Case6 鼠谷 銀子 40歳♀【回答2】
一瞬何を言っているのか分からなかった。この一言余計な専業主婦が、ものすごい犯罪者?
確かに、これまで、森繁さんとか、明神さんとか、榛葉さんとか、犯罪に片足突っ込んでいるような、危険な目的に応用している人はいた。
田中係長の切迫した様子は、それを上回る危険を
すぐに一度電話を切り、鼠谷さんに適当な理由をついて、一旦その場を退散した。
そして100メートルほど離れたところで、田中係長にリダイヤル。
『恋塚ちゃん、ごめんな』
「で、どういうことなんです?」
『前さぁ、美根藤夜さんのとこ行ったじゃんか』
「美根さん?」
わりと最近のことだから覚えている。あの夫人がどうかしたのだろうか。
『美根夫人はもう死んでいる……、いや、あのとき既に死んでいたんだ』
「……」
田中係長の発言の意味がぜんぜん分からず、聞き返すこともできず茫然自失。
『もしもし? もしもーし!?』
係長の呼びかけで我に返る。
「あ、すみません! わたしの理解が追いつかなかったもので……」
『こんなの追いつくわけあるかい。俺だって、意味不明でようやく事態を飲み込めたんだ。説明するとな、こないだ訪問したときに話した美根さんは、
そう言われてもまだ分からない。話の全容どころか、入り口から分からない。
「鼠谷さんの肉体を借りた美根さん? たしかあのとき──」
一生懸命、美根さん宅訪問のときのことを思い出す。あのとき、美根夫人(と思われた人)は、ある死者の魂を憑依させていると言っていなかったか。
『ごめん。順番に話そう。美根夫人と鼠谷銀子は魂の貸付の契約を交わした。鼠谷の肉体に美根さんの魂を乗り移らせたんだ。理由は不明。審査書類の理由なんて所詮あてにならないからな』
ということは、この2人は
『しかし、どういうわけだか、憑依しているときに美根夫人の肉体だけが滅んでしまった。憑依者の死亡申告書があったんだよ。でも、ここでも審査課の
「えええ?」
わたしは街中にも関わらず思わず大声を出してしまった。榛葉医師で、憑依者の肉体を滅ぼす企みがあったのを未然に防いだが、既に現実に起きていたというわけか。
『結局、美根さんの魂のその後をちゃんと調べずここまで来たわけだが、俺たちが訪問したときに対応した夫人は、間違いなく40歳のおばさんではなく、高齢者だったな? つまり、美根さんの魂は鼠谷の身体で共存し続けているということになる』
改めて聞いて、恐ろしい話だと思った。言い換えれば、死にそうになったときに憑依して魂だけ移してしまえば、永遠に『生き残る』ことが理論上可能となるというのか。
たとえば、世界に名を
『しかし、その後も美根夫人を名乗る者からの魂の貸付申請があったにも関わらず受け付けてきたということは、いかに審査課がズボラだったかよく分かったよ。それでいて、あのときの美根夫人を騙った鼠谷が借りていたのが、一体誰の魂だったか秘密裏に調べたら、それがまた驚きでよ』
「え? 誰なんです?」
『伝説の怪盗、アルセーヌ・ルパンだ。あのとき回収手続きをしたけど、その後結局また手続きをして同じ人物を憑依させている。つまり、鼠谷の肉体には、美根夫人と、ルパンが憑依している』
わたしは驚きを隠せなかった。1つの肉体に複数の魂を憑依させることができるなんて。
そして、思い起こせば美根夫人の家には数々の宝石があったことも。
「美根夫人の家にあった宝石は、みんな盗品、いや、盗品と引き換えに手に入れたものかもしれない、ってことですか?」
『推測だがな』と言った後、一つ咳払いをして、『でも、まだこれで終わりじゃない』と付け加えた。
「え、まだあるんですか?」
『ああ。だって、今回回収対象の魂があるだろ。鼠谷自身に憑依している3つ目の魂。そいつがまた、スゴい奴でな』
怒涛のように流れてくる情報量に圧倒され、なかなか頭が追いついていかない。
つまり、今の鼠谷銀子さんには、回収対象から漏れた美根夫人、前回田中係長と美根夫人宅を訪問したときに回収したものの再び憑依させたアルセーヌ・ルパン、それから今回回収しようとしている死者の魂。計3人の死者の魂を取り憑かせていることになる。
「誰を憑依させているんです?」
『アルセーヌ・ルパンのライバル。シャーロック・ホームズだ』
再三再四の驚き。言わずとしれた名探偵。
『シャーロック・ホームズを憑依させた奴が現れて、そいつに犯行を阻止されないようにするために、自分にシャーロック・ホームズを取り憑かせることで、
☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆✩⭐✩☆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます