですよ…」
「1度だけ向こうに出向き『強い体』を与えれば良いんじゃないか?」
「体? 何を言っているんだ? そんな物何処にあると言うんだ!」
「帝釈天も知っているだろう? 俺の名前を名乗って好き勝手していた、えて公が居たじゃないか? あいつ天竺まで三蔵法師のお供をしてお経をとりに行ったあと人間になったんだろう?その体をやれば良いんじゃないか? 猿の癖に天界で暴れて俺の名前『斉天大聖』を無理やり名乗っていた位強いんだから…あの体をやれば異世界でも暮らせるんじゃないか?」
「あれか…あれなら異世界でも生きていけるな」
「何しろ、天帝や竜王が手を焼き、一万三千五百斤(約8トン)の如意棒を振り回していたんだ、まず問題はなかろう」
「それじゃ、それで決まりで良いか?」
「ありがとう斉天大聖」
「薬師如来、これは貸しだからな」
話し合いの末、悟には『孫悟空』の体を与える事が仏の間で決まった。
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