第5章 凍土

第48話

 園川たちは警視庁の大会議室にいた。


 会議室には20名ほどの警察関係者が着席し、園川たちは最前列の窓側に並んでいた。


 園川の右側には玲奈と葉仲。その後ろの列に倉神社長、松宮、愛野がいた。


 会議室の正面の席には岸中と警視総監の勝山が座っていた。


 勝山は立ち上がり、


「ただいまより、輪神教会関連事件の、臨時捜査会議をはじめます」


 次に岸中が、資料を正面のスクリーンに投影しながら語った。



   *   *


 ついに輪神教会の実質的な現指導者である、黒部容疑者の逮捕状が出ました。


 輪神教会の創設者であり、『代表』こと篠原誠也さんに対する逮捕監禁致死傷罪の容疑です。


 潜伏先に出向き、すみやかに黒部容疑者を確保するものであります。


 また、黒部容疑者は、ヘヴン・クラウドの環境を悪用し、洗脳により不正に利益を得ていたと見られています。


 その洗脳に利用されるヘヴン・クラウド内のオブジェクトの破壊を同時に達成します。


 そのため、本日は専門家であるクラカミクリエイティブ社のみなさまにもご同席いただいています。


 異例のことではありますが、ご了承ください。


 静岡県の黒部の潜伏先にはわたくし岸中を主任捜査官とし、2名の捜査員が随行します。


 そこで、県警とも連携をとって黒部の身柄確保をおこないます。


 一方、マスタークリスタルがあるとされるヘヴンである『凍土』には、クラカミクリエイティブ社のみなさまが入ります。


   *   *



 そこからも岸中は直近の作戦行動について説明した。


 最後に岸中は、


「それでは、質問などがなければ、私からは以上となります」


 と締めくくった。


 しばらくすると、岸中の横の勝山が立ち上がった。


「いまや当該教団は反社会勢力として非常に危険な集団と言わねばなりません。一刻も早く黒部容疑者を確保する必要があります。そのいかんはみなさまの手にかかっています。ぜひともご協力ください」


 園川が横を見ると、玲奈は張り詰めた表情をしていた。


 放たれる直前の引き絞られた弓のような気配を帯びており、園川は恐怖すら感じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る