第2話 彼女は帰って来なかった
私、本なんて嫌い。読むと眠くなるし興味もない。まあ、勉強とかレポートとかで読まなきゃならない時は仕方なく読むけど。
でも子供の頃、うちに本が沢山あった。5つ上の従姉妹の読まなくなった本とかが送られてきて、それが並べられてた。あと、百科事典とか図鑑なんかもあった。
母だって自分は本なんか読まない癖に
「本を読みなさい」
なんて私に押し付けてさ。それで読むわけないじゃん。
従姉妹が本好きなんで張り合ってたのかな。私が本嫌いなの、そのせいだと思う。本好きの人とか信じらんない。
大学の生協に、買いそこねた教科書を注文しようと入っていくと、アレ?なんか雰囲気が違う。
あんまり生協の本屋になんて来ることないから、そう思うのかなとも思ったけど。なんとなく、奥の方に足が向いた。
その奥の一角だけ、なんか古そうな汚い本が並んでた。これが売り物?
こんな薄汚い古い本なんて、誰が買うんだろう。フェアかなにか。エコとかなんとかそんな風なやつなのかな。何なんだろこの区画。
その中にハードカバーっていうんだっけ、その装丁の『ピーターパン』を見つけた。確かディズニーのやつよね、この表紙の絵は。
その本を何の気なしに本を手に取った。
表紙が少し取れかけて、薄汚れてる。そう言えば、うちにこの本あったな、と思い出した。従姉妹から送られた本のうちの一冊だ。あれも表紙が取れかけて、中のページが破れたりしてた。
従姉妹のところから来たときはキレイだったんだけど、ウチで乱雑に扱ったらそうなった。
そういえば、従姉妹がウチに遊びに来て、この本を見つけて悲しそうな顔をしてたっけ。そんな顔するなら、本なんて送るなよって思ったのよね。
随分あとになって聞いたけど、叔母さんが勝手に本を送ったらしい。まあ、私には関係ないけどね。
本には値札が付いていて「80円」ってある。これ買っていって従姉妹に送ってやろうかなと思いつく。
「ありがとう〜ございました~」
なんか店員さんの声、ヘンなのと思って店を出て。
あ、そうだ。教科書の注文!って思いだして振り返ると、そこに生協が無い。
え、周囲を見回すと知らない場所だ。
何なのよ、コレ。何処よ、ココ。
海岸のような場所?あれ、森?
「さっきまで大学にいたじゃない、何なの!」
チクタク、チクタク、どこからかへんな音がする。段々、こちらに近づいてくる。何の音だろう?時計?
チクタク、チクタク‥‥。
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