時間
見捨てられたのが先だったか、見捨てたのが先だったか。
わたしはあなたを許してあげよう。そう言ったら、あの人はわたしを許してくれるだろうか?
なぜいまさら。わたしが見捨てたのが先なのだ。わたしの方から手を離した。そのことを、あの人は許してくれるだろう。しかし、わたしが許すことを、あの人は決して許してくれない。わたしは、許すことを許されていない。わたしの方から手を離したのだから。
あのとき、わたしの時間が停止して、今もまだ、あのときがつづいている。何も始まらない。何も終わらない。永遠の今日がくり返され、同じ顔の同じ鳥が、同じ時間に鳴く。
あなたと手をつないでいたときだけ、時間が流れていた。あの手を離したのは、本当にわたしなのだろうか? しっかり握られていたのに、どうしてわたしから離すことができたのか。あなたから手を離したのか? わたしがしっかり握っていたのに。
見捨てられたのが先だったか、見捨てたのが先だったか。
謝りたい。謝ってほしい。
誰に? 何を?
答えはない。どちらから謝ればいいのか、正しい順番がわからないから。
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