第55話

 愛野は車中で園川たちからの連絡を待っていた。


 岸中は運転席におり、須崎は後部座席の愛野のとなりにいた。


 そのとき、スマートフォンの新着通知音が鳴った。


 見ると玲奈からメッセージが来ていた。


 『葉仲さんと合流し、まもなくマスタークリスタルが保管されていると思われる、地下への入口に迫ります。松宮くんは攻撃を受けて離脱。園川くんの状況はわかりません』


 愛野は言った。


「きたでー! しのっちからや。もうじき、地下室に入るみたいやな」


 岸中は振り返ると、


「わかった。そろそろ包囲をせばめ、いつでも突入できるようにしよう」


 すると岸中は無線を取りだし、警察関係者に指示出しをはじめた。


 愛野たちの車も移動をはじめた。




   *   *




 玲奈は吹雪の中を葉仲についていった。


 園川とはまだ合流できていないが、先に進むことにしたのだ。


 やがて葉仲は言った。


「見えてきました。あの岩のあたりに、入口があります」


 葉仲が指さすその岩に向かって、玲奈は進んでいく。




 葉仲が腰をかがめて雪の上に手をかざすと、地下への階段が現れた。


 その階段を降りると、灰色の壁に覆われた広い地下室が広がっていた。


 また、部屋の中央にはプライムクリスタルの倍はあろうと思われる、巨大なクリスタル――マスタークリスタルがそびえていた。


 また、マスタークリスタルの手前に、白い法衣を着た黒部の背中があった。


 そこで黒部はゆっくりと振り返った。

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