第105話 魔の誕生日①
翌日は、拠点が決まったので、こんどは拠点をギルドに登録しに行く。指名依頼などがある場合は依頼書を送ってくれるらしい。
宿ではなく、家を持って拠点とするとその町のギルドからの印象も良くなると言われている。信頼関係を築けるということかもしれない。
ギルドに入ると待ってましたと言わんばかりに1人の受付嬢が駆け寄ってきた。
「ケーナ様ですよね?」
「そうですけど」
「これは大切な招待状です。受け取った証明としてこちらにサインをいただけますか?」
招待状1つでここまでするのかと思うほど。
「その中の手紙は必ず読んでくださいね」
「はい、そうします」
いったい誰からの手紙なのかと、封筒の裏を見ると封蝋にあるシンボルがカスケード家の家紋だった。
ちょっと焦りながらもここでは開封できないと思い、そっと空間収納に忍ばせた。
登録の手続きを終え、急いで屋敷に戻り開封してみる。
なにやらつらつらと書かれていたが要約すると
次期魔王ケーナ様へ、カスケード家三女エーナ・カスケード13歳の誕生日へのご招待します。
ということだった。
誕生日近いことなど知っていたが、私には関係ないと思っていた。
(どうしよう。どうしよう)
動揺で腰が抜ける。
私の行動によっては現魔王に迷惑がかかるかもしれないと思うと、この辺境伯の招待もむやみに断れなくなる。
これを受け取った時点で返事などしなくても、行くことが決まってしまっているようなものだ。
(受け取りのサインはこういうことだったか)
詐欺ではないが罠にかかってしまったような感覚になる。
7日後にせまった誕生日。とは言え予定など未定なので行けないことはない。
誘拐事件以降、私の顔が広まってしまったのでエーナとケーナの顔が一緒ということがバレている事も考えると、今更顔を変えるわけにはいかない。
(んー、お面でも付けていくか?)
「どうしました?唸っていたようですが」
悩んでいる様子を気にしていたハクレイが心配して声をかけてきた。
「ハクレイにお手伝いできることがあれば」
「ねぇ、私の代わりに次期魔王してくれない?」
「え? ケーナが魔王になることは聞きましたが。ハクレイに代役などできません」
「そうだよね。無理言ってごめん」
「ケーナなら立派な魔王になれますよ」
「今回だけは魔王になりたくないんだよ。この招待状の主とはちょっと顔を会わせたくなくてね」
「誰なのです?」
「カスケードの領主。そこから招待状が来ちゃって」
「断るに断れないということですか」
「そうなの」
「でしたら、ハクレイは従者としておともいたします」
「一緒に来てくれるの?」
「もちろんですよ! ちょっとでも役に立てれば嬉しいです」
ハクレイが一緒というだけで心強い。
ここは意を決して行くしかなかった。
誕生日までの数日間の間に、急いで当日用のドレスや小物を買ったり、送り迎えの竜車を手配したり、そして私から私へのとっておきの誕生日プレゼントを用意して最低限の威厳を保つためにお金を使いまくった。
そして当日。
「結構遅れてますけど、大丈夫でしょうか?」
「いいのわざと遅らせてるんだから」
「誕生日プレゼントは持ちましたか?」
「大丈夫。全部空間収納に入れてあるから」
「では出発してください」
拠点からカスケード家まで同じ町にあるのだから歩いてだって当然行ける。
それでも竜車を使うのは見栄でしかない。
到着すると既に多くの馬車や竜車が家の周りに停めてあり、予定通り誕生会は既に始まっていた。規模は大きくないと聞いていたが会場には結構人が集まっているようだった。
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