第2章 reboot

第8話

 金曜日の忘年会から週が明けた月曜日、玲奈は会社にこなかった。


 昼になっても連絡がつかず、会社では騒ぎになった。


 手分けをして玲奈の家族に連絡を試みたり、なんども本人に電話をかけたりしたが、進展がなかった。


 そんな中、園川がたまたま見つけたのは、こんな投稿だった。


 『ヘヴンで活動してる宗教団体の教祖的な人、ガチ美人なんですけど』


 添付されたヘヴン・クラウド内で撮影したと思われるスクリーンショットには、見知った女性の横顔が写っていた。アバターではあるが、それは玲奈の姿のようだった。


 彼女がまとう白い法衣には円を組み合わせた幾何学的な模様が描かれていた。


 背景からするとグロウバレーのようだった。――いつか遭遇したような教団のデモを見た者が投稿したのだろう。


 続けて園川は投稿を検索する。『輪神教会』『グロウバレー』『ヘヴン・クラウド』など思いつく様々なワードで。すると、こんな投稿も見つけた。


 『グロウバレーの公開説法で、新たに大主教となられたレイナ様のお言葉が聞けました』


 これはおそらく信者のツイートだろう。


 園川は硬直し、言葉をうしなった。


 本当に玲奈が輪神教会に入信したのだろうか。それも、『大主教』とかいう上の立場に?


 園川はためらいつつも、社内のチャットにツイートのURLを流した。


 その後も、玲奈が輪神教会のトップになった、というような投稿が続々と見つかった。


 翌日の火曜も玲奈に連絡がつかず、玲奈と親しかった愛野が玲奈のアパートまで朝からいくことになった。そこに、念のため園川も同行していた。


「やっぱり、おらんなぁ」


 と、愛野は眉根を寄せて言った。


 アパートのオートロックはなく部屋の前まではきたが、なんどインターフォンを押しても反応がない。


「いったい、どこいきよったん……」


 それに対して園川は首をかしげ、


「ほんと、どうしたんでしょう。隣の人にも聞いてみます?」

「せやね。しかし、この時間におらんやろ」

「こうなったら、警察とか大家さんとかに立ち会ってもらって、鍵あけるとかになるんじゃないでしょうか」

「せやなぁ。心配やけど、まあ、いったん戻ろか」


 そう言って愛野は歩きだす。園川は愛野に続いてアパートを背にした。


 そのとき、見慣れない男が近づいてきた。


「すみません。あなた方は、篠原玲奈様の、お知り合いの方ですか?」


 紺色のスーツを着た、四角い顔立ちの中年だった。

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