第46話
園川は警視庁からの帰りの地下鉄に乗っていた。
となりの玲奈は、真っ黒な車窓の外をぼうっと見ていた。
そのとき園川はSNSの投稿をなんとなく流して見ていたのだが、気になるやりとりがあった。
『輪神教会はテロ集団。黒部とか篠原とか、全員アタマおかしい。人殺し集団』
それに対して、信者と思われる人物が懸命に反論していた。
『輪神教会は世間で言われる不自然死とは一切関係ありません。証拠はあるのですか?』
そこで玲奈は、
「どうしたの? なにか気になることでもあった?」
「ええ」
と、園川は投稿について説明をした。
玲奈はため息をついて、
「輪神教会が、いろいろな人に迷惑をかけてしまってるのね。……また、悲劇が起こらなければいいけど」
「また?」
「あ、ええ。そうね。少し前の話だけど。深田さんっていう信者の方がいて」
それから玲奈は周囲を見回してから、おさえた声でこんなことを語った。
4年ほど前のことだ。
深田紗季という信者がいた。あるとき彼女は輪神教会を批判するSNS上の意見に対し、強く反論をした。
しかし、逆恨みを買って、氏名や住所を特定されて晒されてしまい、さまざまな嫌がらせを受けた。
そして深田は最後に、みずから命を断ってしまったのだという。
玲奈は寂しそうな目で、また車窓の外の暗闇に顔を向け、
「わたしたちは、深田さんを守れなかった。あんなに教団を、かばってくれたのに……」
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