2章
2-1そんな話
そんな夢を見た。
(現実に起こっていることのようだったけど、確かに夢だった。
目が覚めてしまったのだからこれは夢に違いない。)
さくら ひみ
それが彼女の名前。
今日はしごとが休みだからゆっくり昼寝をしていたのに。変わった夢を見たせいでどっとつかれがたまった。
しかも彼女はまだ鮮明に夢の内容を覚えている。
そしてなぜかこれは忘れてはいけない気がした。
(忘れないうちにメモを取ろう。)
ひみは机の上のメモ用紙を取ろうと動いた。
すると何かが足に触れた。
机にうつ伏せになって寝ている彼に。
すやすやと眠っている。
つくし けい
幼馴染。
(ゲームを2人でした後、昼寝をしたんだったっけ。
(確か対戦形式のゲームをしていて負けすぎて私が不貞腐れて寝ると言ったんだった。)
ひみが忘れてしまうほどにその日みた夢はよくできていた。
「おいー。起きて。」
ひみは自分も今まで寝ていたくせに彼を揺さぶって起こした。
「なに?」
眠そうに目を擦りながら彼は顔を上げた。
「ずいぶん寝てたね。そろそろ起きないと夜眠れなくなるよ。」
「そうだね。ひみがあまりにもぐっすり眠ってたもんだからつられて寝ちゃったよ。」
「ごめんごめん。」
「今度は何する?」
「たくさん寝たから元気になっちゃったよ。」
「お散歩でもしに行こうか。」
彼は立ち上がった。
外は夕焼けで赤く染まっていた。
「人ってあったかいよね。」
唐突に言った。
「どういうこと?」
「いや、独り言だから気にしないで。」
「なんかあった?」
「なんもないよ。なんもなさすぎてつまらないくらい。」
「ごめん。」
「なんで謝るの?」
「つまらないんでしょ?どこか行く?」
「君のせいじゃないよ、これは全部私の責任だよ。」
「退屈凌ぎに外に行こうか。」
「そうだね。外に出よう。」
一歩外に出ると目が覚めた。
誰もいない平日の昼、そんな中二人で歩く。
ひみはなんだかすごく開放感を感じた。
自由になった感じがした。
コンビニに行ってコーヒーを買い、そしてそのまま少し歩いてみた。
すると2人は新たな発見をした。
それは木々に囲まれた公園。
ただそれだけ。それだけだったけれど。
「こんな場所あったっけ。」
ひみもけいもあまり外を歩くことはない。
こんなところに公園があったとは知らなかった。
確かにたまに通る道とは逸れたところにあった。
ひみとけいは二人でその公園に入った。
しかしひみはそこに足を踏み入れた時なんだか不思議な気持ちになった。
とても空気が綺麗で、空気が美味しいとはこのことだと思った。
「なんか凄い場所だね。」
その公園にはブランコと小さな滑り台。
そして、中心に大きな木が堂々と立っていた。
ひみとけいはその木に吸い寄せられるように近づく。
真下から見ると凄い迫力だった。
(こんなに大きな木が生えているのになんで気づかなかったんだろう。)
ひみはけいの方を見た。
「けい?」
けいも上を見上げていたが、その表情は何か考え事をしているようだった。
「ねぇ。けい?」
私はけいの肩に触れた。
すると、けいは驚いてひみのほうをみる。
「あっ、ごめん。なに?」
「いや、どうしたの?何か考え事?」
けいはひみの目を見て言った。
「俺さ。なんかこの木見たことあると思って。だけどこの公園には来たことないんだ。この木のことだけは何故か見たことがあるって思って。そんでさ。お前に触れられたときに思い出したんだけど、この木、俺が見た夢の中で出てきた木だ。だけど、その時は森の中にあって。俺さそこで何かと戦ってたんだよ。それは何か思い出せないけどさ。とにかく。」
けいはひみの腕を掴んだ。
「早く家に帰ろ。なんか、良くないことが起きる気がする。」
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