第6話

第6-1話 敵は特捜部 無実を晴らし、孤独な少女の依頼を叶えよ

珠希と告白した次の日…

「たまには和食の朝ごはんにしてみたよ」

珠希が、机の上に焼き魚・ごはん・味噌汁・焼きのりを並べる。

早速食べてみると、やはり非常においしい。

「やっぱり珠希の作るご飯はおいしいな」

「うん、彼女だからいつも以上に頑張ってみた。

彼女…うんいい響き」

珠希は自分で言ってうっとりしている。

真琴も連呼されと、気恥ずかしいものがある。

「でもさ、小学生の頃から好きだったなら、もう少し早く告白してくれてもよかったんじゃない?

そしたら、淡い青春ももっと楽しめたのに」

珠希がジト目で見てくる。

「それは…高校に入ったら告白しようと思っていたら、事件があって傷ついている珠希の弱いところに付け込んで告白するのは違うかなって思って…まぁ、僕も勇気がなかっただけなんだけど…」

「そうなんだ。私のこと気遣ってくれていたんだね

じゃあ、仕方ないね。仕方ない、うん」

珠希は納得すると、フフっと笑いながら納得した。

「でもこれからは、恋人同士なんだから、遠慮はいらないよ。

ど~んと、甘えてくださいな」

珠希が両手を広げて、受け止めるポーズをする。

「あぁ、なんかあったら是非頼むよ」

真琴も珠希も人生初の『恋人関係』に胸を躍らせていた。

◇桐生法律事務所

朝から胸を躍らせていると、事務所につき机に着くと、秀次郎がやってきた。

「新しい依頼が入った。依頼人は既に会議室で待っているので、すぐに向かってほしい」

「分かりました」

真琴と珠希は、会議室に向かった。


会議室に着くと、そこにいたのは小柄の中学生の制服を着た女の子だった。

「君が今回の依頼人?」

「はい、西ヶ谷紬希といいます。依頼したいのは父の弁護です。

父は誰かに嵌められて、無実の罪で捕まっています

ここの冤罪対策室は、かなり優秀な弁護士さんがあるときいて依頼に来ました」

「嵌められた?詳しく話を聞かせてもらえないかな?」

「はい、父は西ヶ谷泰三といって、元文科省の大臣をやっている政治家でした」

「西ヶ谷泰三!?…ニュースで見ました! 確か、公職選挙法違反の買収罪で捕まっているんでしたね」

「はい、先日大衆居酒屋『亀丸』で、地元の知人に箱詰めの和菓子をプレゼントしていたんです。でも、亀丸を出た際に知人達が警察に呼び止められ、警察官が箱を開けると現金100万円が入っていたのです」

「それで、その場で逮捕され、検察が捜査をしているのか

でも、確かこの事件って…」

「はい、東京地検特捜部が動いています」

「事件当時、文科省大臣だった政治家を逮捕して、手柄を立てようというわけか」

「はい、この事件で父は民政党を除名され、大臣の任も解かれました」

「なるほど、分かりました。早速、お父さんに会いたいので、接見に行ってきます」

「いえ、父は留置場にはいません」

「え?」

「父は、末期の癌で今は東京の警察病院に入院しています。今は接見禁止で、私が持ってきた荷物を警察官の方を通じで、やり取りしています」

「そうなんですね…」

「父は政治家として、清廉潔白に堅実に仕事をしてきました。

なのに、誰かに嵌められて犯罪者として命を終えるだけは嫌なんです

どうか、無実を証明してもらえませんか?」

「分かりました。では、無実を証明しましょう!

では、早速体調が良ければですが、本人にまず話を聞いてみましょう」

「ありがとうございます。あと、もう一つお願いなのですが…

私を調査に参加させていただけませんか?」

「それは構わないですが、今日のですが学校は?」

見たところ、中学生に見えるし、今日は平日だ。

「そうですよね、ではこれを見てください」

紬希が腕をまくると、そこには複数の切り傷・打撲痕が数多く並んでいた。

「この事件で、私はいじめにあい、怖くて学校に行けなくなってしまったんです。

私は人が怖いです。だから、この事件にケリをつけて、早く復活したいんです」

「そっかぁ、分かった。じゃあ、一緒に調査しよう

珠希も構わないかい?」

「もちろんOKだよ」

かくして、弁護士2名と中学生1名のトリオが結成された。


◇東京警察病院

西ヶ谷泰三の部屋に入ると、そこにはニュースで見たいた時よりもだいぶん病気でやつれた姿であった。

「そうか、先生が弁護を引き受けてくれるのか。私も、娘を犯罪者の家族にしてしまうのだけは、どうしても避けたいんだ。俺は無実なんだ。どうかよろしくお願いいたします」

泰三は、ベットの上で深く頭を下げた。

「分かりました。一緒に無実を証明しましょう」

「一緒に頑張りましょう」

珠希が泰三の手を取って、勇気づける。

「早速ですが、事件の話を聞かせてください」

「あれは、私の政治家人生20年を記念して地元の応援者や知人に和菓子の箱を渡して回っていた時のことだった。

私は和菓子屋から受け取った箱を、一切触ってないのだが、なぜか中には100万円が入っていて、私は逮捕された」

「箱には、一切触っていないんですね?」

「あぁ、封を開けたのも警察だ」

「確かに、調書に書いてある。未開封の菓子箱を警察官が開け、中身を確認と…でも、熨斗紙だけならお金を入れた後に再度巻き直すことも可能だよね…」

「いや、それはない。ここの調書に書いてあるけど、お菓子と一緒に封をされた中に金が入っている」

「そうなると、箱を作ったこの和菓子店が怪しいね」

「そうなんだ。だから、検察は俺が和菓子屋である『鶴吉』に依頼し、買収用の菓子箱をつくったと考えている」

「でも、おかしい点があるんですよ」

弁護人の付き人として特別に入ってきた紬希が恐る恐る手を上げ、意見する。

「このお金が入っていた場所には、もともと羊羹が入っていたんですよ。

つまり、羊羹を抜いてお金を入れたってことなんですけど、鶴吉の羊羹は配った人の多くが大好物で、もし仮に父や秘書が犯人なら、買収する相手の大好物を抜いて箱を渡したことになるんですよ」

「なるほど、確かに調書を見ると、他に羊羹の部分がお金を入れ替わっているし、他に羊羹が入っている形跡もないね」

「つまり、泰三さんの応援者や知人のことを知らない人の犯行の可能性があるわけだな」

「一番怪しいのは、鶴吉の店員だね。早速調べにいこう」

真琴と珠希は、泰三にお礼を言って部屋を出た。そのあとを追うように、紬希も一緒に出てきた。


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