第16話

 園川は影を連れて神殿の外に出た。


 襲撃者は5名以上。いずれも武装しており、すでに教団側の警備の兵士の数名がやられたということだ。


「やっときたな。退屈して死ぬとこだったぜ」


 と、影は愉快そうな声をだした。


 神殿前の石畳の広場に、人々が集まっている。


 巡礼路からも人々がなだれこんできていた。


 先ほど園川がぶつかった、面長の男もいた。


「きたぞー!」


 とだれかの声がする。


 そのとき、森の木陰からある集団が飛びだしてきた。集団は巡礼路におどりでると、人々を突き飛ばし、広場へとせまってきた。


 6人組で、いずれも武装している。


 革鎧や甲冑を身に着け、手には金属製の剣や斧を持っていた。


 最奥には防具を身に着けていない、暗赤色のローブの者もいた。


 そこに教団側の兵士が雄叫びをあげてむらがる。


 しかし『敵』どもはおそるべき手練らしく、兵士たちは端から吹き飛ばされ、斬られてゆく。


「慎重にいこう」


 と、園川は影に言った。


「知るかよ」


 と、影は赤い刀身を鞘から抜いて、飛びこんでゆく。


 園川も電磁ナイフを起動して前に出る。電磁ナイフからはいつもの細かな振動が伝わってくる。


 そのとき、斧を手にした男が園川へと迫ってきた。


 園川は男が振りおろす斧をかわし、電磁ナイフを男の胸に突きだす。――すると男は叫び声をあげて前かがみに崩れた。


 横を見ると、影も刀をふるっていた。


 流れるように敵の攻撃をいなし、間断なく斬りこんでゆく。




 気がつくと残りは2名になっていた。


 長身の剣士と、ローブ姿の女性らしき体型の者が残っていた。


 剣士はすでに刀を折られ、腕に怪我をしており、敗色濃厚だった。


 影はやや離れたところで周囲を警戒していた。




「いったん退きましょう!」


 と、剣士の男が背後のローブ姿に言った。


「いえ、まだ……」


 と言い返したローブ姿は、その声からして、やはり女性のようだった。


「仕方ありません、早く!」


「だめです。きょうこそは……」


「ここで行動不能になってペナルティを受けたら、もう間に合いませんよ。まずは、立て直しましょう!」


 と剣士は強く言い、ローブ姿の女の手を引いて走りだした。


 そこで影の声がした。


「なにやってんだ! リーダー、そいつら、さっさと片付けちまえよ!」


 剣士と女は森の方へと逃げてゆく。


 園川は我に返り、2人を追いはじめた。




 〜〜〜〜


《パブリック・ヘヴンにおける行動不能ペナルティについて》


 株式会社クラカミクリエイティブ

 業務マニュアル


 パブリック・ヘヴンにおいては、戦闘行為などで行動不能となる場合があります。

 その際は以下のペナルティが発生します。


 ・行動不能となると1分間無防備な状態となり、その後強制離脱となります


 ・該当のアバターは24時間のあいだ、あらゆるパブリック・ヘヴンにログインできません(アバターの修復コストを支払うことで短縮できます)


 ・該当のアバターは48時間のあいだ、行動不能となったパブリック・ヘヴンにログインできません(短縮はできません)

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