第22話 イケアで買い物。そしてプリクラ

食事が終われば次は買い物である。

俺たちはイケアにやってきた。


イケアは北欧発の大手家具量販店で、シンプルながら上質な家具を多く販売している。


広い売り場を見て歩く。

目的地の寝具売り場に到着すると、そこには多種多様なベッドが並んでいた。


どれどれ。

俺はあれこれと品定めをする。

このポケットコイルのやつなんか、寝心地良さそうだな。

プレナリェルはどう思う?


「……ふぇ? 寝床なら足りてますよ。新しいのは要りません」


そう言うなって。

だって今のお前らの寝床って、適当に掻き集めた草や葉っぱに、シーツを被せただけの雑なやつだろ。

寝辛いんじゃないか?


「そんなことないですよー、快適です! だってこの辺りの草や葉はどれも大人しくて、寝ている最中に噛んで来たりしません」


は?

なにそれ。

言ってる意味がわからん。


「フウタローさんだって、寝てる最中に草に噛まれたことあるでしょ?」


ないない。

あるわけない。

草が噛むってどういうこと?


「そういう魔物なんですよ。こう、葉っぱや草に擬態しててですね、よく寝床の草に混ざってて――」

「ん。噛まれると痛い」


カナリタが心底嫌そうな顔をした。

なるほど。

多分、ムカデに噛まれるような感じなのだろう。

そりゃ痛い。

というかこいつら、今まで随分とまぁハードな環境で眠ってたんだなぁ。

可哀想に。


よし。

なら今後は柔らかなマットで朝までぐっすり眠れるようにしてやる。

生活環境向上への第一歩だ。

俺は奮発して、ちょっと良いベッドを買うことにした。


店員さんを呼び、注文をする。

有名寝具ブランド『シモンズ』のベッドを、エルフたちとヴェルレマリーの分。

あと俺の隠れ家ツリーハウス用で計9台。

結構な高額注文である。


お会計を済ます。

すると不本意ながら不審者みたいな出立ちの俺たちを警戒していたイケアの店員さんは、安心したのかにっこり笑顔になった。



今日の目的だった買い物は済ませた。

だがまだ陽は高い。


せっかくこうして街まで来たことだし、少し寄り道して帰ろうか。

なぁ、どっか行きたい場所とかある?


プレナリェルが元気に手を上げる。


「はい、はーい! フウタローさん、私、さっきの『ゲームセンター』っていう所に行ってみたいです!」


ふむ、ゲーセンか。

そういえば気にしてたもんな。


俺はヴェルレマリーとカナリタの意見を確認する。

反対意見は……特にないみたいだな。

ならいいぜ。

ご希望通りゲーセンで遊んでいこう。


連れ立って移動する。

やってきたのはビルが一棟丸ごとゲームセンターになっている大型のアミューズメント施設だ。


ここでは地下階でメダルゲームを。

1階でクレーンゲームとプリントシール撮影機。

2階でビデオゲーム。

3階ではリズムゲーとかのアクション系大型筐体を遊ぶことが出来て、4階ではカードゲームを楽しめる。


建物に入ると、すぐにプリントシール撮影機が目に入った。


そうだ。

みんなでプリクラ撮らないか?

何というか、今日という日の記念……とまで言っちゃうと大袈裟だけどさ。

結構いい思い出になると思うんだ。


「プリクラ? なんだそれは?」


ヴェルレマリーが首を傾げている。


百聞は一見にしかずだ。

とにかく1枚撮影してみようぜ。

俺はヴェルレマリーの手を引いて、プリントシール撮影機に向かう。


「ちょ、ちょっと待て! ええい、フウタロー! 私は一人で歩ける! だ、だから、その……て、手を握るな!」


あ、すまん。

俺はパッと手を離した。

ヴェルレマリーは頬を上気させて、むすっとしている。

その後ろでは、プレナリェルが口元に手を当てて、くすくすと笑っていた。

カナリタは無表情で感情がよく分からん。


「ほら! こっちこっち!」


俺は先に撮影スペースに入ってから、みんなを招いた。


セッティングしていく。

エルフのふたりは前列で左右にな。

ヴェルレマリーは真ん中だ。

そして俺は一番後ろ。

いいか?

じゃあ撮影するぞー。


パシャリとカメラのシャッターが落ちる。

シールはすぐに現像された。


俺は出来上がったプリントシールを眺める。

なんか絵面がわちゃわちゃしてる。

視線なんて全員てんでバラバラだ。

まとまりがない。


でも俺は、こういう雰囲気もこれはこれで悪くないなと思った。

学生時代に戻ったみたいで胸が踊る。

さ、次はどのゲームで遊ぼうか。

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