一日目 暇で暇で死にそうな君
朝、みんなが学校に登校しているのを屋上で見ていた。いや、正直橋内さんのことを探していた。僕の学校は紺色を基調とした制服だから白衣を着た彼女はすぐに見つかった。どうやら一人で登校しているらしい。・・・なんかストーカーみたいで気持ち悪いな。そう思いながら屋上で登校してる人を見る。今日は雨が降りそうだな、なんて思っていると 急に屋上の扉が開いた。
「おはよう、少年!」
「橋内さん、おはようございます」
「名字呼びはやめたまえ。サトナだ。サトと呼んでも、、、」
「サトナさん!今日はどうしましょうか?」
急に大きな声を出したせいか変に声が裏返る。少しの間が空いたあとサトナさんは笑いだす。僕は顔を真っ赤にしてからさっきの質問はと聞くと
「そうだね、、、面白いことがしたいかな?」
「面白いことですか。急に言われてもサトナさんのことをなにも知らないので、まずはお互いのことを知りたいですね」
「それはいい考えだな。さっそくやっていこうと言いたいところだが、、、そろそろ戻らないと朝のホームルームが始まる」
そう言って荷物を持ち教室に向かう。
「それじゃ、少年また後で」
僕は手を振ってサトナさんを見送る。僕は勉強したくないので、屋上で本を
ここ黒星大学付属白星高等学校は普段生徒が使う教室がある本館、理科室や音楽室などの特別教室がある別館、各部の部室がある部室棟の3つの施設がある。本館は一年生が四階、二年が三階、三年が二階、職員室や購買などが一階に振り分けられている。サトナさんは三年の校舎から来ていたから多分三年だろう。そう考えて二階に向かう。道中、先生とあったが忙しいのか僕なんて気にせず通りすぎていった。
教室を一個一個確認して4つ目でサトナさんを見つけた。どうやらちゃんと勉強しているらしい。時々、隣のひとがサトナさんに話しかけてたり、休憩時間にクラスメイトに囲まれているところをみるに人気者らしい。白衣はさすがに着ておらずロッカーにしまっていた。意外と真面目な人なんだなぁなんて思いながら屋上に戻った。
昼休み、まだ雨は降っている。僕はおとなしく屋上の扉の前で本を読んでいるとサトナさんが来た。
「おや?こんなところにいたのかい」
「ボッチで悪かったですね」
「そういうわけではないのだが、、、お昼はとったのかい?」
「お腹すいてないので食べてないですよ。そういうサトナさんはどうなんですか?」
「私はこれからだ。ここで食べても?」
「どうぞご自由に」
僕がそういうとサトナさんは弁当を広げる。どうやら手作りらしく色とりどりの具が入っていてとても美味しそうだった。
「そう言えば、今日の放課後何て空いてるかい?」
「空いてますよ」
「私は暇で暇でしょうがないんだ。うん、それは自殺したくなるほどだ」
「何かしたいこととかってないんですか?カラオケや、ゲームセンターにいったりとかしないんですか?」
「う~ん、どれもしたことがなからなあ」
「え?」
意外だった。てっきりクラスメイトとかといってるイメージがあった。いや、それにしてもいったことがないってどう言うことなんだろう?家がよほどきびいしくない限りは人生で一回ぐらいはあると思うし、、、
「あ、どんな場所かはしってるからな。うん、行ったことがないだけだから。家が厳しくて、、、」
「いってみます?」
「いいのかい!?」
彼女の顔がパァーと明るくなる。一瞬可愛いな何て思ってしまった。僕は自分の気持ちにびっくりして話題を変える。
「つ、ついでにサトナさんのこととかを聞きいたいです」
「向かいながら話すよ。じゃ、呼び鈴なったからいってくる」
そう言ってサトナさんは教室を出た。僕も
放課後、僕はいつも通り屋上で読書をしていた。本に集中していると扉が開く音がしていた。振り返るとサトナさんが来ていた。走ってきたのか少し息が上がってる。
「少年、遅くなってすまない」
「いえいえ、部活終わりですけど大丈夫ですか?」
「大丈夫だ、問題ない」
「では、ゲームセンターに向かいますか!」
僕は立ち上がりゲームセンターに行く準備をした。
行く道中は、、、特に会話はなかった。女性と二人っきりでかけるなんてこと小学生ぶりだったせいか、何を話せばいいかわからなかった。サトナさんはというと目をキラキラさせながら町の風景を見ている。その姿は新しいおもちゃを与えられた子供のようで見ていてとても可愛かった。それもあってか無言の空間でも気まずくはなかった。
ゲームセンターに着くと目のキラキラ度合いが増していた。どうやら本当にゲームセンターにいったことがないらしい。
「何かやってみます?」
お金が溶けていくUFOキャッチャーや、MDR(まじやばいダンスレボリューション)や太鼓の鉄人などの音ゲー、パンチングマシンやエアーホッケなど色々ある。
「これはなんだ少年?」
そう言って指したのはUFOキャッチャーだった。景品は大きいアルマジロの人形だった。「UFOキャッチャーですよ。これやってみますか?」
「やってみたい!どうやるんだ?」
「お金を入れてこのレバーで景品を取るんですよ」
説明している間にサトナさんはさっそくお金をいれていた。レバーを動かし商品の真上にアームを持ってくる。
「ここからどうしたらいい?」
目を輝かせながら聞いてくる。僕はそこのボタンを押したらアームが下がりますよと教えて彼女を見守る。ワクワクしながらアームを見つめる。しかし、現実はそこまで甘くない。少し持ち上がったと思ったらすぐに落ちてしまった。サトナさんはもう一回挑戦する。だが、取れない。もう一回やろうとしたところで手が止まる。何かを考えたあとにもう一回やる、、、もう一回、、、もう一回。
ざっと1000円は溶かしたところで止める。
「えっと、、、お金の大丈夫ですか?」
「・・・あと一回だけ」
多分、あと200円ぐらいだと思いつつ静かに見守る。真剣にやるサトナさんは別人のように見えた。
「う、これとれるのか少年?」
「取れなかったら大問題ですよ。あと、次でとれると思いますよ」
「・・・少年が言うなら信じる」
サトナさんはもう一度台と向き合いアームを動かす。位置は最初と同じ真上。ボタンを押してお祈りをしている。すると
「少年取れた!取れたぞ!」
「よかったですね」
アルマジロを抱えて喜ぶサトナさんに何となく既視感があった。そう言えば昔片思いしていた子もこんな風に喜んでたっけ。僕が昔の思い出に浸ってると
「それにしても何でつぎで取れるとわかったんだい?」
「UFOキャッチャーってほとんどが確率機って言われるものなんですよ。聞いたことぐらいはあるんじゃないですか」
「クラスメイトが言ってるのは聞いたことある。ある一定の確率でアームが強くなるとか言ってた」
そう、サトナさんが目を輝かせてる時にこの台をやってる人を見かけた。だからどのくらいの確率で取れそうなのかも大体検討ついていた。
「なるほど。良くできてるな」
「まあ、本当にうまい人なんかは確率なんて関係ないですけどね。次はどんなゲームをしますか?」
「あれがやりたい!」
そこからすごかった。ゲームセンターにあるゲームを一通りやった。音ゲーやら、シューティングゲーム 、パンチングマシンなどなど色々やった。サトナさんはゲーム一つ一つのリアクションが大きくみてるこっちも楽しかった。
時間はあっという間に過ぎて気づけば夜の9時になっていた。
「一通りやりましたけど、これからどうします?」
「そうだなぁ、そしたらm」
何かをサトナさんがいいかけたときに、スマホがなった。どうやら電話が来たらしい。何かを話したあと、
「親からの呼び出しだ、、、すまない少年。カラオケはまた今度だ」
サトナさんは申し訳なさそうにいう。さっきまでのテンションとは違い、とてもしょんぼりして悲しそうだった。
「・・・そうですか、、、でもよかったですね。生きる理由できましたよ」
「! そう言えばそうだな。少年、明日はカラオケ行こう!あ、このアルマ君は君が預かっててくれ」
そう言って僕にアルマジロをわたして走り去っていく。僕はその背中をただ見つめるだけだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます