第111話 生存確率99.9%③
さわやか好青年という言葉が似合うほんのり甘い香りのする男と、その後ろに隠れるように女の子がいた。
「ねぇ君たち、魔法使いの女の子見なかった? 黒のローブを羽織ってるモネモっていう子なんだけど」
「見てないですけど、はぐれたのですか?」
「そうみたいなんだよね。どこの分岐ではぐれたかも分からないんだよね。もし見かけたらグリーン達が探してたって伝えといて、えっと」
「ケーナです」
「よろしく頼むよ、ケーナ」
グリーン達は用が済むと、また他の冒険者に聞き込みしていた。
たまには人助けぐらいしとくかと思い、ダンジョン全体に探索スキルを使う。
ほとんどの反応はジャイアントキャタピラー、はぐれているということで単体の反応に絞ってみるがモネモは見当たらない。
仕方ないので最下層から徐々に総当たりをしていく。
(モネモ、モネモ、モネモ、モネモ……)
「んーー?」
「どうしたの。ケーナ? 具合でも悪いですか?」
うなった声にハクレイが反応する
「今、あのグリーンって人に聞かれた子なんだけど。もうこのダンジョンにいないかも」
「!? そう、なのですか?」
「うん、なんでだろ。迷子になって先帰っちゃったのかな」
「それでしたら、出入り口の受付嬢に聞けば記録で分りますよきっと」
「僕たちはもう引き返しますから先に確かめてみましょか」
帰りはまた別ルートでジャイアントキャタピラーを駆逐しながら進んでいき、無事出入り口までたどり着いた。
そこで帰還報告をするついでに受付嬢にモネモの帰還記録があるか聞いてみることに。
「えーっと、モネモさん。帰還してますよ。あ、確かはぐれて1人になったって仰ってましたね」
「あ、そうだったんですね。無事で良かった。中でその子のパーティーメンバーが探してたんですよ」
「珍しいですねはぐれちゃうなんて」
「確かにそうですね」
私が後衛で列の後ろにいたので分かるのだが、キャタピラーダンジョンではぐれるのは難しい。スキルなんて使わなくても声が通るし、足音だって良く聞こえる。松明の光を追えばいいのでどうやってはぐれたのかが気になった。
「ねぇ、ハクレイ」
「なんでしょうか?」
「凄く浅い水たまりに溺れるとするならどうすればいいと思う?」
「え? いったい何を言ってるんですか? そんなの無理ですよ。それとも何かの例えでしょうか」
「やっぱ無理だよね」
「もしできたら、それはスキルですよ」
「そんなスキル嫌だよ。使い道に困るし」
宿に向かいながらモネモが何ではぐれたのか気になっていた。
使い道のないスキルなんて存在しないとは思うのだけど、自分自身にデバフをかけるスキルが存在することは知っている。私の場合 手加減の達人 は常時発動状態だ。
「ツインが1部屋しか空いてないそうですがいかがいたしましょうか。僕は外でも構いませんよ」
「いいよ。バジェットが気を使わなくても一緒に泊まろうよ」
この日は運よくギルド提携の宿が空いていたのでそこに泊まることにした。
ツインベットがある1部屋しか借りることはできなかったが、私とハクレイは2人でベットを使ってもなんとかなるし、バジェットは一緒の部屋でも安全だろうということでそこに決めた。
いつもタイムのところで贅沢をすると慣れてしまうので、そうならないようにするための訓練とも言えるかもしれない。
明日の予定について話し合い、キャタピラーダンジョンで一泊してみようとなった。
私的にはついにキャンプかとテンションが上がったがハクレイは不安そうだ。
「大丈夫とは思いますが、訓練も兼ねて見張りの交代もしてみましょう」
「そうだね。私は1人でいいよ。ハクレイの番の時はゼンちゃんも一緒に見張りしてもらうか」
「よろしくお願いします師匠」
⦅おう!⦆
今日はコレといって出番のなかったゼンちゃんだが、いるといないとでは安心感が違う。
1回だけ戦おうとしてゼンちゃんが前に出たが、ジャイアントキャタピラーが物凄い勢いで逃げてしまうのが理由だ。そのせいで戦闘の訓練にならないのだ。
「では明日も早朝からダンジョンに入りましょう。よろしくお願いします」
その後自由行動となり、バジェットは買い出しに、私とハクレイは食事に出かけた。
食事をしながら、ゼンちゃんとハクレイは戦闘について色々反省会をしていた。十分凄いと思っていたが、ゼンちゃんから見ると隙だらけだそうだ。
(ゼンちゃんスライムなのにやたら戦闘に詳しいな……)
「私もゼンちゃんに特訓してもらうかな」
⦅おめぇはつえーからでぇーじょうぶだって⦆
「私も剣とか弓とか使いたい!」
⦅はぁ、わかってねーなぁ。その拳は、剣にも槍にもなりえるし、弓使うよりも魔法の方がいいに決まってんだろぉ⦆
断られた。
帰って来た時には既にバジェットはベットで熟睡中。ダンジョンでは先頭に立って気を張って疲れていたのかもしれない。
明日も早いので、ハクレイと一緒のベットで寝ることになったのだけど、ぎこちなさを出してくるハクレイ。
「もうちょっとこっち来て、ベットから落ちちゃうよ」
「は、はい!」
お互いの肩が密着するほどでないとどちらかが落ちるかもしれない。その心配をしていたのだ。
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