第2話

連合国家ミルスク①

 科学技術が産業の中核として高度に発展した科学国家。その科学技術はSF小説の中でしか存在しなかった技術を確立させるほどに。それら科学技術は素人目からは魔法と誤認するほどであり、生活水準は非常に高いものとなっている。


 ミルスクへと到着したグラス・チェレスタこと、グラスは目的地への道中にミルスクの情報資料に目を通していた。グラスの持つ情報端末にはミルスクに関する情報が映し出されており、その量は膨大で一般人が保有する規模を優に超えていた。グラスはそんな資料を片目に少し打点の高い位置から資料通りのミルスクの街並みを眺めていた。目的地に近づいたあたりでグラスは軽食を取るために小洒落た店に入り、注文を済ませると情報端末内の特秘と記された資料に目を通していた。


            連合国家ミルスク調査報告書

先日第5特務機関が実施したミルスクへの調査に関する事項を報告する。本調査理由として、以前よりミルスク内で不穏な活動家による国家扇動運動が確認されており、対外生存圏との密使のやりとりが確認されたことからそれらの監視及び確認のためである。ミルスクと我々は友好とも敵対とも言えない不干渉の状態であるが、密使の相手によっては敵対する危険性が高い。またミルスクが保有する兵器群は高い科学技術の後押しもあり、十分な脅威と言える。特に個人武装タイプの兵器では脅威度は・・


 調査報告書を読んでいたグラスは自身に向けられる視線に気が付いた。その視線の原因が自身の格好のせいだと気づいたのは、視線を落とした時だった。グラスの格好は薄手の生地が少し肌に吸い付くようなドレスタイプのワンピースと社交場等のドレスコードを満たす服装であった。が、問題はその着方にあった。グラスが身に着けているワンピースは透明に近く中に着た服によって色彩などが変化するものであり、現在そのワンピースは肌色を透過していた。グラスはワンピースの下に何も着ていなかった。グラスは元々服装などに対してあまり頓着がなく、お洒落などに関しても興味が惹かれないタイプであったため、今回のような服装に関するやらかしを幾度となく起こしてきた。そんな実績からか生きてる年季なのか、特段慌てる素振りもなく運ばれてきた料理を手短に済ますと、見苦しいものを見せたと周囲に頭を軽く下げ、店を後にした。近くの衣類店で服を購入したグラスは特段思うことなく目的地へと向かった。グラスにとっては「また・・」で済まされる事案であったが、グラスのあられもない姿は紳士たちの間で瞬く間に共有され、その後起こる事件と並ぶ事件として表に出ない歴史として紳士たちに語り継がれることとなった。

 


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る