魔法使いは獣使いと会ったことがある

 やぁ、諸君。魔法使いAです。今日もまた冒険者ギルドで暇を持て余している。本当にめっきり仕事が入らないあたり、この国の治安がとてもいいことだと言い聞かせてはいるが、私達の収入は何処へといった状況だ。冒険者だから副業さえもできない。どうにか路銀を稼がなければ……

「ほんと、ガロンさん暇ですよね他にやることにないんですか」

「そういう、あんたもいつも受付譲してるが?いつ休みあるんだ?」

「私のことは気にしたらだめです」

そういうやり取りを毎回する。それくらい暇なのだ。今日は比較的冒険者も多い。普通依頼も実はあることはある。ただ私がしたい依頼がなかなかないのだ。今さっき、通常依頼が満了したというアナウンスがあった。仕事が少ない分埋まりも早いのだ。今そこの君仕事を選ぶんじゃないよとかツッコミを入れてくれたな?私だってそうは思っているさ、ただめんどくさいのだ。本当にめんどうくさいのだ。動くときに動くということを最近私は覚えたのだ。昔こそ我先にと色々行動していたが今もう十分にがっつくことを諦めたのだ。そういえば、冒険者といっても幅広い職業がある。まず剣士、魔法使い、召喚士、武闘士、獣使い。色々あるんだが、各々自称することが多い。魔法使いと名乗れば魔法使いだし、剣士と名乗れば剣士である。神のご加護とかそういうのは実際あってないようなもんだ。自由な職につける。それが冒険者である。魔法も鍛錬を積めばある程度はできる。その人の体質、魔力量がどうのこうのはあるのだが……その中で一番難しいと言われているのは獣使いだ。獣のとのコミュニケーションがとれ、指示ができるのだからすごい。だからこの世界はめったにみれないのだ。そんな滅多に見れない獣使いと一度出会ったことがある話でもしようか。

「そういえば、メイは獣使いに出会ったことはあるかい」

「冒険者時代に確か……いたようないなかったような……覚えてませんね。受付譲になってからは見たことはありません」

「やっぱりそうだよなぁ……あんまりいないよね獣使いって」

「そうなんだよな。しかも、俺達みたいないわゆる人と呼ばれる種族にはほぼいない」

「あーやっぱり、そうなんですね」

「そうなんだ」

そう、獣人族が獣使いに就く事が多い。ただ、自分で動いたほうが断然速いので獣使いになるという選択肢はほぼいないようだ。これは獣人族のやつから聞いた情報だ。だから間違いはない。人より優れている獣人族。人はあらゆる種族の下位にいる。ただ対等にできる唯一の技量が建国や、商品の物流、食材調理である。だから、襲われることはほぼない。まぁ色んな考えをもつ奴らはたくさんいるから一概には言えないんだが……そういう感じで成り立っている。おっと話がそれたが、獣使いの話だ。



 ある依頼で、私がハイレン王国に訪れたときだ。そこの冒険者ギルドはここの冒険者ギルドとそんなに変わらない。冒険者を対等に見てくれる国である。私が、冒険者なりたてのときはそうでもなかったんだが……まぁその話はどうでもいい。そこにある一人の獣人族がいたんだ。容姿としては、力強い筋肉隆々の狼系の獣人だった。今回はこの獣人族と同行する依頼だった。いや、正確にはその獣人族が依頼者だったんだが……ハイレン王国近辺の自然に関する調査だった。ハイレン王国は、動物と一緒に暮らしたいという者が沢山いた。犬や、猫はもちろんのこと、中には鳥を飼う輩も存在し、だんだんと範囲を広げていたらしい。そして、ある市民がこんなことを依頼してきたらしい。獣使いが使っている獣を飼いたいと。だから、この近辺の自然調査し、ペット化できる獣を探すという依頼だった。私も少し興味があってついていくことになった。

「レインだよろしく」

「ガロンです、よろしくお願いします」

レインと名乗った獣人は、姿こそ猛々しかったが、すごく丁寧な方だった。

「今回は俺が一人でやるはずだったものをこうして、ガロンと調査できるのが嬉しい。ガロンは隣国の冒険者だろうなれない土地なのに、すごいな」

「いや、私が抱えていた依頼も終わったし、暇だったので。あと獣使いにも興味があるので」

「ははは、そうだろう。獣使いはあまりいないからな。だから俺はこの道を選んだんだ」

そうやって、レインは自分の職を大事にしているようだった。そして、レインは続けた

「今回は近辺の自然調査になる。ペット可できそうな獣たちを見つける」

「そんな獣いるんですか?害獣だらけじゃないですか」

「まぁ、獣使いだからわかるんだがそれぞれの個性は俺らと何ら変わりないのだよ」

「そういうもんなんですかね?犬や猫とかは私達になついてくれたりするのでわかるんですが……」

「そうだな。でもこうして俺は、犬や猫以外に使役できている」

「確かにそうだ」

レインは、二匹の獣を使役してた。討伐依頼がでるほどの害獣がそこにいたのだった。しかも、レインにとても懐いているようだった。

「こいつらも、最初は俺に噛み付いてきたんだ。もともと俺は武闘士だったんだ」

「なんで獣使いになったんですか?」

「なんとなくなんだけどな、こいつらがなんで噛み付いてくるかを考えてしまったんだ。殺すだけがすべてなのかって思ってしまってな。10割奴らは悪だと決めつけたのは俺らじゃないかって気づいたんだ。そこから、この二匹を討伐せずにコミュニケーションを図ってみたんだ。俺らは獣人族でもともと獣たちと意思疎通ができるだろう」

「そうですね。僕らよりかは長けてると伺ってます」

「そうしたらな、言葉は喋らずとも彼らは彼らの正義があるらしい。悪いことは悪い、良いことは良いとして、襲われるから襲う。ただそれだけなんだそうだ。確かに俺らみたいに喋れても悪に染まるやつもいる。彼らは彼らで住処を作ってるだけであるとしたんだ。」

「なるほどなぁ……ただ言語能力がないから、畑を荒らしたりしてしまうそういうことか。」

「そうだな、自然界はどちらかと言うと食ったもんがちだからな。人が作った城壁等は関係ないんだろう」

「人が勝手に作ったルールだもんな……そりゃ関係ないわ」

「まぁでも、どっちもどっちだ。だから、お互い様様だな」

「確かに。そしてこの二匹?はどうやって慣らしたんだ?」

「気づいたら仲良くなってた。もともと才能があったのかもしれないな俺には」

そうやって、レインは二匹をなでながら同じような害獣がいるのではないかと探し始める。獣使いは本当にすごいなぁと感心して、俺も一緒に害獣を探した。ただ私には少し理解が及ばない。害獣は害獣でしかないから。今目の前に広がっている、狼の獣人が、害獣二匹を連れ添っているのは超絶異次元だった。いつ襲われてもわからないと内心おどおどしていたのは事実だ。

「そんなにおどおどしなくていい。こいつらは絶対に大丈夫だ。お前を襲ったりはしないよ」

見透かされていたのか、レインが言葉をかけてくれた。

ぐるるると、二匹鳴いていたがどことなく、いつも出会う討伐する害獣ではないような気がしたのも事実だ。

ちなみに、その二匹の特徴をあげるとすると、どちらも同じ種類で、きっとオスメスだろうか。もう一方のほうが身体が小さい。猪よりは大きく、狼より小さい。牙が生えており、大きい方は牙が大きくなっており、小さい方は牙もどこかしら小さい。大きい方は、きれいな縞模様が入っており、小さい方は縞模様はなく一色できれいだった。その名前は「グランボア」という害獣認定されている。

「実はな、この二匹兄弟なんだ、大きいほうが兄で小さいほうが妹なんだ」

「そーなのかてっきり夫婦だとおもった」

「夫婦ってお前。まぁでもそうだよなぁ。そろそろこいつも繁殖時期なんだよな」と兄の方をレインは指していた。

「繁殖はするのか?」

「そこまで研究が進んでいないからなんともわからん。獣使いは奥が深くまだ研究が浅いんだ。俺らもさぐりさぐりなんだ」

「ほう最先端なんだな一応……」

「一応な……まぁでも感覚でわかるんだ。こいつは多分子孫を残したいんだろうって。でも害獣を使役するのは何ヶ月もかかる。のぞみを叶えられる気がしないな」

レインはゴメンなと大きい方に伝えていた。

そして、自然調査にはとくにペット可できそうな害獣は、今のところはいないが候補として上がっている獣としては、スライム、グランボア、グランビットくらいだとレインは言っていた。その日は見つからず、調査時代は完了して、その日は終えた。

「今日は一緒に来てくれてありがとうな」

「いや、こちらこそ。すんごい新鮮だった。害獣が害獣を蹴散らしてるんだから……」

「おいおい、害獣はやめてくれよ。この二匹にはきちんと名前がある」

「あ、すまない。そうだよな」

「大きいほうが、ロアだ。小さいほうがメアという」

ロアにメア。どちらもいつも退治している害獣とは少し雰囲気は違う。人馴れしていると言うかなんというか、犬と猫みたいな感じで、レインに忠誠を誓っているような感じの雰囲気である。

「ただ、周りからはどう見られるんだ?」

「最初こそは苦労したが、現在じゃここの市民様は特に子供は興味をもって撫でてくれるよ」

「なるほどなぁ適応能力半端ないなここの市民様は。でもそうもしないとこんな依頼まずないか」

「そうだな。将来は犬や猫みたいな感じでペット化できると俺としても冥利に尽きるな。人からも獣使いがあらわれるかもな」

「俺らは無理なんじゃないか?確かに犬を連れて旅をするなんてことはあるが、あくまでも補助としてだからなぁ」

「それは犬が、補助体制が強いってだけだ。グランボアは結構な攻撃力をもっているからきちんと戦闘をこなしてくれるんだ」

「んーそんなもんか……」

「そんなもんだよ。意外と単調だよ。難しそうだと思うから難しいんだ」

それはたしかにそうだと私はうなずいた。そうして、私は獣使いと貴重な体験して自国に帰った。



「と、こんな感じだな」

「そーなんだね、レインさんとはまだ面識はあるの?」

「いや、あれ一度きりだな。今は全然みないな」

「そうなんだね。旅は一期一会ってやつですか?ガロンさん」

「そういうことになるのかなぁ」

「あ、そういえば、冒険者ギルト情報なんですけど、最近スライムをペット化することに成功したら心ですよ。ハイレン王国が」

「おーそうなんだ。レインが頑張ったおかげなんだろうなぁ」

「でも、私らからするとちょっと想像できないですね」

「そうだな、そもそもスライムをペット化してどうするんだって話だもんなぁ」

「まぁでも物好きはたくさんいますからね、もしかしたら案外癒やし力高いのかもしれません」

「そして我が国もスライムを連れて歩く未来があるのかもしれないな」

そういって今回は依頼がない一日であった。なんやかんやで緊急依頼があってもいいのに。

「俺も補助犬買おうかなぁ」

「その前に恋人見つけてはどうですか」

「お前がそれをいうんじゃない」

そうしてなんの変哲もない一日を彼女と過ごしたのだった。

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