第47話

 警視庁でのミーティングのあと、日曜日に新たな不自然死の犠牲者がでた。


 犠牲者は長野県に在住の女性だった。ヘッドマウントディスプレイを装着したまま亡くなっていたのだという。


 自身で多額の銀行預金を引き落としたらしいが、その金の行方も不明。亡くなる直前の言動には異常が見られ、しきりに『ヘヴン・クラウド』の中の神の話を知人にしていたのだという。




 園川はSNSで流れてきたそのニュースを、苦々しく見た。


 また、気になる投稿も流れてきた。


 『ヘヴンズシャドウが活動再開? メンバーの目撃情報あり』


 おそらく、これまで『ブルーエッジ』を使って活動したことの端々が、他者の目に留まったのだろう。それに、知名度のあった別のメンバーも他の場所で目撃されたのかも知れない。




 月曜になって出社すると、玲奈が早々にミーティングを開いた。


 ミーティングルームには、園川、玲奈、愛野、松宮が集まった。


 詳細は知らなかった様子の愛野と松宮も、なにかがはじまるのを感じたのか、緊張した面持ちだった。


 そこで、玲奈は言った。


「ついに、黒部の居場所がわかった。それに、証言と証拠が出たから、逮捕できると思う」

「なんやて!」


 とは愛野だ。


 そこで玲奈は、葉仲から聞いたマスタークリスタルのことなどを説明した。




「でも、まだ安心できない。黒部が仮に逮捕されても、マスタークリスタルが隠されたり、別の者が引き継いだり。あるいはなにか、報復として、教団がなにかをしでかす可能性もある」

「あー、せやったら、どないせいゆうねん……」

「警察と連携して、黒部の身柄をおさえると同時に、マスタークリスタルを破壊する。それをやるしかない。わたしたちが」


 松宮はうんざりとした声で言った。


「またそんなんですかー。どんだけやらせるんですか。あー、しんどい」

「ごめん、松宮くん。うまくいったら、なんでもご馳走するから」

「いや、そういう食いしん坊キャラじゃねえから! デブあつかいしないでくださいよ、マジで」

「父のこともあるけど、それよりも、日本中に被害者が出ているの。お願い! 日本を、世界を救うために、松宮くんの力が必要なの」


 園川は玲奈を見た。どこまで本気のセリフなのかはわからなかった。


 松宮はテーブルを叩いた。メガネが照明に輝いた。


「やりましょう。世界の平和のために、本気を出すときがきましたね」




 その3日後の木曜日、玲奈あてに岸中から電話があった。


 黒部の逮捕状が出たのだという。


 さっそく、警視庁で関係者による合同作戦会議をおこなうことになった。




 第4章 包囲網 おわり

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