第114話 生存確率99.9%⑥
キャタピラーダンジョンは5階層ではない。
更に下に、そして横にも広がっている広大なダンジョンだった。
(これ何階層あるんだろ)
複雑に広がる通路のせいで正確な階層数は分からないが大きさで言うなら、今攻略されている広さの5倍以上だった。
そして本当の最下層であろう場所には
【エンシェントクイーンキャタピラー】
の反応。
この瞬間物凄い殺気が地下深くから飛んでくる。探知スキルでつついてしまったせいなのか脊髄反射のように返してきたのだった。
(あらららら)
たぶん私に向けたのだろうが、このダンジョンにいた冒険者全員が受けてもおかしくないぐらいの殺気の強さだった。
そしてもう1つ
【スミルナ・スターリング】
名前が似ていて家名のもあるのでたぶん行方不明のスミナだろう。もう1人のグリーンもいるかと思ったがいなかった。
バジェットとハクレイは近くにいたので飛び起きたようにテントから出てくる。
辺りの冒険者たちも騒ぎ始めていた。
「何かありましたかケーナ!!」
「どこです??」
ちゃんと反応して対応しようとする私の仲間は優秀だなと関心しつつ。
「モンスターの気配はしたけど……」
「とても強い殺気です。それも僕が今まで生きてきた中でも一番強いかもしれません。上級、いや特級はある可能性も考えられます」
バジェットは警戒と興奮をしている。エンシェントクイーンキャタピラーはそれなりに強いのかもしれない。
辺りの冒険者たちは上の階層へと避難を始めている。
それを促しているのはあの先遣隊として来ていたベテラン冒険者たちだ。バジェットと同じ様にモンスターの強さを殺気で読み取って危険を知らせている。
「ケーナ、僕たちも一度上の階に行こうか」
「んーちょっと待ってって」
見つけてしまった以上放置はできない。
それに、もし下層のダンジョンが知られれば、初心者向けのダンジョンとして機能しなくなってしまう。特級モンスターがいればなおさらだ。
(まずは害虫駆除から)
たすモードを発動させ探索範囲に反応する、うじゃうじゃいたキャタピラーどもを一掃していく。
スミナはいったん空間収納内へと保護。
残る反応はエンシェントクイーンキャタピラーのみ。
「ハクレイとバジェットはここで見張りをしてて」
「どういう事でしょうか?」
「殺気の正体が分かったんだけど、下への行き方がいまいち分からないんだよね。だから穴掘って会ってくる」
「ハクレイも一緒に行きます!」
「でしたら僕も行きますよ」
覚悟はあるようなので、強敵との対峙をさせて見ようと思い2人とも連れて行くことにした。
「わかった、一緒にいこう」
穴を掘るのもスキルアブソーブを使うだけ。地面めがけ発動させくりぬくように掘って一気に最下層まで繋げた。
あっという間に出来上がる大穴に、言葉の出ない2人。
底の見えない深淵を恐る恐る覗いている。
「松明落してみますよ」
バジェットが投げ落とした松明は闇に吸い込まれるように消えていく。底に落下した音も届いてこない。
「さっ、ここに入るよ」
「「え?」」
「ほらほら入った入った」
同時に背中を押して穴に落す。
キャーだのワァーだの情けない悲鳴があっという間に聞こえなくなっていった。
続いて穴に入る。
落下中バジェットは意識を保っていたが、ハクレイは完全に気を失っていた。
底ギリギリで浮遊魔法を使い、ふわりと到着。
「一体なんの真似ですが? 本当に死ぬかと思いましたよ」
バジェットはちょっと怒っている。
「ごめんね、躊躇してる時間がもったいなかったから。ただ、行くって言ったのはバジェット達だよ」
「そ、そうですけど……」
こんなことになるとは予想できないのは仕方ない。
「ハッ! まだ生きてる」
ハクレイも気がついたようだ。
松明だけでは、最下層の地形の把握ができない。仕方ないので魔法で大きな光源を作った。
辺りを昼のように照らすと、キャンプを設置した場所の何倍ものある空間と、殺気の発信源であろうジャイアントキャタピラーの何十倍も巨大な薄緑の芋虫を照らし出していた。
どこが頭でどこが尾なのかも分からないぐらいの大きさで、蛇のようにグルグルと蜷局を巻いている。
エンシェントクイーンキャタピラー、鑑定するとレベルは189。
初心者向けのダンジョンにいていいレベルではないことは確かだ。
あちらも気づいたのだろう明確な殺意が込められた殺気をこれでもかと飛ばしてくる。
その殺気に当てられてハクレイはまた気を失ってしまった。後ろに倒れるギリギリでゼンちゃんがクッションのように体を変化させて受け止める。
「ハクレイ大丈夫?」
⦅ハクー! しっかりしろ⦆
そんな状況を見て前に出るバジェット。
「ケーナ、僕があの巨大キャタピラーの注意を引くので、その隙にハクレイを連れて逃げてください」
恐怖で震える声を出しながらも、男気溢れる言葉を放つ。
これで彼氏持ちで無ければグッときてしまうのかなと思いつつ
「ちょっと、これは私の獲物だよ。バジェットは後ろで良く見てて」
このデカブツをどう倒すかだけど、せっかく他人がいなくて、仲間だけが見ていてくれるので私の力を披露することに。
ただ物理攻撃も魔法攻撃も耐性とぶよぶよぬるぬるした体質でまともにダメージが入りそうには無いのは分かっていた。
「まずは」
グラビティバインド。
デカい相手にはより効果が出やすい重力拘束。自重が重すぎて唸り声すら満足に上げることができず、
「次は」
アブソーブによる熱吸収。
エンシェントクイーンキャタピラーが持つ体温を限界まで奪う。表面は霜に覆われ冷気がこちらまで届いてくる。
鑑定眼で状態を確認。HPはグングン減っているようでもう間もなく0になる。
殺気はもう放つことができず、動くこともできない。
「ケーナ、これはいったい」
「巨大キャタピラーの氷漬け。私の勝ち!!」
イェイ!
とブイサインをしてみるも伝わっておらず、こちらでの勝利のポーズを改めて考える必要があることに気づいたのだ。
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