第12話 春樹と彩香(3)
翌日の朝。
春樹は生温かい柔らかな感触で目覚めた。
「・・・・・・ん? 柔らかい?」
心地良い感触。
だが、あまり触ったことの無い感触。
目を開けると、目の前には彩香の顔があった。
「んー。欲を言えば、人間の姿で隣にいたかったな・・・・・・」
切実な気持ち。
春樹は願望をため息のように零した。
いやでも、愛する彼女の隣で朝を迎えられる。
これ以上は罰当たりか。
春樹は今の幸せを噛みしめ、ベッドから出ようとする。
「あ・・・? あ、あれ・・・・・・?」
だが、下半身が動かない。
これは動かないじゃない――動かせないんだ。
彩香は春樹の胴体を両手でしっかりと抱きしめていたのだ。
お互いに正面から抱き合っている。
傍から見るとそんな構図だ。
首を上げていないと、自然と春樹の顔は巨乳とまではいかない彩香の谷間にダイブしてしまう。
いったい、これはどういう状況なんだろうか。
「・・・・・・んっ」
彩香は可愛らしい声を上げ、寝返りをうっていた。
寝返りと共に彩香は、抱き枕に抱きつくような仕草で春樹を強く抱きしめる。
「ちょっと・・・? 彩香・・・・・・?」
右手の肉球でぽんぽんと彩香の頬を叩くが起きる気配は全くない。
彩香のその白い肌は相変わらず綺麗で潤いがあった。
きっと人の姿だったら、どうにかなっていただろう。
それを考えると、春樹は今ここにいる自分が犬の姿で良かったと思った。
「寝るか・・・・・・」
春樹は諦めたようにため息をつき、再び瞼を閉じる。
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