第6章 それぞれの答え

第58話

 愛野は工場の地下への階段に足をかけた。


 その背後には、輪神教会の信者の男たちが倒れていた。


 愛野は須崎に言った。


「急ぐで、おっちゃん! あとは黒部を引きずり出すだけや」

「わかっとります。そうしましょう」


 愛野は階段を降りた先で照明のスイッチらしきものを見つけ、それを押した。


 すると、薄汚い地下室の中央に、大柄の男がリクライニングチェアに座り、ヘッドマウントディスプレイを装着しているのが見えた。


 愛野は一も二もなくそれに駆け寄って、頭のヘッドマウントディスプレイに手をかけると、力まかせに引っこ抜いた。


 ヘッドマウントディスプレイからはアラート音が鳴りはじめた。


 やがてその男――黒部はうめき声をあげ、目を開けた。


「……なんだ? どうなった? それに、お、おまえたちは?」


 愛野は言った。


「おはようさん。長い夢やったな。けど、夢はしまいや。黒部」




   *   *



 園川はキャズムと決着をつけたあと、視界にマップを開くと、葉仲のアイコンに向かって雪の中を進んでいった。


 やがて雪原に突き出た岩と、その横にぽっかりと空いた階段が見えた。園川は階段を下りていった。


 階段を降りきると、その先に玲奈の姿があった。


 玲奈は右足と右腕を損傷しつつも、なんとか立っている様子だった。


 玲奈の背後には、甚大なマスタークリスタルが屹立している。


「園川くん。きたわね」

「ええ。すみません。遅くなりました。黒部は?」

「たぶん、リアル側から引っ張り出されたんだと思う。さっきまで戦っていたんだけど、離脱して……」

「そうですか。なんにしても、やられていなくて、なによりです」

「そんなことより、早く済ませましょう」


 そう言って玲奈はマスタークリスタルを見た。


「わかりました」


 園川は電磁ナイフを取りだした。


 すると、マスタークリスタルがひときわ強く輝いた。その瞬間、園川は自分の体が宙に浮くような違和感を覚えた。


 玲奈の声がした。


「ちょっと、園川くん、大丈夫?」


 その声ははるか遠くから聞こえるように感じられた。

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