第12話
翌日。
一階。旧文化室。
人の出入りがほとんど無い廊下の隅っこの教室。
そこによろず部の部室はあった。
「こんな部屋あったんですね・・・・・・」
入学式の際の校内案内では通らなかった場所である。
「んー、去年作った部だから、余っている部屋がここしかなくてさー」
てへへへと言いたげな顔で奈央は笑って言った。
そんなお茶目で可愛い顔を安達先生に見せたら、イチコロなのに。
呆然とした顔で雅人はそう思っていた。無論、僕もイチコロなのだけど。
「でも、まさか奈央さんが部活の顧問をしていたなんて驚きですよ」
「――うん。私も驚き」
共感したのか、奈央は真顔で頷いた。
「えっ?」
「そもそも、よろず部は私が作ったわけじゃないんだよ?」
「あ、そうなんですか?」
「うん。よろず部を作るために顧問の教師が必要だったの。そこで選ばれたのが――奈央ちゃんですっ」
無邪気な笑みを浮かべて奈央は言った。
「つまり――名ばかり顧問・・・・・・?」
「っ! そ、そ、そんなこと無い・・・・・・もんっ」
目を見開き、信じられない顔で首を小刻みに振るった。
喜怒哀楽がこうもわかりやすいのは実に愛らしい。
「奈央さんは普段何をするんです?」
「んー・・・・・・。んー?」
パッと思い浮かばない様な顔で首を傾げた。
「役割無いんです?」
「あー、いや、生徒たちを見てるよ! うん。教師として生徒を監視するの!」
やっと見つけたらしく奈央は自信満々に言った。
「あ、なるほど・・・・・・」
何かを察した様に雅人は小さく頷く。
こうして、雅人と奈央は部室へと入って行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます