第14話 エルフの森を作ろう。
翌日、俺はエルフたちを連れ、敷地にある雑木林までやって来ていた。
目的はエルフたちの家を建てること。
やむにやまれぬ事情により放浪生活を続けていたエルフたちは、何でも里をでるまでは樹にツリーハウスを建てて住んでいたらしい。
ならその住環境を再現してやろう。
なにせ日本に誘うときに、家は任せろって大見得を切っちゃったしな。
◆
ところで俺はツリーハウスには詳しい。
というのも俺は、アメリカのツリーハウスビルダー『ピート・ネルソン』の大ファンだからだ。
ピートの技術は大したもので、そりゃあもう立派なツリーハウスを作る。
技術だけじゃなく、情熱もある。
かつてアニマルプラネットで放送されていた彼の番組は、全部楽しく観させて頂いた。
そんな俺も、最早
俺は周囲を見回した。
いっちゃ何だが、ここは貧相な雑木林だ。
ツリーハウスに適した立派な樹は少ない。
だが俺には分かる。
俺はとある樹に当たりを付けた。
これだ!
この樹が良い。
幹が太くて真っ直ぐで、ツリーハウスを建てるのに向いている。
そんな樹が複数、等間隔に生えてる。
こういうのが支柱になるんだ。
きっとピートがこの場にいたって、これを選ぶに違いない。
な、プレナリェルもそう思うだろう?
「なに言ってるんです? それより危ないですよ。そこら辺、地盤が緩いですし、樹はぜんぶ根腐れしてます」
俺は押し黙った。
◆
プレナリェルが号令をかける。
「――集合!」
エルフたちが集まった。
輪になって顔寄せ合い、ひそひそと話し出す。
「……どう思いますか?」
「報告ー。周辺には魔物はいなかった」
「ふむ、安全ですね。他には?」
「昨日のお肉が美味しかった」
「また食べたい」
「私もです。他には?」
「お肉が美味しかった」
話がループしだす。
エルフたちはお肉がお気に入りだ。
「じゃあ決を取りますよ。
「賛成ー」
「賛成ー」
「私もー」
どうやら意見がまとまったようだ。
プレナリェルが懐から何かを取り出した。
苗だろうか。
ぽわんと淡く光っている。
それは?
「これですか? これは
きょろきょろと辺りを見回す。
「あの辺りが良さそうですね」
プレナリェルが地面を掘って苗を植えた。
エルフたちが寄っていく。
全員で苗を植えた場所を囲ったかと思うと、ぶつくさと何かを念じ始めた。
その途端――
ごごごごご、と地鳴りがした。
急激に成長を始めた御神木が、大地を揺らしたのだ。
苗は見る間に伸び始め、高く太い幹が現れた。
枝がにょきにょきと生える。
伸びた先に、次から次へと緑の葉が生い茂っていく。
「……うぉ⁉︎ おおおおおお――」
俺はたまらず叫んだ。
精一杯首を倒して頭上を見上げる。
けれどももう、御神木のてっぺんは少しも見えない。
とんでもない成長速度。
続いて変化が起きる。
御神木の爆発的な成長につられるようにして、周囲の樹々までもが育ち始めたのだ。
――ど、どうなってんの、これ⁉︎
俺はエルフたちをガン見した。
彼女らは笑いながら応えてくれる。
「それは御神木の影響ですよー」
「神木ユグドラシルが根付いたからには、ここはもう聖域……」
「漂い出した神気が周りの草木や大地にも、良い影響を与えてるわけね」
説明を受けてもさっぱりわからん!
驚愕する俺を他所に、森は膨れ上がっていく。
「それはそうと中々良い成長具合ですねぇ」
「元々の土地が良かったのかも」
エルフたちが何か言っている。
俺は圧倒されっぱなしだ。
そうしていつの間にか、貧相だった雑木林は美しいエルフの森へと変貌を遂げたのだった。
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